2023.08.03

暮らす

年を重ねる=ネガティブなこと? 公認心理師が教える、加齢に前向きになれる考え方

素直にお誕生日おめでとうの言葉が受け入れられなくなる。「おめでたくなんかない」とつい言ってしまう。

それは年を重ねることに良いイメージが持てないから。年を取るという言葉には暗いイメージがありますよね。体力や気力が落ちて、これまで簡単にできていたことができなくなる。年を重ねる=老化は失うことばかりのイメージになりがちです。でも本当にそうでしょうか?

今日は公認心理師である筆者が、年を重ねることについて、ポジティブな視点からお話しします。

ずっと発達し続ける

心理学では、人は生まれたときから死ぬときまで発達し続けると考えます。老化、退化、劣化……と年を重ねることを表す言葉はどれも後ろ向きな印象ですが、発達し続けていると考えるとちょっと見え方、感じ方が違ってきませんか? どの年代にも大事な心理的な発達課題があります。中年期以降も発達は続き、より成熟した精神状態へと成長していくのです。自分自身がそれまでに身につけたものを次世代に引き継いでいくことを経て、老年期には賢さを得ることができると言われています。

そのときの自分を理解し、受け入れる

では、どうしたら賢さを獲得できるような年の重ね方ができるのでしょうか。それは、そのときの自分をきちんと理解することからはじまります。人は変化し続けます。けれど、その変化をきちんと受け入れることは意外と難しいのです。

身体的な変化を例にとると、やはり10代後半から20代が最盛期。その時代のセルフイメージが強く残ります。30代になっても、40代になっても、そのイメージはなかなかぬぐえません。口では「年取ったなぁ」と言っていても、とっさのときには、20代の自分のように動けると思い込んで動いてしまうことが少なくありません。その結果、思いがけない事故やケガにつながることがあります。そうした失敗体験はあなたから自信を奪い、必要以上にできないセルフイメージを強く抱かせ、気力をそいでしまいます。こうしたことを防ぐためには、そのときの自分自身を過大にも過小にも評価せず、適切に見つめてそれに見合った言動をとるよう心掛けることが大事です。

最盛期のときに比べれば、スピードダウンしているかもしれません。けれど、今の自分にとってちょうどよいスピードで、昔よりも質のよいことが成し遂げられる可能性が高いのです。それは大きな成功体験となり、気力を奪うのではなく、あなたに活力を与えてくれるでしょう。スピードダウンしたという点に注目するのではなく、今の自分に見合ったやり方を見つけて対応できたことを評価しましょう。

内面の成長を意識する

身体面を含めて表面的な活動量、作業効率を考えると加齢によってできなくなった、失われたと感じる方も多いでしょう。物忘れが増えて、これまでにはしなかったようなミスをして落ち込むこともあるでしょう。けれど、人は表面的な活動だけでは評価できません。内面の変化、成長に目を向けたとき、若いころとは違うものの見方や考え方ができるようになっているはずです。

人への寛容さや多角的な物事の見方などは、心理的に成熟していることの現れです。どの年代にもそのときにしか味わえない感情があり、それはかけがえのないものです。年齢による変化のなかには、大きな喪失感を伴うものもありますが、その喪失感を抱える力こそが年齢によって獲得したものとも言えるのです。

年を取るではなく年を重ねる

一年一年、年を取っていくと考えれば、ネガティブな印象はぬぐえないかもしれません。けれど、年を重ねると考えるとどうでしょうか? ひとつひとつの経験が積み重なって今のあなたにつながっています。後悔もあるかもしれませんが、これまで経験してきたことのすべてが積み重なって今のあなたを形作っています。そして、それは今後も続きます。経験を積み重ねて、人生を創り上げていると考えれば、加齢によって失うという感覚が薄らぐはずです。年取ったなぁと思うことも含めて、あなたの人生を重ねる大切な経験のひとつです。どの経験も、どの瞬間も大切に味わって、積み上げていきましょう

年下の人たちの希望となる

中年期以降は、次の世代への伝達が大きな課題となります。年長者として、自分より若い世代の人たちに自分が得てきたものを受け継いでいくのは、とても大切なことです。若い人たちから、こういう風に年を重ねることができたらいいなと思われるような生き方を見せることも年長者の非常に重要な役目です。年を重ねることに自信を持ち、内面の成熟に目を向けてみましょう。年を重ねるってそう悪くないなと思えてくるはずです。

***
文:竹原久美子(公認心理師/婦人科クリニック勤務)
***

【ライター:竹原久美子 PROFILE】
中学時代、寄り添ってくれる人の大切さを感じ、心に寄り添う仕事につくことを決める。
「人生の始まる現場で学びたい」と産婦人科での実習を希望し、そのまま、産婦人科で女性の心に寄り添い続けてもうすぐ20年。
土地柄を肌で知っていることは心の理解にも役立つという想いで、地元札幌で臨床に携わり続けている。

【画像】tadamichi 、KiRi 、daboost、Luce / PIXTA(ピクスタ)

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

この記事のキーワードはこちら

SNSでシェアする

  • twitter
  • facebook
  • line

編集部ひと押し

あなたへおすすめ

エリアで記事を探す

FOLLOW US

  • twitter