人気YouTuber「まいぜん」 突然の“声変わり”… 小６の長女が父親に教えた“大人の事情”とは

「『まいゼン』の声が復活してる！」
小学６年生になり、親への口答えが増えてきた長女”ゆゆ”の声が弾んでいる。
「確かに、以前の声の方が良かったよね」。心の中でつぶやいた。

「まいぜん」って何者？

「まいぜん」は人気YouTuber「まいぜんシスターズ」の略語で、マイッキーとぜんいちの２人組。マイッキーの「マイ」と、ぜんいちの「ぜん」を取って「まいぜんシスターズ」らしい。

ぜんいちとマイッキー（ゆゆ作）　※向かって左が「ぜんいち」右が「マイッキー」

シスターズということで女性では？と思いがちだが、ネット上では２０代男性ともっぱらの噂だ。素顔や正体を隠したまま、ゲーム実況などの動画をYouTubeにアップしている。かく言う自分は長女から教えてもらい、初めて知った次第。小学生の人気YouTuberランキング調査で、コンスタントに上位に顔を出しているとのこと。
「小学生はどうしてYouTubeがそんなに好きなのか？」と半ばあきれながら、長女に勧められた動画を見てみることにした。

「マイクラ」をゲーム実況

んー、確かに侮れない。５０代の自分が見ても、ありきたりなテレビ番組よりはるかにクオリティが高い。動画の中身は、世界的人気ゲーム「マイクラ」ことマインクラフトの攻略実況だ。デジタル版のブロック遊びと言われるマインクラフト。世界の全てがサイコロ型のブロックでできている。ブロックを採取したり、建物を作ったりして、自分の好きな世界を作り上げるゲームだ。クリアしなければいけないミッションや、「これで終わり」というゴールが無く、自由度が極めて高い。

数十年前、初期のドラクエを遊んだ自分からすると、ラスボスを倒してエンディングを迎える方がしっくりくるが、どうも勝手が違うらしい。

長女は一年以上前からハマっていて、クリスマスと誕生日のプレゼントに「マイクラ」を指定してきたほど。長女の推しといえば、漫画が「鬼滅の刃」「呪術廻戦」 「SPY FAIMILY」の３本柱。

長女・ゆゆのコレクション

ゲームは「あつもり（=あつまれどうぶつの森）」と「マイクラ」がツートップ。結局、Ｓｗiｔｃｈ版、ＰＣ版、スマホ版を全て取り揃える羽目になった。長女がプレイの参考にしたのが「まいぜん」の「マイクラ」実況。よどみないゲーム操作は、まさにプロのテクニックだ。すごいのはそれだけではない。他のゲーム実況と一線を画す最大のポイントは音声、ゲーム操作を実況する声だ。ぜんいちの声は落ち着いていて安心感があり聞きやすい。そこに、マイッキーがミッキーマウスのようなユニークな裏声でアクセントをつける。トークの間の取り方が絶妙で、コメントもコンパクトで的確。いちいち絶叫したり、わざとらしく煽り立てたりせず、リズミカルな音楽を聴いている心地良さがある。この２人、ただものではないと確信。子どもたちに絶大な人気を誇るわけだ。動画をアップすれば、再生回数２００万回、３００万回を連発していた。

しかし…

「まいぜん」　いきなり声が変わった！

「声が違う…」去年１２月、まさかの事態に長女が茫然自失した。キャラクターの見た目は基本変わっていないものの、「まいぜん」の声がこれまでと全く異なる動画がアップされ始めたからだ。公式アカウントからの説明は無く、動画の更新頻度も落ち、数か月が経過。声が変わった動画からは、あの軽快なリズムが消え失せていた。「これだと、『まいぜん』じゃない」。そう感じたのは長女だけでないらしい。再生回数は数十万回レベル（これでも多いが）に落ち込んだ。「一体どうして？」疑問に思った長女が、“声変わり”の謎に迫るＹｏｕＴｕｂｅ動画を幾つか見つけ出し、教えてくれた。

“声変わり”　の謎を推理

ネット上の謎解き動画の内容をざっくりまとめると、「まいぜんシスターズ」の様々な権利が海外の企業に移り、「まいぜん」の２人は「マイッキーです」「ぜんいちです」と、自分の声で自由に名乗りことさえできなくなったらしい。本当かどうか、自分でも調べてみたところ、確かにアラブ首長国連邦の企業名で登録されていた。この企業、２人のこれまでのパフォーマンスを過小評価したのか、別の声優を起用（ギャラが安かったのかな？）。とはいえ「似て非なるもの」はさすがに厳しく、人気がガタ落ちしてしまった、というのが謎解き動画の見立てだ。実に残念なパターンだが、話はこれだけで終わらなかった。

「まいぜん」の声が復活！

何と、今年４月にアップされた動画から、突如として、声が元に戻ったのだ。別の声優に変更して投稿された動画は全て削除されていた。何の説明もない突然の再開。再生回数の大幅な落ち込みを受け、元の２人をあわてて再起用し、挽回を図ったように見える。但し、実況をよく聞いていると、ぜんいちの声が低く早口になり、マイッキーとのかけ合いも若干せわしなく、どこか違和感がある。これには「ＡＩで作成した声では？」「そっくりさんの物まね？」という声も。長女は「プレイはまずまずで、それなりに面白いんだけど」と、復活に大喜びしたのも束の間、どこか冷ややかな態度に変わっていた。コアファンが求めているのは、かつてのオリジナルレベルなのかもしれない。声が元に戻ったのに、動画の再生回数に勢いは感じられない。“声変わり”騒動の代償は大きかったと、にわかファンの自分が偉そうに総括してみる。

覆水盆に返らず

「まいぜん」監修の「マイクラ」攻略本も愛読していた長女。さぞかしガッカリしていると思いきや…
「お父さん、人のためにすることは結局、巡り巡って自分のためにもなっているものだよ」と、したり顔で急に話しかけてきた。「何それ？」。不思議に思っていると、長女がテレビ画面を指さす。

あー、「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編に登場する霞柱・時透無一郎くん（１４歳） が記憶を取り戻すきっかけになったセリフだ。最近漫画を読み返していなかったので、すっかり忘れていた。物語のカギを握るこのセリフ、長女は結構気に入っているようだ。

「今、なんて言ったの？」　霞柱・時透無一郎くん（ゆゆ作）

そういえば、アニメの新シリーズ、４月から始まっていたな。仕事に追われ、毎週録画設定していたのにずっと見逃していた。「音楽は遊郭編の方が好きかな」と、長女は茶々を入れながら見入っている。
「まいぜん」の相次ぐ“声変わり”に、またも“心変わり”してしまったか。んー、やっぱり気まぐれだが、今回は分かる気がする。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上

＊＊＊
文：ゆゆパパ（Sitakke編集部）
イラスト：ゆゆ（小6の長女）