2023.05.10
暮らす札幌市は、「さっぽろヒグマ基本計画」に沿って、「クマが出る前の対策」や、出没時の対応を行っています。
住宅地への出没など、クマと人の距離が変わってきていることを受けて、専門家らとの話し合いを重ね、2023年から新しい計画に変わりました。
5月から、市のホームページで公開されています。
どこが変わったのか?3つのポイントをご紹介します。
連載「クマさん、ここまでよ」
まず、去年までの計画と見比べて、デザインの違いが印象的です。
「本書」はくわしく書かれていますが、「概要版」は特にイラストを使って、カラフルに、見やすくまとめています。
「クマにこれまで関心がなかった人にも見てもらえるように」「市民に手に取ってもらいやすいように」という思いで、こうしたデザインにしたということです。
これからの目標だけでなく、いま行っている対策や、出没情報を知る方法なども紹介されていて、札幌市のクマ対策の現状をまとめて知ることができます。
概要版の6ページに書かれた、基本目標③は、「ヒグマについて考え行動する市民の意識を醸成します」。
市がクマについて学ぶ機会を増やしたり、公園やキャンプ場など市民の暮らしに身近な場所でのクマ対策を促進したりしたいといいます。
被害を減らすには、まずは「知ること」が大切。
札幌市は、草刈りや放棄果樹の撤去などの「クマが出る前の対策」を、市民ボランティアと一緒に取り組むことを大切にしていますが、「市民と一緒に」取り組むクマ対策を、さらに推し進めていく方針です。
札幌市では、「クマの様子」と「出た場所」によって、対応を決めています。
去年までの計画では、「森林」や「市街地周辺」はもちろん、「市街地」で目撃されたとしても、人を怖がってすぐに山のほうへ逃げ帰っていったクマには、駆除する選択肢はありませんでした。
クマの痕跡を調べ、市民に注意喚起をすることになっていました。
しかし、2023年からの新しい計画では、場所の分け方が1つ増えています。「森林」と「市街地周辺」の間に、「都市近郊林」ゾーンができました。
「都市近郊林」ゾーンは、「クマがいる可能性のある場所だけれど、登山など人の利用が多いため、クマには住みついてほしくない場所」です。
クマの様子も、行動例をより具体的に想定して、「有害性」を判断できるようにしました。
この新しい計画のもとでは、人を見ると逃げる=有害性の低いクマであっても、出た場所が「都市近郊林」~「市街地」であった場合は、駆除も選択肢に入ります。
つまり、「駆除が選択肢に入る場合が増えた」のです。
この変更のきっかけは、2021年6月、札幌市東区の住宅地にクマが出没し、4人がけがをしたことでした。
実は、事故の約20日前に、茨戸川緑地では1件、クマの目撃がありました。その後、人目につかずに緑地付近で過ごしていたクマが、住宅地に迷い込んでパニックになり、人を攻撃したとみられています。
この、20日前の段階では、クマの様子や場所から、「駆除」は選択肢にありませんでした。
札幌市は、けが人が出たことを重く受け止め、より早い段階で緊急度を高めた対応をできるようにしたのです。
ただ、「駆除を増やしていきたい」ということでは、ありません。
新しい計画で掲げたビジョンは、「人は街で、ヒグマは森で。~すみ分けによる安全・安心な暮らしを目指して~」。
市民と協力しながら、「クマが出る前の対策」に力を入れて、クマといい距離を保って共存していくことが理想の姿です。
「クマの様子」や「出た場所」が、より具体的になったことも、捕獲の選択肢を増やすためだけではありません。
その場所に応じた「クマが出る前の対策」の例も、計画には書かれています。
この記事では、3つのポイントにしぼってお伝えしましたが、ほかにも「ヒグマ対策重点エリア」など、変わったところがあります。
札幌市のクマ対策の今とこれからをくわしく知りたい方は、市のホームページからご確認ください。
計画に書かれたことが具体的に始まるときは、またお伝えしていきます。
まもなく受付が始まる、市民が利用できる制度は、Sitakkeと連動する「クマここ」の「クマイベント」のページでお伝えします。
連載「クマさん、ここまでよ」