近年、ワインの生産地として国内外から注目されている北海道。
シリーズ「奇跡の一滴」では、北海道でワインづくりに情熱を注ぐ人々にフォーカスします。
今回訪れたのは、港町・小樽の風情漂う「北海道ワイン」。
お話をしてくれたのは、北海道ワインの醸造責任者・河西由喜さん。
北海道ワインは1974年の設立の、国内産ぶどうだけを使って作る生産量日本一のワイナリーです。
1999年入社した河西さん。大学では、発酵やブドウ栽培について学び、その頃はちょっとしたワインブームで、業界は随分賑わっていたといいます。
「当時はとにかくワインが売れるので、輸入ワインを国内で瓶詰めして、それを国産ワインとして出荷する会社もありました。
そうした中、北海道ワインは100%日本産のぶどうだけでワインを作るという姿勢を貫いていて、私は非常に感銘を受けまして。
やっぱりワインは、こうじゃなきゃいけないなと思って、入社を決めたんです」
「ワインが売れに売れて、それはそれで良い話ではあるんですけど、実は我々、日本産というより北海道産のぶどうだけで作っていたものですから、結局、ワインの生産量が追いつかなくなるわけです。そのうち小売店さんにうちの商品を入れられないという事態になって。ワインブームの陰で、非常に厳しい状態に置かれていた、それが、私が入社した頃でした」
生産量日本一!北海道産100%のブドウでつくる「北海道ワイン」をcheck
ところが、ワインブームはその年に終了してしまいます。
「ブームが去ると、他社の多くは、ぶどうの仕入れを減らしたのですが、うちはとにかく農家さんが育てたぶどうは全部、買い取ることにしていましたから。
ちょっと前まで在庫不足を嘆いていたのが、今度は在庫過多で困ることに。なんとかしようと試行錯誤しました。
バックインボックスという3.6リッター入りとか、いろんな商品を開発することで、その時代を乗り越えました」
そうしているうちに、消費者の見方が変わったといいます。
「日本産ぶどう100%で生産している我々のワインの真価が見直され、一定の評価をいただけるようになったのです」
いま、力を注いでいる商品についてもお話を聞きました。
「スパークリングワインですね。きれいな状態のぶどうで、酸味もしっかりしていなければなりませんが、
北海道は産地としてすごく適していると感じています」
「日本で現在親しまれている海外のスパークリングワインのほとんどが、シャルドネやピノ・ノワール、ピノ・ブランというぶどう品種を使っているんですけど、これが北海道で非常によくできるようになっていますから、これを使って、本格的な瓶内二次発酵のスパークリングワインをつくっていきたいと考えています」
「これまではどちらかというと、広大な土地でたくさんぶどうを収穫して、『そこそこ良いワインを作り、お求めやすい価格で提供する』そういうワイン作りをしていました。それはそれで北海道にしかできない役割であり、日本にワインの文化を根付かせるために、大事にしていきたいと思っています」
「うちでは、スパークリングワインを2000 年頃から作っています。製法には二通りあります。
一つはワインに炭酸ガスを吹き込むタイプ。従来はこれ一本で作っていましたが、2016年からはもう一つの方法、瓶内二次発酵にも取り組んでいます。
シャンパーニュ地方で行われているのと同じやり方で、瓶内二次発酵、熟成期間を18ヶ月以上にすると、きめ細かな泡ができ、香、旨味もまるで違ってきます。
私が思うには、土地に適したぶどう品種があり、それを生かす製法がある、その組み合わせは自ずとわかってくると思うんです。
個人的に言うと、北海道にはスパークリングワインが合っていると思います」
「扱うぶどうの量が多いということで、いろんなことを試すことはできます。育成するぶどう品種であったり、醸造方法とか、その辺の情報交換を醸造家たちと積極的にしながら、北海道は良いワインをつくる産地だと、世界に出ても勝負できると、そうなるように質を高めていきたいです」
最後に、これからワインを楽しんでみたいという方へ、メッセージを頂きました。
「ナイヤガラやキャンペルアーリーなど、秋になるとスーパーや青果店の棚に並ぶような、食べるぶどうで作ったワインは飲みやすいですし、ぶどうの香り、味わい、それを感じることができるはず。こういったワインから始めて、徐々にファンになっていただけるとうれしいです」
■北海道ワイン株式会社
〒047-8677 北海道小樽市朝里川温泉1丁目130番地
「おたるワインギャラリー」
営業時間:9:00~17:00
休館日:年中無休(年末年始除く)
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■「鶴沼ワイナリー」直売所
〒061-0600 北海道樺戸郡浦臼町於札内428番地17
TEL:0125-68-2646
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