2023.02.24
深める北海道からさまざまな価値観を発信するクリエイターたちにその活動についてうかがうコラム「HOKKAIDO CREATOR INTERVIEW 」。今回のゲストは、「北海道大学COI &NEXT」でさまざまなプロジェクトに取り組む古田千尋さんです。
「北海道大学COI &NEXT」は、北海道大学に拠点を持つ「誰もが自分らしく幸せに生きられる社会の実現」を目指し、大学、企業、地域の自治体が一緒になってイノベーションを起こしていく共創プロジェクトです。
Sitakke編集部もこのプロジェクトに共鳴し、共同イベントの実施(2022年11月5日@岩見沢市)や、情報連携などの取り組みを進めています。
今回お話を伺ったのは、「北海道大学COI &NEXT」の中心メンバーとして、広報を担当する古田さん。パンフレットやフリーペーパーの制作が主な役割で、企画・構成から取材、記事の執筆、デザインまで制作全般を行なっています。
その活動内容を紹介していただくとともに、古田さん自身のキャリアについてうかがい、生き方に悩む人たちへのエールもいただきました。
ー古田さん、よろしくお願いします! まずCOI&NEXTの活動について教えてください。
「COI」は「センターオブイノベーション」の略です。
10年後やその先の社会はこう変わっていてほしいという理想像のもと、実現に向けて、道内外の企業・大学・機関と連携しながら、さまざまな取り組みをしています。
例えば子育てに温かい社会を実現しようと、岩見沢市で、継続的な母子の健康調査、最適な食の提供、オンライン診療といった取り組みを試みました。結果、低出生体重児の減少(2015年10.4%→2019年6.3%)という成果をあげ、2021年に「第3回日本オープンイノベーション大賞 日本学術会議会長賞」を受賞しました。
ー成果も上げたのですね!すごい! 古田さんはどのようなことを担当されましたか?
子育ての悩みの共有をテーマにした参加型コミュニティ冊子「live」を制作しました.。
隔月でこれまで11号発行しました。子育て中の方や結婚・出産を控えるプレママを集めた座談会などを企画し、悩みを共有しながら、不安解消につながる情報を掲載しました。
いろんな方の話を聞くと、男女とも、それぞれの生き方にはまだ十分に多様性が認められず、縛られている側面があるというのを感じます。女性だから家事をしないと、育児に専念しないと、男性だから稼がないと、ではなく、もっと自由にいろんな選択肢に目を向けられ、各自の選択が周囲にも共感されるような社会になったらと思うようになりました。
そうした意識もあり、2021年からはさらに視野を広げ、自分らしく幸せに生きられる社会の実現を活動の目標に置くようになりました。
ーどういった展開をされていますか?
一つは小児期からのプレコンセプションケア(妊娠前からのケア)に力を入れています。こころとカラダを正しく理解することで、より多様な選択肢から自身のライフデザインを考えてもらうことができる仕組みづくりです。妊孕力(妊娠できる期間)などの知識をもとに、妊娠を望むのか、望まないのか、いつ妊娠しようとするのかを意識するとともに、子どもの頃から健康な生活習慣を送ることの大切さを知ってもらう。さらにプレコンセプションケアにはジェンダーの話も入ってきます。男らしく、女らしくという荷物をいったん降ろして、自分自身がどうしたいのか、周りの目を気にすることなく、広い視野でライフデザインをするきっかけになればと考えています。
すでに札幌市内の高校で、北大病院の産科医を講師に迎えて出張講座を開きました。今後は、中学校や小学校での実施も計画しています。
ジェンダーをテーマにした「They magazine」も制作しました。ファッション分野におけるジェンダーニュートラルの広がり、ジェンダーに対する感じ方についての高校生の座談会、年代や職種の異なる5名のインタビュー記事(古田さんも登場!)などを通じて、多様性への共感が広がるきっかけを提供しています。
現在の職場や社会をより過ごしやすくしよう、という呼びかけもしています。例えば株式会社アークスさんとのコラボで、”自分らしく働ける職場へ”をテーマにした「WORK × LIVE」という冊子をつくりました。第1回は「子育て世代が”自分らしく”働けるには?」をテーマに、職場で経験したカベ、上司や同僚・部下が抱える悩みと対応のアイデアなどを紹介しました。今後もテーマを変えながら継続的に発行予定です。
ラジオ番組YOMYOMECLUBとのコラボで「パパ座談会」の開催も計画しています。子育てに対するパパの本音を受け取り、企業にそれを提供することで、男性も積極的に子育てしたいと思える商品の開発に繋がればいいなと期待しています。
ー古田さんは今のお仕事の前は何をされていたのですか?
実は、興味に任せていろんな仕事を転々としていました(笑)
札幌の大学を卒業して、まず保険会社の営業を1年間。その後東京に行って、アパレルの販売員、病院の受付、木材輸入会社の事務、イベント会社のスタッフと手当たり次第に転職しました。5年間くらい経ってやっぱり私には札幌が合っていると気づいて、戻ってきて、そして、現在の職場に。そこでCOIが立ち上げられる際に、私がデザインソフトを多少いじれるというのをCOIのリーダーが知って、「ちょっと手伝ってよ」と声をかけられ…結局、どっぷり関わることになりました(笑)
でも、今の職場が一番楽しいと自信を持って言えますね。今まではどの職場でも経験してきた「なんか今日行きたくないなあ」がまったくないんです。
デザインはほぼ初心者でしたが本気で向き合ってみたら楽しくて、そういえば幼い頃から絵を描くのは好きだったなと思い出しました。
また、直接お母さん方や中高生と話して本音を聞けるのがすごく刺激的です。活動をもっと良いものにしたいというモチベーションにもなっています。コロナ禍が落ち着いたらイベントをバリバリ開催したいです。
ー素敵な出会いですね…!生き方に悩んでいる人のヒントにもなりそうです。
確かに悩み出すと沼にはまってしまいますよね。私も何度も悩みまくりました(笑)
結局、生き方は十人十色です。ただ、実感として、好きなことをする時間がすごく大事で、人生が豊かになると感じます。逆に言えば、自分の中で幸せだと思える「軸」を見つけておけば、まるっとOKかなと思っています。
もちろん軸は、仕事でも仕事以外でも良くて、家族と過ごすのが幸せですとか、映画を見ている瞬間が一番幸せでもいい。仕事とプライベートをバランスよく過ごすのが好きという人もいると思います。
ー最後に、子どもを産むことに迷っている人にアドバイスをお願いします。
もちろん子どもを産むことがすべてではありません。子どもを望まないというのも一つの選択肢ですし、養子を取るというのも、ありかもしれません。
私が言えるのは、子どもを産みたいという思いが少しでもあるのであれば、一度自分の身体と向き合って、いつの時期がベストだろうと考えてみてほしい。ライフデザインという考えを知ってくれると嬉しいです。
子育て中の皆さん。私も3歳の男の子を育てています。ため息が出てしまうような大変なこともある一方で、幸せな瞬間もたくさんあると思います。私は、その瞬間に気づけるように、一瞬一瞬を大切にしたいと考えています。
同志として、ともに頑張りましょう!私は同時に、より暮らしやすい社会を実現できるよう頑張ります!
O-ASOBIプロジェクトとは、体験(=あそび)を通してまちの課題に触れることで課題を【自分ごと化】し、自分のまちをつくっていく人を育てるプロジェクトです。
イベント当日は、ウイングベイ小樽と小樽天狗山スキー場の2会場にて開催します。
ウイングベイ小樽では、ロボット教室やVR体験、3Dプリンタ体験などの最先端のテクノロジーを利用したあそびや子育て世代の方へ向けた「食とカラダ」をテーマとしたトークショー(※先着60名)、明日から家族や友達にちょっと優しくなれる体験型上映会(※申込制/参加費500円)などを企画しています。
小樽天狗山スキー場では、スノーランニングバイクと木製ソリで斜面を滑った後に、ロッジにて本学学生が運営するカフェで心もカラダも温まる空間を用意しています。
是非、親子であそびを通して、自分を見つめ直すそんな体験をしてください。
■O-ASOBIプロジェクト 小樽市×小樽商科大学×北海道大学COI-NEXT
開催日時:令和5年3月18日(土)10:00~16:00
会 場:ウイングベイ小樽、小樽天狗山スキー場
参 加 費 :無料(一部有料)
申 込:不要(一部申込制)
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文:にの瀬
Edit:ナベ子(Sitakke編集部)
取材日:2022年9月
情報更新日:2023年2月