「ゴールデンカムイ」の野田サトル先生の次回作は、北海道を舞台に繰り広げられる、"アイスホッケー"の物語らしい。
そんなウワサを耳にした筆者が「予備知識をつけておくことで、野田サトル先生の次回作をより楽しみたい!」という動機をきっかけに、アイスホッケーの試合を人生で初めて観に行ってみることにした。
→前編:「ゴールデンカムイ」の次は“アイスホッケー”!? 知識ゼロな私が試合を初観戦してビックリしたこと【10選】
前編に引き続き、12月2日に訪れた 「道新杯争奪全道女子アイスホッケー大会」@月寒体育館 でのようすをレポートします。〝道内の女子チームNO.1を決める、とっても大事な大会”なんだとか。
1試合目をみた感想をざっくりまとめました。(詳細は前回の記事にて)
一言でいうと、とにかく 迫力満点! ただ初見ということもあり、選手の滑走スピードが速すぎてなかなか目が追い付かなかったので、2試合目こそ、しっかり見るぞ!
そして、1試合目に引き続き、特別に解説をしてくれたのは、この方。
過去3度もオリンピックに出場経験があるという、超豪華なゲストです。
米山さん:北海道文教大学「女子アイスホッケー支援部」スタッフの米山です!2試合目もよろしくお願いします!
筆者:よろしくお願いします!!
筆者:もうすぐ2試合目が始まりますね!
米山さん:2試合目は「Daishin(釧路)」と「道路建設ぺリグリン(苫小牧)」の試合です!
筆者:あれ?「ぺリグリン」って、米山さんが所属していたチームでしたっけ?
米山さん:です!楽しみー!緑色のユニフォームがぺリグリンですよー!
さ、試合スタートです!
筆者:むむ?審判の前で、両チームの選手が向かい合っていますが、あれはなんですか?
米山さん:「フェイスオフ」 といいます。両チームの選手一人ずつが向き合って、その間に審判が投げ入れたパック(球)をスティック(棒)で奪い合う んです!
点数が入ったあとや、反則で中断したときなど、試合を再スタートするときに行います。
筆者:なるほど!これ、結構プレッシャーかかりそうですね。
米山さん:プレッシャーですよ。さっき、チームのそれぞれのポジションについて説明しましたが、この「フェイスオフ」は、フォワードのセンターが担当するんです。
米山さん:私もオリンピックに出ていたときは、主にセンターだったので、いつも“フェイスオフ担当”だったんですよ…。
筆者:やっぱ緊張しましたか?
米山さん:フェイスオフで相手に簡単にパックを渡してしまうと、そのまま少なくとも約10~15秒間は相手チーム側にパックをキープされることになるんです。
そしてフェイスオフのタイミングは、1試合のうち大体20回ぐらいで、意外と多いんです。
なので、監督からは、当時こんなことを言われていました。
「相手にパックを奪われたときの”ロス”の合計時間を考えてみろ。1試合が約60分間として、もしすべてのフェイスオフを取られたとしたら、合計でどのくらいの時間を、相手チームに主導権を渡すことになると思う?…米山。わかってるな?」って。(笑)
筆者:ひええ
もうひとつ気になっていることがあるんですけど、
ベンチ席のゲートが空いた瞬間、選手がリンクからス~ッと出てきたり、
交代した選手がすごいスピードで入っていきますよね!
選手交代のタイミング、すごく多くないですか?
米山さん:とても激しいスポーツなので、1~2分も滑ると大体ヘトヘトになります。
なので、30秒~1分くらいで交代の場合が多いですね!
そして、交代のタイミングは、選手自身が判断しています。
筆者:えっ!監督からの指示とかないんですね!
米山さん:はい、なので交代のタイミングを見極めるのはすごく重要です。「まだ交代ナシでも大丈夫」と本人は思っていても、疲労はたまっていきます。とはいえ、攻守の"ここぞ"というタイミングのときに、交代をする余裕はないので、無理せず早めに交代しておくのも戦略のひとつです。
筆者:交代の合図はあるんですか?
米山さん:合図も特にありません。各ポジションの選手同士で交代をするので、ベンチにいる選手は自分の番が来そうなタイミングを見極めながら、試合の運びを見守る必要があります。
筆者:自分の体力の限界を知っておくことが、すごく重要なスポーツともいえるんですね。
ベンチのメンバーもいれた全体の人数はどのくらいなんですか?
米山さん:ほとんどの大会では18~22名だとされています。
ちなみに、海外で参加したとある大会では、試合前にみんな食中毒にあたってしまい…。
10人だけで試合をしたこともあります。
筆者:10人!それは超過酷ですね、超大変そう。
米山さん:選手たちにとっては地獄だったでしょうね。私は食中毒になったので、試合には出られなかった側なのですが…。
筆者:それはそれで地獄ですね…。
筆者:あっ!米山さん!
米山さん:どうしました?
筆者:試合を見ていて、ずっとなにかに似てるな~て思ってたんです。
アイスホッケーって、ゲーセン(ゲームセンター)にあるアレに似てません!?
米山さん:エッ!それは初めて言われました!どのあたりが似ていますか?
筆者:サッカーとかバスケって、ボールの動きが、それなりに予想できるじゃないですか。少なくとも、蹴ったり投げたりした方向には進むというか。
でも、ゲーセンの“アレ”も、アイスホッケーも、あの小さい球みたいなやつの動き(※正式名称「パック」)が、壁にふつかって跳ね返ったりして、ぜんぜん予想できないじゃないですか!!
米山さん:なるほど(笑)
筆者:ゲーセンでついつい、力を込めすぎて、球を強く打ち過ぎちゃうんです。そしたら壁にぶつかって勢いよく跳ね返ってきたり、場外に飛んでいってしまうこともよくあって。
米山さん:あ、それはいい目の付け所です!
アイスホッケーでは、壁の跳ね返りなどを計算して、パスを回したりすることはとても重要です。たとえば、あそこの壁を見てください。黄色いところと、白いところがありますよね?
実は、パックがぶつかったときに、黄色いところの方が白いところより跳ね返りが強いんですよ。そう計算した上で適切なパスに利用したりすることもありますよ。もちろん、リンクの状態も箇所によっては少し違っているところもありますし。
試合前のウォーミングアップ時に、そういった確認をしておくのも大事です!
筆者:ははあ~!(感心)
米山さん:あと、ゲームセンターの“アレ”と一緒で、パックが場外に飛んでいくことも、よくありますよ(笑)頭にあたると危ないので、油断しないでくださいね。
筆者:ひええ
筆者:米山さんが所属していたチーム・道路建設ペリグリン(苫小牧)もきょうの試合に出ていますよね。特に注目の選手っています??
米山さん:難しい質問ですね~!(笑)
注目している選手はたくさんいるので一人にしぼるのが難しいのですが…一人選ぶなら。17番のFW黒須若菜選手ですかね。
とにかくガッツがある、強気なプレーが魅力です。実は彼女、昨年度の試合で、怪我をしたんです。その前にも大きな怪我をしていて。
筆者:大きな怪我。それは心配…。
米山さん:多くの選手は、怪我をすると、恐怖心のせいで、動きが小さくなってしまうんです。でも、彼女の場合は違う。持ち前のガッツで、むしろダイナミックなプレーを魅せてくれるんです。
なんというか、怪我をするたびに強くなるタイプなんですよね。
筆者:もうそれ 「不死身の杉元」 じゃん…。
筆者:あらためて、タフさがもとめられるスポーツだということがわかりました。普段から相当キツいトレーニングをされているとお察ししたのですが、どんな感じですか?
米山さん:トレーニングは、まあハードですね(笑) よく意外だといわれるのですが、リンクの練習時間が限られているので、陸の上での体力づくりが多いんですよ!
筆者:主にどんなトレーニングを?
米山さん:たとえば…こちらの 「演習林の坂」での“坂ダッシュ” です。
米山さん:写真だとわかりにくいのですが、ふもとからは頂上が見えないくらい、急な坂です。この坂を、ふもとから頂上まで、全力ダッシュで駆け上がります。体感的には片道100メートルくらい。だいたい5~10セットくらいですかね。他にも坂道を使ったリレーをしたり、スケートのように片足ずつ体重を乗せてジャンプしながら登ったりもしました。
筆者:どのくらいハードなんですか?
米山さん:男子も女子も、キツ過ぎて吐く選手もいたくらいハードですねえ。そもそも、集合場所から山王神社までの往復もランニングです。なので学生時代は、集合場所の学校から、この坂まで、片道5キロ近く走ったあとに“坂ダッシュ”をしていました。
とにかく急な坂なので上るのも大変ですが、下るのも大変で…気を抜くと坂から転げ落ちそうになったります。一緒にトレーニングをした仲間の中には、この坂道の写真を見ただけで 「思い出して吐きそう」っていう人もいるくらいですからね。ふふふ。
もちろん、帰り道も片道5キロをランニング。そして学校やグラウンドに戻ったあとは、シャトルランや インターバル、ウェイトトレーニングを行っていました。
筆者:ひええ…想像しただけで吐きそうです。(笑)
米山さん:いま振り返ってみても、「演習林の坂」でのトレーニングはとてもキツかったです。でも、若い時はとにかく軽さで走っていたのが、 歳を重ねて筋力で上っていく走り方になったり、前回よりも楽に登れた、重かったなど、自分自身の変化も感じられる場所でしたね。ふふふ。
Daishin(釧路)VS 道路建設ぺリグリン(苫小牧)、2対4で勝負アリ!
米山さん:きょう1日どうでしたか?
筆者:とっても楽しかったです!とにかくアイスホッケーって迫力満点なんですね。
スポーツにあまり馴染みのない私でも、思わず手に汗握りました!
米山さん、ありがとうございました。
帰り道。
「あんな激しいスポーツだもの、選手たちは、相当なゴリゴリ系な女子たちなんだろうなあ」
と、人物像を妄想しながら、会場を後にしようとした矢先….
\\米山さ~~~~ん!!//
と、キャッキャッと、明るい声の人たちが続々と米山さんに駆け寄ってきた。
みなさん:米山さん、おつかれさまです!
米山さん:わ~ 久しぶり!おつかれさま~!
もしかして、この人たち、選手??
声の感じからしてめちゃくちゃ若くないか?
筆者:あ!せっかくなのでみなさんの写真とらせてください!こっちの広いところで!
撮影の瞬間だけなので、マスクも外してもらってもいいですか?
みなさん&米山さん:は~い!
若ッ!!!!
こんなにあどけない子たちが、トレーニングで坂道を吐きながらダッシュしたり、
試合中にふっ飛んだり&ふっ飛ばしたり、あんなにゴリゴリとしたプレーをしてたってこと!?
こりゃ衝撃だわ…
後日、米山さんにお話を聞いたところ、「ぺリグリン」のメンバーの最年少は、なんと中学1年生なんだとか。若ッ!
さらに、先日の大会では、他チームの選手も合わせると、北京オリンピックに出場した選手が合計9人もいたとのこと。しかも、そのうち2人が学生とのこと。
いろいろと衝撃だわ…
さいごに、米山さんが所属する女子アイスホッケー支援部で叶えたい夢について、お話をうかがった。
米山さん:今回ご覧いただいた通り、アイスホッケーは、心身ともにハードなスポーツです。
若くして世界で活躍する彼女たちにとって、トレーニングやメンタルの整え方、体力につながる食事の管理はとても重要なんです。
でも若いからこそ、誰になにを相談して、具体的にどんなことをしていいのかと、迷う子たちも多いんです。実は、当時の私もそうでした。
だからこそ私は、自分の経験を生かしたい。一つのジャンルに捉われず、様々な面から彼女たちをサポートしていきたいんです。選手たちにとって、気軽に相談しやすい存在になれたらいいな。
私も、一から学びながら、がんばります^^
野田サトル先生の次回作、"アイスホッケー"がテーマらしいから、予習しておこうかな。
と、ふらっと試合を見に行ったのだが…
結論:"アイスホッケー"、こりゃ推せる!!!
ふっ飛んだり・ふっ飛ばしたり、壁に激突…
こんなにもハードなスポーツに、青春をささげる、北海道の若き選手たち。
そして、そこに寄り添う、元OBの米山さんら「支援部」の活動。なんと素敵なことだろう。
これもあとから聞いたのだが、全国のベスト8のチームのうち、7チームが北海道のチームらしい。
そして今回の大会には、その7チームが出場していたらしい。
北海道女子のアイスホッケー界、すごすぎない?
オリンピック選手がゴロゴロと出場している、高レベルな大会。
それを無料でふらっと見に行けるスポーツって、他にあんまりないのでは?
これまでスポーツにはあまり興味が無かった、という人にも、ぜひ見てほしい。
会場は寒いので、温かい格好で!!
野田サトル先生の次回作はもちろんのこと、今後の「支援部」の活動にも注目していこう、と
心に誓った筆者なのであった。
2023年は、「アイスホッケー」ブーム、来ちゃうんじゃない!?
<取材協力>
・北海道文教大学 女子アイスホッケー支援部
米山知奈さん・東城佑紀さん
・道新杯争奪全道女子アイスホッケー大会
<文・撮影>ナベ子(Sitakke編集部)
~~
1/27(金)-1/29(日)@釧路 『レディースカップ』 (道内大会)
2/24(金)-2/26(日)@帯広 『女子日本アイスホッケーリーグ(スマイルリーグ) ファイナル』 (全国大会)
3/16(木)-3/19(日)@帯広 『全日本女子アイスホッケー選手権』 (全国大会)
ご興味を持った方は、ぜひ一度、ご自身の目で耳で、迫力を感じに行ってはいかがだろうか。
■【前編】「ゴールデンカムイ」の次は“アイスホッケー”!? 知識ゼロな私が試合を初観戦してビックリしたこと【10選】