北海道・十勝地方南部に位置する大樹町。この連載では、宇宙のまちづくり、観光、移住、日々の暮らしのことなどを綴っている『宇宙のまち大樹町公式note』より、選りすぐりの記事をお届けします。
こんにちは!移住コーディネーターの岡山ひろみです。
移住の相談でも多いのが、「子供の学びの環境について」の質問です。そこで今回は、 大樹町の独自の取り組みである「大樹学」 をご紹介したいと思います。
「大樹学」とは、大樹町の特色を活かした学びで、小学校から高校までの12年間で計画されているカリキュラムです。過去にもご紹介した地引網体験のほか、JA大樹町の協力でじゃがいもを育てて販売するまでの流れを体験する、宇宙についての学びなど、大樹町ならではの濃密なカリキュラムとなっています。
大樹町には、小学校・中学校・高校は1校ずつしかありません。この状況を、先生方は 「1校ずつだからこそ、連携がとりやすいんです」と、ポジティブに捉えていました。
実は、「大樹町小中高連携教育推進委員会」という組織があり、各学校の管理職が月に1回会議を開き、密にコミュニケーションをとっています。大樹学に関しても、小学1年生と大樹高校の生徒が一緒に授業を行うなど、大樹学における学校間の連携が実現しています。
今回は、小学校における大樹学の取り組みを、ご紹介いたします!
※大樹町広報誌11月号に配布された『大樹学NEWS』からの転載となります。
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大樹小学校では、外部と連携した体験授業が各学年に位置づけられています。コロナで行事の日程変更等が多々あったのにも関わらず、どの行事にも快く対応していただき、子ども達は体験の伴った質の高い学習に取り組むことができました。また、今年度新たに取り組んだこともあります。全学年の取組を紹介します。
1年生では、去年から始まった取組、大樹高校のお兄さんお姉さんと一緒に、歴舟側へ『水辺の生き物を探し』に行きました。
「これは、なんていう生き物なの?」「あっちで生き物探したい。」という小学校の子ども達、「それはヨコエビという生き物だよ。」「一人で行けないから、みんなで行こうね。」小学生の目線に合わせて、優しく話す高校生のお兄さんお姉さんの姿が見られました。大樹の豊かな自然を感じることができたとともに、大樹にいる素敵なお兄さんお姉さんと一緒に活動できた良い時間となりました。そして、大樹のことを少し詳しく知れた日となりました。
生活科の「まちたんけんがだいすき」の学習で、地域の方に協力していただき、インタビューを行いました。大樹町にはどんな場所があるのかを考え、何を聞きたいのかを一生懸命考えました。実際に話を聞いたり、作業している様子を見学したりしました。聞いてきたことをスライドにまとめて、発表会を行いました。地域の特徴や発見したことを友達と伝え合い、さまざまな場所や多様な人々が生活していることに気付くことができ、地域への理解が深まった活動になりました。
地域の方と触れ合うことで、自分の生活と関連付けながら、これまで知らなかったこと場所や人々の存在に気付き、地域への新たな発見ができました。
5月初旬にじゃがいも(とよしろ、ピルカ、男爵、シャドークイーン)の種芋を畑に植え、そこから約4ヶ月間、暑いなか草取りと水やりを行い、8月末に収穫をしました。収穫したじゃがいもは、1キロずつ袋詰めにし、手作りの商品カードを同梱。1袋100円のじゃがいもは、9月初旬に大樹町の飲食店の方々へ販売会を行い、8軒ほどの飲食店の方々に来て頂きました。ご協力いただいた売り上げは全額募金しました。購入していただいたじゃがいもは、各飲食店で様々な料理となり、地域の方々に提供されました。
普段、何気なく選んで食べている食べ物ですが、作物を育てる・収穫する・販売するという一連の流れを学習する中で、「自分が育てたものを買ってもらう喜び」を学ぶことができました。
今年度、STEPの方々に協力していただき、歴舟川の水質調査を実施しました。
水質調査では大きく2種類の調査を行いました。1つが「検査キットを用いて水中の水質調べ」、2つ目が「水生昆虫を捕まえる」。2つの事を通して歴舟川の水がきれいなのかみんなで確認することができました。
結果として、歴舟川の水質数値が「きれいな川」として当てはまり、子ども達が見つけた水生昆虫も「きれいな川」に生息している昆虫ばかりでした。
今回の体験から、改めて「地元の自然は自分たちで守っていく必要がある!」という点について深く考えるきっかけとなりました。
日本一の清流をこれからも誇れるよう自然と向き合っていけたら良いなと思います。
今年度も大樹漁協の方に協力をしていただき、地引網体験を行いました。4年生の時に行った際は、あまり魚が獲れなかったと聞いていましたが、今年はカレイや高級魚のマツカワなど、たくさんの魚を引き揚げることができ、子どもたちは大興奮でした。想像以上に網は重さがあり大変で、全員で力を合わせて何とか引きあげることができました。体験後は、漁師の仕事の大変さや、やりがいなどについて教えていただきました。学んだことを生かして、水産業についてまとめました。
大樹町と関わりの深い水産業について、深く知ることのできるいい機会となりました。
9月9日1~2時間目にIST見学学習の事前学習を行いました。翌週のIST見学の際の学びをより確かな物にするため、インターステラテクノロジズの職員の方々員に講師としてご来校頂き、ISTについて、ロケット産業について教わりました。また、ISTで働く方々の来歴や職業観などについても話を伺いました。「小学校の時にやっておけば良かったこと」や「仕事に対する思いや願い」など、将来の自分たちの職業選択の際の材料にもなる貴重な話や体験談もたくさん伺うことができました。
9月16日1~4時間目、大樹町宇宙交流センターSORAとインターステラテクノロジズの見学をしました。SORAでは、ロケットの特徴や大樹町を活動拠点とした理由、大樹町がアジア初の民間にひらかれた宇宙港「北海道スペースポート」づくりに取り組んでいることなど、たくさんのことを学びました。大樹町を中心として宇宙産業が広がっていくことを感じ、子どもたちも未来への期待に胸を膨らませていました。インターステラテクノロジズでは、発射場や整備中のロケットの様子などを見せて頂きました。MOMOの実機や、ZEROの実物サイズの模型を見るだけでなく、職員の方々の思いを伺いながら実際に働く現場の空気も肌で感じることができました。今回の見学を通じて、大樹町から全世界を視野に活躍している人達の、絶え間ない努力や目標に向かって真剣に働くことの素晴らしさを感じることができました。自分の住む町の未来、自分の将来について考える良い機会となりました。
子どもたちの学びや先生方の実践の様子、ふとした私の気づきなどを伝える校長室通信『強く・正しく・美しく』を不定期に発行しています。その中からいくつかの内容を紹介させていただきます。
心に残った大樹中の学びの姿や様子(ほんの一例です・・・)
きれいなロッカーに大注目!小学校でも大切にしている指導は中学校でも継続しています。算数の指導で来校してくださっている鈴木先生曰く…「言われなくても自分たちでチェックし合っている」とのことでした。
机上の整理は、中学校に入ると更に磨きがかかるようです。必要最低限な物だけを準備。「大切なポイントなのでマーカーで線を引いて」の指示にもすぐに対応。ロッカー共々、「学びへの集中は整った環境から」ということを改めて実感しました。
心強いお兄さんお姉さんとの学びから
1年生が行った川の学習の様子です。生活科の「生きものをさがそう」という単元の学習で,大樹高校の2年生のサポートを受けて行われました。川に親しむ、生き物を探す、自然を感じる…子どもたちは高校生に見守られながら活動を楽しみます。一方、高校生は小さな子どもたちとの触れ合いからコミュニケーション術を学ぶ貴重な機会。更に郷土の自然環境を知り、町の改善や自然保護にも思いを巡らせたいという声も寄せられていました。小も高もウインウインの関係。小中高連携が学びの可能性を広げることを感じました。
小中高の連携を通して刺激をいただいています。また、実感を伴った確かな学びがダイナミックに展開される可能性も感じています。連携をもとに『“ふるさと大樹“に学ぶ活動を通して、“ふるさと大樹“への誇りをもって社会に貢献できる人を育てる』という大樹学の目標を達成できるよう、これからも日々の実践を充実させていきたいと思います。
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いかがでしたか?
小学校校長の袴田先生とお話していたときに、「町の人たちは、子どもたちの教育にとても協力的で、まさに子どもたちの応援団のようです。地域の教育力が学校に風を送ってくれていて、とても心強いです。大樹学を通して、故郷に誇りを持つ機会がたくさんあるのが、大樹町の教育だと思います」
とおっしゃっていたのが、とても心に残っています。