去年の大みそか、札幌市中央区の円山でクマの目撃情報が相次ぎました。
冬眠しているはずのクマが、なぜこの時期、出没するのでしょうか?
連載「クマさん、ここまでよ」
【この記事の内容】
・去年の大みそか、クマの足跡を追うと…
・なぜ冬にもクマの目撃?専門家に聞いた
・注意すべきこととは?足跡の見分け方は?
雪の上にはっきりと残る、およそ12センチのクマの足跡。
去年の大みそか、午後0時半過ぎ、札幌市中央区円山西町にある北海道中央児童相談所などの敷地で、クマが目撃されました。
札幌市によると、クマはこの山を降りてきて道路をわたり、柵を超えて敷地に入ってきたとみられています。
その後クマは敷地の中を歩き、柵を超えて住宅街のほうへ移動したといいます。
また、同じクマとみられる目撃情報は、近くの別の場所からも寄せられました。
クマはその後、山のほうへ行ったとみられています。
最初の現場から2つ目の現場までの距離は、およそ500メートル。
その後、新たな目撃情報や被害の報告はありませんが、初詣客が訪れる北海道神宮の近くということもあり、地域には緊張が走りました。
札幌市は、住宅地と隣接する三角山や藻岩山などを重点的に調査し、対策を検討しています。
近年、市街地への出没が相次ぐクマ。
ただ、活動期間は主に春から秋で、この時期は冬眠しているのでは?
クマの生態に詳しい、酪農学園大学の佐藤喜和教授に聞きました。
佐藤教授は、「冬眠に入る時期は、年や個体によってもばらつきがあるので、12月下旬や、場合によっては1月まで活動しているクマがいてもおかしくはない」と話します。
冬眠に入る時期が遅れる理由としては、「一般的には、エサの十分取れない時期に、エネルギーの消費を節約するために冬眠すると考えられています。遅くまで活動しているというのは、まだエサを十分とれていて、冬眠するほど節約しなくても、歩き回ってもエネルギー収支がそれほどマイナスになっていない状況なのかなと思います」と分析します。
冬でも油断できない、クマとの遭遇。
でも、基本的な注意点は、夏と同じです。
佐藤教授は、「ばったり出会ったら、慌てないで、走ったり大きな声を出したりせずに、ゆっくり距離を取るのが基本」と話します。
「冬場だからといって特別な対策を取るというよりは、クマの出没は夏という印象を持つ方が多いでしょうから、冬でも活動している可能性があることを知っていただいて、もしかしたらクマの生息地に近い場所ではクマに出会ってしまうかもしれないということを気に留めていただくというか、そういう普及啓発が必要かなと思います」
冬ならではの、クマに出会わないための注意も教えてくれました。
「冬は雪に足跡が残りやすいので、クマの足跡があればその先には進まないなどの対策が重要かなと思います」
札幌市によりますと、大みそかの出没以降、キツネなどの足跡をクマのものではないかと疑った通報が増えているということですが、クマの足跡は、5本の指の跡が特徴です。
大きさも見分けるヒントになります。
クマの足跡を見つけた場合は、安全を確保した上で、警察や札幌市に連絡してほしいということです。
佐藤教授は、「この季節、特にクマにとって魅力的なものが市街地にあるわけではないので、そのまま山に戻ってくれて本当によかったなと思います」とも話していました。
夏場は家庭菜園や畑などで作物の味を覚えてしまい、繰り返し市街地にやってくるクマもいますが、今回は被害などは確認されていません。
クマの痕跡を見つけたら、その先に進まない。
もしもばったり出会ってしまったら、慌てずにゆっくり距離を取る。
食べものなどクマを引き寄せるようなものに気を付ける。
去年は、まだ雪の残る3月に、札幌西区の三角山で、クマの巣穴を調べていた男性2人が、クマに攻撃され、けがをしました。
札幌でも、住宅地のすぐそばで暮らしているクマがいる…
その存在を意識しながら、冬の間もクマとの距離を保つ「きほんの注意点」を忘れずに、暮らしていきましょう。
連載「クマさん、ここまでよ」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
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