10代から50代の間、女性に毎月訪れる生理。それは健康の証でもあり、大事な機能ではあります。しかし、不快な症状を伴う場合もあり、毎月の憂鬱となっている方も少なくないでしょう。身体にせよ、心にせよ、自分の一部に嫌な症状があれば、うんざりして落ち込んだりイライラしたりするのは自然なこと。今日はその中でもイライラ、特に生理周期のイライラ、その後の落ち込みへの対処法を公認心理師である作者がご紹介します。
一言に“生理のときの不調”といっても人それぞれです。“生理前”が「生理開始2週間前から」という方もいれば、「生理3日前から」という方もいます。そして、生理が始まってすぐにすっきりという方もいれば、生理が始まってから2~3日は不調が続くという方も。
まずは自分のリズムを把握することが大事です。2~3か月でもいいので、簡単に自分の生理周期とあわせて、体調の変化を記録してみることをおすすめめします。
少し自分の身体リズムが見えてきたら、可能な範囲で予定を立てるときに工夫します。仕事など、自分の希望だけでは動かせないこともたくさんあると思いますが、この時期はしんどくなりやすいなという時期は予定を少なめに。普段なら楽しめることでも楽しめず、むしろ負担になって余裕がなくなります。そうすると、イライラが募ります。
昔、患者さんで生理前の頭痛、気持ちの落ち込みに悩んでいた方が、その時期はパートのシフトを極力減らしたところ、「シフトが入っているのに体調が悪くなったらどうしよう」というプレッシャーが減り、気持ちの落ち込みが軽減。結果として、頭痛もあまり気にならなくなったということがありました。「体調が悪くなったら寝ていればいい」と思えるようになったことで症状が改善したのだと思います。
自分のリズムがわかってきたら、周囲の人にも伝えてみましょう。どういう時期にどういう気持ちになりやすいのか、その時期はどういう対応をしてもらいたいのか。そっとしておいてほしいのか、それとも話を聞いてほしいのか。そこもまた人それぞれです。
患者さんのご家族から「どう接するといいのでしょうか?」とご相談いただくこともあるのですが、「〇〇という病気だからこうしてください」というものはありません。その方がどういう時に何をしてほしいのかを元気なときに共有しておくことが大事なのです。
周囲の人も対応がわからないと困ってしまい、お互いにイライラしてしまうという悪循環に入ってしまいます。あらかじめ、自分のリズムや相手に望むことを伝えておくと良いでしょう。
こうした工夫をしても、やっぱりイライラはします。イライラをゼロにすることは正直むずかしいと思います。女性ホルモンは感情に直接影響を与えるものなので気持ちの波が生じるのは自然なこと。
また、人によって女性ホルモンからの影響の受け方も違うので、強く影響を受ける人もいれば何も感じない人もいます。これは生物としての個体差なので正直仕方ないといわざるを得ません。いろいろな感覚が過敏になる方も多く、夫の出す音やにおいがいつも以上に気になってしまい、ひどい言葉をぶつけてしまうというお話もよく聞きます。そういう攻撃的な言動は相手のことも、自分のことも傷つけてしまいます。なるべくそうならないように、調子が良いときに情報を共有しておくこと。でも、機械ではありませんから、いつもいつもうまくいくとは限りません。大事な相手、わかってもらいたい相手だからこそ、自分の辛さをわかってもらえないと悲しくて、結果としてイライラという形でぶつけてしまうのです。開き直るのはよくありませんが、ときに感情的になってぶつかってもいいのです。
「生理前の1か月無理しちゃったかなぁ」と自分のことを振り返っていたわりましょう。 そして、少し落ち着いてきてからでいいので相手に謝りましょう。イライラをぶつけてしまったことを謝って、どうしてそうなったのかを伝えましょう。感情をぶつけられるほどの関係の相手なのですから。悪いことをしたなと思ったら、あとから謝ればいいのです。
生理は大事な身体の働きです。なるべく上手に、周囲の方と一緒にうまく付き合える方法を探していけるといいですね。
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文:竹原久美子(公認心理師/婦人科クリニック勤務)
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【ライター:竹原久美子 PROFILE】
中学時代、寄り添ってくれる人の大切さを感じ、心に寄り添う仕事につくことを決める。
「人生の始まる現場で学びたい」と産婦人科での実習を希望し、そのまま、産婦人科で女性の心に寄り添い続けてもうすぐ20年。
土地柄を肌で知っていることは心の理解にも役立つという想いで、地元札幌で臨床に携わり続けている。
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