2022.12.15
深めるは〜い皆さん、ご機嫌よう!「お悩み相談コラム」担当・満島てる子です。
12月に入ってからというもの、北海道は……本当に寒いの!もうやんなっちゃう!
路面はツルッツル、雪も容赦なく降ってきて、肺に入ってくる空気のつめたさは、夜なんて冷凍庫に匹敵するんじゃないかってぐらい。
あたしってば三重県出身。なので、こういうときばかりは本州の冬の初期というか、独特の「肌寒さ」程度でとどまっているあの空気感が懐かしくなるのよねぇ。
ううう〜こう寒いとさぁ、誰かに寄り添ってもらってるシチュエーションを妄想しては、「嗚呼ん……そのたくましい腕であっためて……ダーリン!」なんて、虚しい願いばかりを暴走させちゃうわけなんですが。笑
割とみんなも、気温が下がると人恋しくなったり、そのせいで人間関係について考え直したりするもんなのかしら?
というのもね、なぜかはわからないんだけれど、冬時期になってからややしばらく「恋人と別れました」「友達と大喧嘩しました」なんて報告が、周りからよく耳に入ってくるのよ。
どうやらこのコーナーの応募フォームも、その例に漏れずって様子らしいわね。
なんと2通も、大切な人と縁が切れてしまったかも…… という相談が来ていたんです。
今回はそちら、ご紹介したいと思います。
あららぁ。お2人とも10代!
若い世代の子から、深刻ではあるんだろうけれど、なんだかそれぞれ絶妙にとっ散らかったテイストのお悩みがご到着ねぇ。まずはお手紙、ありがとうございます!
いやすごいよね、「縁を切る」とか「絶交」って言葉。無茶苦茶 ”破壊力高め"だわぁ〜。
そして今思えば、これってあたし、30代に入ってからほぼ使ってないフレーズたちかもしれない。
10代とか20代とかは、やたらめったら「やだぁ信じらんない!あんたとは絶交よ!」なんて、今でも友達なあいつやこいつとも、冗談半分、本気半分って感じで、じゃんじゃか罵り合ってたような気がするのにね。不思議。←
……唐突かもしれないけれど、「ヤマアラシのジレンマ」ってあるじゃない?
とある寒い日に、ヤマアラシたちが集まって暖を取ろうとするんだけれど、くっつきすぎるとお互いの針が刺さって痛いし、離れすぎると寒いしで、みんな困っちゃうの。
それと似たように、人間は他者とつながろうとすると、お互いのエゴがぶつかり合ってしんどくなっちゃうけども、逆にお互い距離を置き過ぎても、それはそれで生きていくのが難しくなっちゃうよねっていうお話。
哲学者ショーペンハウアー出典で、精神分析学者フロイトが注目したことで有名なこのジレンマなんだけれど……。
思うにこういう状況って、自分自身が何をしたくて何を許せない人間なのかまだ定まってなくて、かつ他人との付き合い方についても手探りな、ヤングでナウい年代(死語ってツッコミは無しね!笑)が陥りがちなんじゃないかなって思うの。
そして、そういう年代の若者たちというか、もしくは世代は様々だったとしても、他者との関係を作るにあたりフレッシュな心もちの人たちって、もうゼロ距離かよってぐらいお互い近づこうとするから、その針が刺さったときの反応も激しめというか。
一度傷つくと恐ろしいほど距離置こうとする気がすんのよ。その例のひとつが「絶交」ってやつなのかなって。
以前こちらのコラム連載のなかでは、「気まずくなった相手と“仲直り”したいなら。やったほうがいいこと」と題して、友達との復縁方法についてあたしなりの考えを書かせていただきました。
そこでは、「相手に対して何をしたらいいか」という視点から、具体的なアプローチ方法をご紹介したつもりです(だから、あきkanさんとyukさんは、よかったらそちらも見て参考にしてくれれば嬉しいわん)。
なんだけれど、やっぱり誰かに「謝る」ときって、謝るという行為をする自分自身が何を考えておかなきゃいけないのか、これを機に自分の何を見つめ直さなきゃいけないのか、そういう部分を自覚しておかないと、その謝罪って意味をなさないと思うの。
味噌汁にダシ利いてなかったら「は?」ってなるでしょ?そんな感じ。
だから今回は、きっと冬のヤマアラシモード真っ最中であろうふたりと一緒に、まずは「謝るときの“わたし”のあり方」について思いをめぐらしてみることにするわね。そうすることで、誰かと針で傷つきあってしまうような状況から、少しでも前に進めるかもしれないし。
そしてその上で、あきkanさん、yukさんそれぞれに「こんな感じで謝罪してみたら?」と、アドバイスできればなんて思います。
さて。今回もらったお手紙には「それぞれ絶妙にとっ散らかった」なんて、ともすればキツめかもしれないコメントを最初に添えちゃったわけだけれど、でもこれ、あたしとしてはかなり素直な感想なの。
だってさ、ふたりとも身近な人との付き合い方というか、相手と交わす「言葉」の使い方というか、ちょっと可愛らしすぎるほどに不器用だなぁと思うんです。人のこと言えた義理ではないって自覚はあるんだけどね……。笑
まず、あきkanさん。 「ハグしに行こっかなぁ」なんて表現、相手が女性だからとかでなくとも、この日本だとよっぽど親密な間柄じゃなけりゃ、冗談だったとしても「え、どういうこと?あんた、なんか大丈夫そ?」ってなると思う。
そして、もし実は単なる冗談じゃなくて、「男女」的な何かが少しでも気持ちのなかにあったのだとしたら「そりゃその台詞は当然マズかったねぇ」という感想に尽きるかなぁ。
身体の接触を求めるのって、一種、性的なことを連想させるはずだし、だとしたらそういうフレーズって相手に気軽に向けていいものとは言えないもの。
次に、yukさんの場合。いろんなことを考えたんだけれど、シンプルな感想としては「絶交する契約なんて、そこまでの覚悟がないんだったらしなきゃいいのに」って感じ。
厳しく聞こえるかもしれません。でも、あたし実は人との絶交というのを選択したことって何回かあって、その時は「もう二度と話さない。目の前にいても居ない人同然に扱う」って腹括ってそうしたの。そうじゃなきゃ、自分の大事な部分が守れないなぁって思ったから。
人との縁を断つとか、「絶交」という単語を口にするのって、それぐらい退っ引きならない事情や決意があってこそであるべきなのよ(だから、色々あって頭にきたから縁切ったなんて、ちょっと人間関係のとらえ方カジュアルすぎない?!って正直びっくりしたわ)。
だからね、ふたりはきっと相手に謝る前に、そんなちょっとした甘さというかゆるさを抱え持つ自分自身について、「これでええんか、おのれ」って、反省とまではいかなくとも内省はしてみた方がいいと思うの。
さっき紹介したヤマアラシのジレンマは、「適切な距離を互いが保つこと」がその解消法だって言われたりするけど、実はそれだけじゃなくて、同時に「自分がどんな人間かを知って、他人とうまくやれるよう自立を図っていくこと」も、きっと大事だったりするのよね。
あきkanさんはみずからの“好意の出し方”について、yukさんはその“けじめの付け方”について、それぞれまず考えてみてはどうかしら。
その上で、です。
例えばあきkanさんは「誤解をさせるような言動が事実あったし、それについて僕はこれまで考えが足りなかったと思う。友達に戻ってほしい、ごめん」と、yukさんは「絶交なんて言葉、する気もないのに軽率に使ってしまった。裏切るようなことしてほしくないって伝えたかっただけなの、ごめん」と、自分についてかえりみたことを添えながら謝ってみると、きっと相手にも響くんじゃないかなとあたし思うの。
ヤマアラシのたとえを使うなら、「おいらってば、君にこんな長さの針を、向きも間隔もわからずにぶっ刺しちゃったらしい。もうしないね、ごめん」って言ってみることで、新しい寄り添い方を相手と一緒に探せるようになるんじゃなかろうか、って感じの話かな。
もちろん、それで向こうが許してくれない場合もあるでしょう。
それはもう、やっぱりそれまで。
でも、自分について考え直すことからは一定数の成長を得られるだろうし、そこから生まれた経験値はきっと、同じ過ちを犯さぬための歯止めとなってくれるはず。
あたしとしては、相手とうまくいくことを第一に願っているけれど……。
そのためにも、まずは目の前の苦難をよき肥料とするために、みずからのこころを“たがやして”みてください。
そして、その土壌から育ってきた言葉や思いを、思いやりや信頼といった包装紙で包んで、素直に「ごめん」と渡してみてください。
そのブーケが、今置かれているジレンマ状態から、ふたりを解き放ってくれるだろうから。
あきkanさんにもyukさんにも、自分たちの針がぶつかるかどうかを気にせずに済む楽しい時間が、再びその友人たちとの間に訪れるよう、微力ながらも画面の向こうから応援していますね!
ということで、今回は「友人との絶縁の解き方」について、昔のコラムも引き合いに出したりしながら、「ヤマアラシのジレンマ」をもとに考えてみました!
このお話、よくアニメとか小説にも登場したりするから、知ってる人もいたんじゃないかしら。エヴァで有名な庵野秀明監督とか、この手のたとえ大好きよね……。笑
そうそうあたしさ、最近知ったんだけど、実際のヤマアラシは冬に群れを作っても、何も生えてない頭頂部だけ寄せ合うから、お互いの針刺さったりしないらしいわね。
なんかちょっとショック。←
でも本当に、寒い季節ってちょっと冷気にさらされただけで心までカチコチになっちゃうものよね。
頭でもなんでも、寄せ合えるものは寄せ合って、なんとか乗り切りたいものだわぁ。
皆さんも、こころもからだも少しでもあったかくなるよう、それぞれ養生してくださいね。
あたしはとりあえずストーブガン炊きするわ。←
ではではまた次回。Sitakkeね〜!
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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:nabe(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。)2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム『てる子のお悩み相談ルーム』を連載中。
「気まずくなった相手と“仲直り”したいなら。やったほうがいいこと」
これは「甘え」でしょうか?もっとがんばらなきゃ、と思えば思うほど、心が折れて辛い。
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