円山動物園にアジアゾウ4頭が来園して、4年が経ちました。
シュティンとニャインのメスの親子、若いメスのパール、そしてオスのシーシュ。
今、パールのおなかには新しい命が宿っています。
道内の動物園のゾウの飼育の歴史の中で初めての出産が、もうすぐそこまで来ています。
「ちゃんと赤ちゃんがいるんだなって思った。すごい、すごいなって」
声を弾ませるのは、札幌市円山動物園の飼育員・小林真也さん。
円山動物園で撮影されたゾウの赤ちゃんの姿です。
頭や鼻、背骨が確認できました。
今、アジアゾウ・パールのおなかで、道内で初めてとなる赤ちゃんが確かに育っています。
日本で初めてゾウが飼育されたのは、今から実におよそ300年前。
江戸幕府は徳川吉宗将軍のその時代までさかのぼります。
それなのに、動物園の人気者・ゾウが日本で子孫を残す「繁殖」に成功したのは、2000年代以降で、これまでにたった15例しかありません。
円山動物園の参与・小菅正夫さんは、「オスは危険だ、ゾウはオスは飼わないほうがいいという考えがあって、日本の動物園は最初から繁殖をあきらめてメスだけ入れていた」と話します。
道内の動物園でも、過去に飼育されていたのは、ほとんどがメス。
唯一50年以上前、旭山動物園にオスのタロウがいましたが…
小菅さんは、「そもそも交尾が見られない。動物園で繁殖に至らないってことは失敗したということ。ものすごく大きな…なんか…何やってたんだろうなということなんですよ」と過去の飼育への後悔を語ります。
道内に暮らしていたすべてのゾウたちは命をつなぐことなく、動物園で死んでいきました。
だからこそ円山動物園に再びゾウを迎え入れるとき、この場所には過去の反省と教訓が詰まっていました。
例えば起伏に富む、やわらかい砂の上を運動できること。
例えばぐーっと首を持ち上げ足の筋肉を使い、えさをとるしぐさ。
小菅さんは、「ゾウを飼うのに日本の動物園はコンクリートの上で飼っていた。あれが大失敗だってことにようやく気付いた。10歩歩いたら壁にぶつかるようなところで飼ってさ、そしたらその姿勢のままずっといるでしょう。旭山動物園のゾウはずっと立って、死ぬまで立ってたの」と振り返ります。
一方、今の円山動物園では、「斜面で上に体を向けて、頭を上にしてえさをとっているでしょう。あの姿勢を取れるかとれないか。交尾に絶対な姿勢は要するに、前足を高くして背中を持ち上げても崩れない股関節の柔らかさが必要なの」と話します。
もうひとつのカギが、ゾウが4頭やってきたことにあります。
ゾウは本来、メスの群れで子育てをする動物。
メスが複数いることが繁殖に欠かせないポイントなのです。
ゾウの妊娠期間はおよそ22か月。
出産は早くて来年3月末ごろ、最も遅くて再来年1月ごろの予定です。
これから待ち受ける出産はどんなものになるのか…
ことし産まれたばかりの赤ちゃんがいる“先輩”動物園に、その未来図を見に行きました。
次回の記事でご紹介します。
⇒【生後5か月・ゾウの赤ちゃんがかわいい!"先輩"に学ぶ、円山動物園の「初出産」は】
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2022年11月30日)の情報に基づきます。