ひとつひとつ、色合いが違うスピーカー。材料は、海で拾い集めました。
さわやかな青の空と、深い青の海。北海道・島牧村です。
札幌から車で約3時間半、1300人ほどが暮らす、小さな村です。
秋、村外からもたくさんの人が訪れる、毎年恒例のイベントがあります。
「小さな町の小さなマルシェ」。島牧村の道の駅のすぐそばにある、ユースホステルで開かれていて、ことしで11年目です。
屋外に20個以上のブースが並び、フェアトレード雑貨や自然栽培の野菜、島牧村の夫婦が作るオーガニックのトマトジュースなど、体や自然に優しいものがそろいます。
このイベントの中で、ことしは特別な試みも行われました。
島牧村出身のシンガーソングライター・中田雅史(なかた・まさし)さん。彼の呼びかけで、イベント会場裏の海岸で、「ビーチクリーン」をしたのです。
ただゴミを拾うボランティアではありません。拾ったゴミで、「スピーカー」を作るのです。
9月に中田さんらが拾ったゴミで作った試作品が、こちら。
それぞれの色が混ざり合った、世界にひとつだけのスピーカーです。名付けて、「Ocean plastic speaker “pure”」。
中田さんは、「純度の高い、“ピュアな体感スピーカー”。ゴミを拾う行為も、スピーカーの部品を拾い集めている感覚なら、“ピュア”な行動になる」と話します。
ビーチクリーンには、村内外から、およそ30人が参加しました。
母親と参加していた、島牧村の小学2年生。役場の貼り紙を見て「スピーカーにリサイクルするというアイデアが意外だったし、役に立ちたいと思った」ため、母親に「参加したい」と話したといいます。
札幌から参加した親子は、「子どもが裸足であそぶときに、ゴミがあると危ない。ビーチクリーンは一人ではできないからイベント化していると参加しやすいし、拾ったものがまた使えるものになるのがいい」と話していました。
せたな町から参加した親子は、「子どもと宝探し感覚で、楽しみとして参加できる」といいます。子どもたちは、「こんなに大きいの拾った!」と母親に笑顔で報告していました。
みんなで拾えば、あっという間にこの量に。
この活動は、環境省が推進している「ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業」で採択されました。企業などと連携して海洋ゴミ対策をする自治体を支援する事業なのですが、ほかに選ばれているのは、「大阪府」「広島県」など…。
この事業を担当する、一般社団法人日本環境衛生センターの鈴木弘幸さんは、「ほかは県レベルで採択される中、1300人規模の村が手を挙げたことに大いに期待しています。中田さんが提案してから、村がやると決めて行動に移すまでのスピード感を見ていても、小さな自治体だからこそできることがあると感じています」と話します。
この日も、「小さな自治体」ならではの良さを感じることがありました。村長も参加したのです。
藤澤克村長は、「プラスチックは朽ちないので、海のマチには驚異なんです。今回の活動は、そこに目を向けて、楽しめるように変える」と話しました。
村長や役場職員が、村民と顔を合わせる機会が多い島牧村。中田さんの想いに共感し、村がすぐに動き出したように、小さな村だからこそ、「SDGs」が達成できるのかもしれません。
村長は、「ひとり一人の小さなことが積み重なり、大きくなることが持続可能」と話していました。
でも…海洋ゴミの問題は、海に面するマチだけのものでしょうか。
鈴木さんが、ビーチクリーンで拾った、ペットボトルを見せてくれました。
ラベルに書かれた文字は、日本語ではありません。つまり、村の海岸にあるゴミは、村で出たゴミとは限らず、村外・海外からも流れ着いているのです。
鈴木さんは、「これを島牧村の人たちだけが、ずっと拾い続けないといけないでしょうか」と投げかけます。
広がる海と、色づき始めた山々。
この豊かさを守るのは、壮大な話に聞こえますが、ひとり一人に求められるのは、小さな積み重ねです。
島牧村で始まった“ピュア”な活動、あなたも、その仲間になってみませんか?
・中田さんがプロデュースしたプロジェクトのイメージソング:「この海越えて(feat.Asumi)/中田雅史&Terroir musicians」
Sponsored by 島牧村
※島牧村は環境省が推進している「ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業」実施の受け口となる自治体です。