母親は子どもを愛してあたりまえ。
母親は子どものことを理解できてあたりまえ。

そんな風に思われがちです。でも、あたりまえなことなんてないのです。我が子なのに「嫌い」とすら思ってしまう自分を強く責めてはいませんか? 今日は自分の娘をかわいいと思えないと苦しんでいるあなたが少しでも楽になるような言葉を、公認心理師である筆者からお届けします。

自分にないものを持っている娘

以前にも書いたのですが、母親であるあなたが娘時代に求めても得られなかったものを簡単に手にしている娘を憎く思ってしまうことはよくあります。
あなたは一生懸命に自分が親にしてもらいたかったことを娘にしてあげようと努力します。でも娘は感謝もせず、場合によっては反抗的な態度を取ってくることも……。そのたびにあなたは傷つき、がっかりして、落ち込みます。傷つきながらも「自分は母親なんだから」とまた頑張って、でも思うような反応が得られず……ということが続けば、娘はかわいい我が子ではなく自分を傷つける人物になってしまいます。自分を傷つける人を嫌いと思うことは、自然なことです。

そういう場合は、娘のためにと頑張りすぎないようにしましょう。もちろん、無視し続ける、何もしないということはできません。でも、これをやったらすごく喜んでくれるかなと頑張りすぎている部分がないか振り返ってみて。ちょっと頑張りすぎているように感じたら、少しだけやってあげる量を減らしてみましょう。

大事な居場所を奪う娘

「娘と夫が仲良くて……寂しい」というご相談をうかがうこともあります。本来であれば、喜ぶべきことなのに、素直に喜べない。「自分よりも父親になつく娘の姿を見て悲しくなる……」というのともまた違い、「娘ができるまでは自分に向いていた夫の目が娘にだけ向いてしまっているように感じて寂しい」という方。「こんな自分はおかしいのでしょうか?」と悩まれている方がいらっしゃいます。

おかしなことではありません。そういう場合は往々にして、「なかなか自分の素を見せられない、甘えられない人生を送って来たけれど、夫だけは違う」ということが多いです。大事な存在である夫が、自分以外の人(たとえそれが娘であっても)に向いているのがなんとも寂しい……。それは素直な気持ちです。恥ずかしいことでもおかしいことでもありません。

それだけ大事に想えるパートナーと出会えたことは幸せなことです。ただ、寂しさ、孤独感から、本当は大事なはずの夫や娘にイライラしてばかり……というのは辛いものです。
そういう時は、夫に素直に寂しさを伝えてみましょう。怒りの前に感じているはずの本当の感情(一次感情といいます)を見つけて、怒りではなく一次感情の方を伝えてみると良いですよ。そして、できれば、たまには夫婦二人の時間を作ってみるといいですね。

“好きと思えない”娘を育てているあなたの努力はすごい

冒頭でもお話しましたが、母親だからやってあたりまえということは何一つありません。母親だからこうあるべきということもありません。相手を故意に傷つけることはいけませんが、嫌いと思ってしまうことがあってもいいのです。その気持ちに悩んでいるということこそが、あなたが人として一生懸命に娘と向き合おうとしている証拠です。

好きなもの、かわいいと思うものを大事にするのは実は簡単なのです。お料理が大嫌いという人が食事の支度をするのは、好きな人がするよりもずっと大変だと思いませんか? 子育ても同じです。「かわいいから○○してあげたいな 」と思う人が使うエネルギーと、「かわいいと思えない。でも○○してあげなくてはいけない」と思って使うエネルギーを比較してみたら、後者の方がずっと多くのエネルギーを使うのです。だから、嫌いだなと思う娘を育てているあなたは頑張っていると思います。

「娘を嫌いだな」と感じること自体、あなたにとって辛いことと思います。認めがたいことと思います。でも、「嫌いでも頑張っている」と自分を少し認めてみましょう。嫌いと思っている自分を責め続けることで、より娘への嫌悪感が募ってしまいます。どうか、「好きと思えない」という気持ちだけであなた全てを否定しないでくださいね。

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文:竹原 久美子(公認心理師/婦人科クリニック勤務)
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【ライター:竹原久美子 PROFILE】
中学時代、寄り添ってくれる人の大切さを感じ、心に寄り添う仕事につくことを決める。
「人生の始まる現場で学びたい」と産婦人科での実習を希望し、そのまま、産婦人科で女性の心に寄り添い続けてもうすぐ20年。
土地柄を肌で知っていることは心の理解にも役立つという想いで、地元札幌で臨床に携わり続けている。

【画像】Graphs、siro46、Fast&Slow、Graphs / PIXTA(ピクスタ)

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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