子どもだけでなく大人も楽しめる絵本を、絵本セラピスト協会認定「大人に絵本ひろめ隊員」であるHBCアナウンサーの堰八紗也佳(せきはち・さやか)がご紹介します。
これまではそれほど気にならなかった絵本が、そのときの状況や心境によって、急に身近なものに思えることって、あるものですね。
今回は、第2子を妊娠中の筆者が思わず手に取りたくなった絵本をご紹介します。子育てに不安を感じているすべての妊婦さんやお母さんに読んでいただきたい1冊です。
【内容】赤ちゃんは生まれてくるとき、どのママの子どもになろうか、選んでいます。そして、どんなプレゼントを抱えて生まれてくるかも自分で決めています。この絵本は、誰もが経験しているのに忘れてしまう“生まれる前の世界”のことを、忘れないでいた女の子が話してくれたお話です。(ポエムピースHPより)
絵本を描いたのは、札幌在住の絵本作家ひだのかな代さん。かつては円山動物園でボランティアガイドもしていたというひだのさんに、お電話で『うまれるまえのおはなし』の制作秘話をお聞きしました。
——これまで動物の絵本を多く描いてきたひだのさんが、どうして胎内記憶の絵本を描いたのですか?
きっかけは、不登校の子どもたちに向けて授業をしている先生からの依頼でした。授業で教材として使いたいということで、胎内記憶が残っているという小学4年生の女の子「ふぅちゃん」に取材をして絵を描き、その後、周囲からの要望を受けて絵本として完成させたものが『うまれるまえのおはなし』です。
——初めて胎内記憶の話を聞いたときは、どう思いましたか?
正直、はじめのうちは信じられなかったです。でも、どんな角度からの質問にも明確に答えるふぅちゃんの話を聞くうちに、「これは本当の思い出話なのだ」と確信し、ふぅちゃんの話をできるだけ忠実に再現しなければと思いました。
——苦労した点はありますか?
ふぅちゃんの話では、産まれる前は雲の上にいて、その雲がものすごく綺麗なピンク色ということなのですが、“ピンク色”にも色々ありますよね。ふぅちゃんが納得するピンクを作るまでが、特に大変な道のりでした。他にも“たましい”の色や質感なども、ふぅちゃんの記憶にあるとおり絵の具で再現することは、本当に難しくて……。ふぅちゃんから何度も何度も厳しいダメ出しを受けながら、工夫を重ねてやっとの思いで完成しました(笑)
——どんな人にこの絵本を読んでもらいたいですか?
ありがたいことに、この本を読んで、子育てに不安を感じているお母さんから心が救われたという感想もいただきます。小さな子どもたちに読んで聞かせるというより、大人の心に届く絵本なのかなと思いますので、これからもそんなお母さんたちの心の支えになれたら嬉しいです。
——素敵なお話をありがとうございました!
ひだのさんから「子育てに不安を感じているお母さんから心が救われたという感想もある」と伺いましたが、もちろん筆者もそのひとり!
2人目にも同じ愛情を注げるだろうか、長男が寂しい思いをしないだろうか、仕事と育児の両立は上手くいくだろうか……など、悩みは尽きません。
ここからは、筆者が特に心に残ったポイントを2つお伝えします。
なかには「病気」というプレゼントもあって、勇気のある子はそれを選ぶというシーンがあります。
誰しも、我が子が生まれてくるまで健康かどうか絶対的な保証はなく、何かしら心配であることは確かです。しかし、どんな子が産まれてきても、たとえ病気を抱えて生まれてきても、我が子自身が勇気を持って選んできたものなら、それさえも愛おしく、こちらも覚悟を持って受け取ろうと思えるようなお話でした。
最後のページに 『え? どうして おかあさんを えらんだのかって? それはね おかあさんの えがおが いちばん かわいかったからだよ』 という言葉があります。
妊娠中はいわゆる“マタニティ―ブルー”という言葉があるように、ちょっとしたことでも悲しく思えたり、不安になったりしていまします。筆者も妊娠初期の頃、無意識のうちに眉間にシワが寄っていたようで、4歳の息子に「ママ、ニコニコして!」と言われ、ハッと我に返ったことがありました。今お腹の中にいる子は、きっと自分の感情にも連動していますから、できるだけ笑顔でいて赤ちゃんも家族も安心させたいと感じました。
もちろん、うまれる前の記憶を信じるか信じないかは、人それぞれ。ですが筆者は、この絵本を読んであたたかい気持ちになりました。子育てに不安を感じているすべての妊婦さんやお母さん、機会があればぜひ手に取ってみてくださいね。
今回、『うまれるまえのおはなし』の出版社ポエムピースから許諾を得て、この絵本を朗読させていただきました。仕事の合間をぬって、こころを込めて朗読したので、ぜひYoutubeも見てみてくださいね。
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【取材協力】
ひだのかな代・・・札幌市在住の絵本作家、イラストレーター。自他共に認める動物好きで、代表作は絵本『ねこがさかなをすきになったわけ』(新風舎)、『にこにこぎゅっ』『オビとタネ』(いずれも中西出版)、紙芝居『おさるさん』(童心社)など。けんぶち絵本の里大賞びばからす賞を2度受賞するなど受賞歴多数。(ポエムピースHPより)
「連載コラム・今月の絵本通信」
文|HBCアナウンサー 堰八紗也佳
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