2022.11.21

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「天気の子」の気象監修者が選ぶ!魅力的な「雲」ランキング第一位は? 見つけるコツも

新海誠監督のアニメ映画『天気の子』。まるで実写のような美しい空の描写が見どころの一つですが、気象監修は、雲研究者の荒木健太郎さんが担当されています。

本人役で声優の出演もされている荒木さんをゲストに迎え、「雲」の魅力についてお話を聞きました。

vol.1:『天気の子』の気象監修を担当した”雲研究者”が語る「雲って人間みたいなところがあるんですよ」

vol.2となる今回は、荒木さんと普段から親交があり、HBC「今日ドキッ!」などで活躍する星井さき気象予報士との対談です。雲”沼”にハマり、雲や空の様子をSNSに頻繁にアップされているお二人に、「好きな雲ベスト3」をそれぞれ選んでいただきました。

左:荒木健太郎さん(雲研究者) 右:星井さきさん(気象予報士)

<Profile>1984年生まれ、茨城県出身。気象庁気象研究所の主任研究官として、防災・減災を目的に、豪雨・豪雪をもたらす雲の仕組み、雲の物理学の研究に取り組んでいる。映画『天気の子』(新海誠監督)気象監修。MBS/TBS系『情熱大陸』などメディア出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』、『世界でいちばん素敵な雲の教室』、『雲を愛する技術』など。

二人が好きな雲① 大迫力の「かなとこ雲」

星井気象予報士が飛行機から撮影した「かなとこ雲」

星井:好きな雲の1つ目は、積乱雲の一種である「かなとこ雲」です。

荒木:この写真、僕が作ったカレンダー『魔法のような空の風景』の表紙に使わせていただきました。素晴らしい写真です!

『魔法のような空の風景』(インプレスカレンダー2023)を手に。

星井:私、飛行機では必ず窓際に座るんですけど、東京に向かう飛行機の中で偶然見つけて感動して、「これは撮影しなきゃ!」ってなったんです。飛行機を降りてすぐ荒木さんに「スゴい写真が撮れました!」と送ったのを覚えています。

荒木:「お願い、カレンダーに使わせて!」ってすぐ返事したよね? この写真が本当に素晴らしいのは、てっぺんがきれいに平らになっているところなんです。これは雲が発達して限界の高さまで行った後、横に広がっている最中で。このタイミングで飛行機に乗り合わせて、てっぺんと同じ高さから撮れたというのはものすごく貴重です。

星井:ラッキーでした! 下から撮ると平ら具合が分かりづらくなってしまいますからね。

荒木:しかも、小さなわた雲や成長中の雲もあって、いろんな世代の雲が1枚の写真に収まっているんです。こんな見事な写真は見たことがないです!

星井:そこまでの写真だったとは、知りませんでした(笑)

荒木:僕も好きな雲の1つ目は、かなとこ雲を選びました。地上から撮った写真です。

荒木さんが地上から撮影した「かなとこ雲」

星井:迫力がありますね!

荒木:でしょ? 上昇気流が強くて、限界突破して、真ん中が盛り上がるオーバーシュートという現象が起きています。積乱雲の一生の中でも一瞬だけできるものです。

星井:スゴいです!

二人が好きな雲② 虹色に輝く「彩雲」

「彩雲」 星井気象予報士撮影

荒木さん撮影

星井:好きな雲の2つ目は彩雲(さいうん)です。あ、荒木さんも同じですか!
荒木:太陽の近くにある雲が、虹色に色鮮やかに輝く姿。美しいですよね。

星井:この雲はすぐに場所も見た目も変わってしまうので、一期一会の楽しみがあって、ハマりますね。

荒木:実は季節や場所を問わず頻繁に出会える雲です。見つけるにはコツがありまして、まず高い空に広がる、つぶつぶした小さな雲「いわし雲」がいることを確認してください。次に太陽がギリギリ隠れる建物などの陰に移動して、太陽を直接見ないように気をつけながら、太陽のすぐ近くのいわし雲を見ると、肉眼でもはっきりわかる虹色の彩雲に出会えます。

−いわし雲を見分けるポイントはありますか?

荒木:見た目が似ている雲に、ひつじ雲と呼ばれる高積雲(こうせきうん)がありますが、人差し指1本で見分けられます。

いわし雲 『もっとすごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)より

ひつじ雲 『もっとすごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)より

まず、目線と水平な高さからげんこつ3つ以上の高さの空に向かって手をまっすぐのばします。次に、人差し指を立てて雲に合わせます。この時、一つ一つの雲の大きさが指一本の幅以内ならいわし雲、指1〜3本分ならひつじ雲です。これは? と思う雲があったら試してみてください。

星井気象予報士が好きな雲③ 思い出深い「夕焼け雲」

星井:私の3つ目は、夕焼け雲です。

星井さき気象予報士撮影「夕焼け雲」

荒木:キレイに赤く焼けているね!

星井:数年前にHBCの旧社屋の屋上から撮影したものです。こんなに染まっているのを見たのは人生で初めてじゃないかという夕焼けでした。ちょうど「今日ドキッ!」の収録を終えて、ウェザーセンターのみんなで「今かなり焼けているから屋上に行こう」と屋上に走って、たくさん撮った思い出深い1枚です。

荒木:みんなで共有できるのは良いですよね。

星井:見た目のインパクトもあるので、SNSでの反応も多くいただきました。

荒木さんが好きな雲③ 科学的にも面白い「穴あき雲」

荒木:僕の3つ目はこれ。ちょうど最近撮れた「穴あき雲」です。

荒木さん撮影「穴あき雲」

星井:まさに穴ですね!

荒木:穴です。先ほど紹介したいわし雲にできやすい現象です。このいわし雲って、マイナス20℃くらいの低温の環境でも凍れずに液体のままでいる”人たち”なんです。

星井:”人たち”。雲を人のように愛でる荒木さんらしい表現ですよね。

荒木:”彼ら”いわし雲は、本当は凍りたいけど芯となるチリが足りない状態なんです。でも何らかのきっかけで雲の中に氷の粒が発生すると、周りの水蒸気も使いながら氷が成長していきます。写真で見ると穴の真ん中の雲です。これが周りの水蒸気を吸収し、その分の水蒸気を補うために周りの液体のいわし雲が蒸発する。それでどんどん穴が開いていくんです。

星井:へー!

荒木:いわし雲をつくっていた液体の水が気体になり、その気体が氷として固体になり、結果として穴が広がっていく。水の変化が一つの現象の中に現れていて、見ていて楽しいです。

どんな日でも空を見上げて「人間性を回復」しよう。

−お二人とも本当に雲がお好きなんですね! 最後に、あらためて雲の魅力を教えてください。

星井:私は、晴れていても曇っていても、雨が降っていても空を見ます。空を見上げることには瞑想に似た効果があるんじゃないかと思ってるんです。人間ってどうしてもいろいろ考えてしまって不必要なことまでぐるぐる考えてしまいますけど、多分、誰もが空を見れば一瞬ハッとなると思うんです。

荒木:めっちゃわかります。僕はこれを「人間性の回復」だと思っています。忙しい時ほど、ちょっとの時間でも夕焼けとかを見ると、びっくりするぐらい回復しますよね。

星井:一期一会なところも魅力的です。たとえ出会ったのが特別な雲じゃなかったとしても、たまたまその時その場所でしか出会えない雲なんだ。そう考えながら、空に浮かぶ水の粒、氷の粒に思いを馳せています。

荒木:僕が思う雲の魅力は、素直さです。大気や風の状態によって姿・形を変える。雲が我々に空の様子を教えてくれているわけです。雲の知識を少しでも持っていれば、キレイな模様の空にも出会いやすくなりますし、例えば積乱雲からの「天気が急変するよ!」という声に気づいて避難することもできます。結構身近に浮かんでいる人たちだからこそ、相手のことを知っているとより付き合いやすくなります。そういう意味では上手な距離感で付き合っていきたいです。

星井:私も、雲のことをもっと知りたくなりました。ありがとうございました!

立ち会ったHBC近藤肇気象予報士も一緒に。

***

文:にの瀬
編集:nabe(Sitakke編集部)
協力:HBCウェザーセンター

取材日:2022年10月

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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