2022.11.19

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「まだまだこれからだ」デザインを学ぶ大学生が、第一線で活躍するクリエイターに聞いた“がんばりかた”【後編】

連載「HOKKAIDO CREATOR INTERVIEW」では、北海道からさまざまな価値観を発信する、クリエイターたちの視点や素顔をお伝えします。

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札幌市立大学2年の「はやみん」です。
大学ではデザインを学んでいて、特に紙媒体の出版物やプロダクトに興味があります。

「興味のあることを仕事にしたい。でも、どんなふうにがんばればいいんだろう?」

筆者自身の“これからの生き方・がんばり方”にヒントを貰うべく、第一線で活躍するデザイナーさんを訪ねてみることにしました。

お話をしてくれたのは、札幌のグラフィックデザイン会社 『Shiori Graphic』代表の足立詩織さん。

前編:紙媒体の「これから」はどうなるの?デザインを学ぶ大学生が、第一線で活躍するデザイナーに聞いてみた

足立詩織さんプロフィール:札幌市立高等専門学校を卒業し、札幌のグラフィックデザイン事務所・(有)寺島デザイン制作室に勤務したのち、2011年に「Shiori Graphic」を設立し、代表を務める。2児の母。

前編もご紹介した通り、足立さんは、紙とデジタル、それぞれの良さを最大限に活用したデザインを世の中に発信しています。26歳という若さで事務所を立ち上げ、子育てをしながら、デザインの第一線で活躍されている足立さん。後編では、足立さんの“がんばりかた”について、お話を伺います。

学生時代の"がんばり方”

「学生時代にがんばったこと」について質問したところ、棚から持ってきてくれたのが、こちらのポートフォリオ。

ポートフォリオとは、クリエイターが自分の実績をまとめ、相手にアピールするもの。筆者の大学でも、卒業時までに自分自身のポートフォリオを作成し、インターンなどに使用します。

こちらのポートフォリオは、学生時代に足立さんがつくったという、その名も「詩織本」。

足立さんのポートフォリオを見せていただいて驚いたこと。それは、ポートフォリオ自体が “ひとつの作品” として成立するよう、とても工夫が凝らされていることです。

たとえば、こちら。

ページをめくると……

大きな米粒がひとつ。つやつやと輝いていて、おいしそう!

北海道のお米「きらら397」を題材に「自分だったらどういう広告を作るか」をテーマにしたつくった作品だそうです。紙を米粒の形に切り抜き、お米の質感を出すために糊が塗られています。

次に注目したのは、こちらの作品。

うさぎの耳をめくると……

お花が咲いたように見える仕組みになっています!

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これまで筆者が見てきたポートフォリオは、作品実績をデータとして印刷し、貼り付けたものが大半でした。

「詩織本」のように、作品の実物を挟んでいるものは、見たことがありません。データではなく、作品そのものをポートフォリオに貼り付けることで、手作りのぬくもりが伝わってきます。

「当時は、大きなプリンターが無かったので、全部、手で貼るしかなくって大変でした。でも、工夫するのが本当に楽しくて。大小いろんな紙を入れてみたり、ポストカード作ったら実物を挟んでみたり、透明な紙が入っていたりするのは(ポートフォリオを読んだ人にとって、そっちのほうが)ちょっと面白いんじゃないかなと思って、がんばりました」と話します。

さまざまな質感の紙を切り貼りし、仕掛けが作られていることで、ページを一枚一枚めくるたびに驚きとワクワクがあります。
1ページずつにそれぞれのテーマがあるものの、足立さ独自のな世界観を表現するひとつの作品として、ポートフォリオが完成されているのです。

「この頃はほとんど寝ずに、2週間ぐらいでがむしゃらで完成させました。大変でしたねえ」と笑いながら、当時を振り返る足立さん。

この学生時代の“がんばり”が、「Shori Graphic」のプロダクトの魅力につながっているんだな、と筆者はしみじみと感じ入りました。

会社の代表、そして二児のママとしての“がんばり方”

26歳で独立をし、ご自身で事務所を立ち上げたという足立さん。事業を始めるには「背伸びしなければならなかった」とお話されていました。

「寺島デザインでの経験から生かせたこともたくさんあったのですが、独立した時はまだ若かったため、自分で事業を始めてスッゴイ背伸びしないといけなくて。依頼されたらやり抜きたいという意思はありましたが、次から次に新たな課題が降りかかってきて。最初に持っていた根拠のない自信みたいなものが、どんどん崩れていきました」

「若い時はなんかわからないけど、やれるっていう自信があって、だから独立できたと思うんですけど。でも、そうやって積み重ねていって、いろんな課題を経験することで根拠のある自信になっていきました」と当時を振り返る、足立さん。

26歳の若さで独立するパワフルさにも驚きですが、足立さんがさらにすごいのは、長女が1歳のときに事務所を立ち上げたということ。子育てとの両立のがんばり方ついてもお話をお聞きしました。

「会社員時代(寺島デザイン勤務時代)は自分1人で抱えている仕事を、自分のペースで夜な夜なやれば乗り越えられていました。でも、子育てを始めるとそうはしていられない。ある日、仕事と育児でほとんど寝ていなくて、数ヶ月の子どもをベビーカーに乗せて近くに散歩に行ったときに、つい立ちながら寝てしまって、その間、数秒ではあったけれど、子どもを放置してしまったと感じ、ものすごく反省しました。自分だけ無理すればいいわけじゃない。自分の仕事をもっとちゃんと管理しなければと思いました」

事務所を立ち上げた当時は、自宅で仕事をしていたという足立さん。
子どものいるなか、クライアントさんと打ち合わせをすることも。

「子どもがいる環境の中、仕事をすることを理解してくれない人もいます。それだけでそこで仕事を断られたこともあり、悔しい想いもしました。だからこそ、ハイハイしてるうちの子が打ち合わせしているすぐ横にいたりとか、おむつが転がってたりとかしても、それでも頼みたいと思ってくれるお客さんと仕事をするように心がけました」

仕事のペースを自分できちんと管理すること、そして仕事のスタイルを理解してくれるお客さんと仕事をすることも大切だということだと、お話してくれました。

今回の取材を通して感じたこと

取材を通し、「がんばる」ためのヒントがたくさん見つかりました。

「独身の頃は、デザインに関わっている人たちとの交流関係がほとんどだったのが、結婚してからママ友ができたんです。自分がママになって、ママ友ができたことが、すごく自分の視野を広げてくれたというか、大切なもうひとつの居場所ができました。いろんな価値観に触れることができましたし、業界だと当たり前にやっていたようなことも、褒めてくれたり。元気になれたり、自信を持てるような環境に行って人と接してみるというのも、とても大事かなと思います」

「ちょっと失敗しちゃったりとか、色々あったりしますけど、あんまり気にしすぎると進まない。やっぱり自分で解決したり、乗り越えないと自信はつかないのかなと思うんです。なので、自分にちょっと負荷をかけて、やりたいと思っていることに挑戦してみるっていうのがやっぱり大事なのかなと思います」

・自分にちょっと負荷をかける(“背伸び”をしながらも経験を積む)
・自分の居場所をたくさん見つける
・失敗は気にしない

「がんばる」というのは自分がいつも以上の成果を出すこと。そのためには足立さんの言うように、自分に負荷をかけてみることが重要なのだと感じました。ちょっと背伸びをしながらも、やりきることで、自分のキャパシティが広がり、さらに成長できるのではないでしょうか。

足立さん、お忙しい中ありがとうございました!
筆者自身、先の見えない将来に不安を抱える大学2年生ですが、デザイナーとして活躍する先輩のお話を聞いて、人生のヒントになったと同時に、背中を押された気がします。

まだまだこれからだ、がんばるぞ。

取材協力:Shiori Graphic (https://www.shiori-g.com/)
札幌市中央区北4条西14丁目1-35 かねそビル2F

取材・文:はやみん
札幌市立大学でデザインを学んでいる2年生。グラフィックデザインや紙媒体に興味があります。インスタグラム (https://www.instagram.com/ha_mt8/)で切り絵作品を紹介してます。

撮影:瑠ヲ (https://www.instagram.com/ruwo_/)
同じく札幌市立大学でデザインを学んでいます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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