2022.10.28

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「ドラァグクィーン」になりたいんですが、どうしたらなれますか?【相談】

は〜い皆さん、ご機嫌よう!「お悩み相談コラム」担当・満島てる子です。

ふふふ、実はごきげんなここしばらく。
なんでかって?いや実はね、あくまでお仕事ではあるんだけれど、今週末なんと函館に行くことになったのよん。
お店を離れてどこかに行くっていうの、ほとんどないからとっても楽しみ〜!

函館にすんごくおしゃれで大きな蔦屋書店さんの店舗があるんだけれど、みんなご存じかしら(江別にもあるわよね)。そこでなんと、2日間にわたって講演をさせてもらえることになったんです。
レインボーはこだてプロジェクトさん主催、「虹をはいて歩こう」ってタイトルのこのイベント。2019年からはじまって、今回で4回目なんだって。

今年のテーマは「表現する性」。1日目は女装子の「満島てる子」として、2日目はなんとなんと、ドラァグクィーンの「てるまゑ•ノヱビア」としてお話しさせてもらうの(クラブイベントやお祭りのステージに出演するときの、あたしのもうひとつの顔なんです)。クィーンモードで人前でじっくりトークするのって、おそらく初めてな気がするわ!

いやぁワクワクするぜ〜い!……なんて浮かれているあたしなわけですが。苦笑
そんなタイミングで、なかなか面白い依頼というか、相談のお手紙が来ていたんです。今回はそちら、ご紹介させていただきたいと思います。

【読者からのご相談】ドラァグクイーンをやってみたいんだけれど、なにから始めればいい?

***

う〜ん!なんて斬新で可愛らしい相談文なのかしら。
まずは「ねんねんこ」さん、お手紙ありがとう。そしてなんと、さっぽろレインボープライドに足を運んでくれたのね!
副実行委員長として心からお礼申し上げます。嬉しいわぁ〜。

さてさて、まさかの 「ドラァグクィーンやってみたい!」宣言 じゃぁん。
あたしとしてはめちゃくちゃウェルカム!とはいえ、まさかお悩み相談フォームからこんなお話をもらうとは、まさに青天の霹靂だったわ……笑
生きてるとこんなこともあるもんなのねぇ。たまげたわよ。

太いアイラインにこれでもかってぐらいの濃いシャドウを重ねて、スポットライトを浴びながら人前に立ち、時にはLGBTQコミュニティにメッセージを届けるため、時には自分自身のため、思い入れのある曲目を使ってショータイムをする……そんな「ドラァグクィーン」という存在としてデビューさせていただいてから、あたしも早8年。

ねんねんこさんと同じように、ナイトイベントのステージでド派手なパフォーマンスをかます先輩たちを見て、「僕もいつかあそこに立ってみたい……!」 と憧れに身を焦がしたことを、今でもときどき思い出します。

9年前のあの夏…

いやぁ、なんか色々懐かしいわねぇ。
6時間ほぼぶっ通しで踊り続けた修行時代とか、旭川のイベント出てからそのまま弾丸日帰りで店をやったカオスな一夜のこととか。
何より忘れられないのは、「てるまゑ」って名前に決まった日のことかしら(そう、満島てる子の“てる”って、ドラァグネームから来てるんです)。
実は、名付けられ方が凄まじく単純で、当時しばら〜く不満だったのよ。笑

生まれて初めて来たゲイバー。
日本酒の一升瓶ほぼほぼ開けてから来たのに、緊張しすぎてシラフ超えて石像。
誰とも一言も喋れないあたしに、店長さん(今の7パウのオーナーです)が「学生さん?何勉強してるの?」って質問してきてくれたんです。

「き……気の利いた返しとかできなきゃなやつよね……でも思いつかないぃぃ涙」と苦悶した結果、絞り出た一言が「ギリシャとかローマとか、ですぅ」だったんだけれど(初々しいというか、隠キャすぎるというか苦笑)、その当時流行っていたのがなんと、山崎マリさんの『テルマエ•ロマエ』。
それで即座に「あ、じゃあこれから“てるまゑ”って呼ぼうよ、この子!」って、満場一致で決まっちゃったの。「嘘でしょ!?」って叫びたかったもん。叫べなかったけど。

9年前の確か夏。
あたしこれからも女装で生きていく限り、多分あのときのことずぅっと覚えてるんだろうなぁ。

……っと、なんだか一人語りが長くなっちゃった。笑
でも、ドラァグクィーンをやっていると、おそらくはたから見れば「どうしてそうなるのよ!?」ってツッコミ満載な出来事ばかり降りかかってくるんです。
ねんねんこさんもきっとクィーン始めたら、自分でもよくわかんないエピソードまみれになってくると思うわよ。ある意味、醍醐味とも言えるかもしれないわね。

あなたはこれからどんな経験しちゃうのかしらん?なんて考えてたら、思わず色んな妄想が止まらなくなる先輩ドラァグクィーン。そんなわたくし、てるまゑなのでした。笑

あたしなりのAnswer

にしても、想像力たくましくしてる場合じゃなかったわ。
ここお悩み相談コラムだもんね。
なのでここからは、ねんねんこさんの気持ちに少しでも答えられるように、あたしなりのアンサーというか、アドバイスというか、そういうのを綴ってみたいと思います!

「ドラァグクィーン」の歴史をサクッと!

まず、ドラァグクィーンの歴史は本当に奥深くて、きちんと語ろうとするならシェイクスピアの時代まで遡らなきゃいけなくなっちゃうんだけれど……。
それ書こうとするとSitakkeで別連載始めなきゃいけなくなっちゃうから、そこは割愛!笑

簡単に言っておくと1950年代以降、サンフランシスコやニューヨークのナイトシーンを、ド派手な格好をした“女装”たちが彩るようになっていたの。
その文化が1990年代になって、『パリ、夜は眠らない』(1990)や『プリシラ』(1995)といった映画を通じて、徐々に日本のゲイコミュニティに根付いていったんです(ぜひ観てみてね〜)。

ちなみにその受け入れられ方には、確かに「地域性」と呼んで差し支えないものが各地であったように見受けられます。
例えば、東日本は洗練が比較的早く進み、西日本は「アングラ」と結びついた深化が。名古屋はとかくド派手で昔からダンサブル。
最近でこそ色々複雑に混ざり合ってるとはいえ、それぞれの特徴が色濃く出ていたんです。その中でも北海道はかつて「化け物性」に重きを置いていました(先輩たちに怒られそう……笑)。
言語化すると「せっかく濃いメイクするなら、どこまでも濃く!どこまでも人ならざるものへ!」って感じかな?

でも、これはあくまでも傾向。沿わなくても別に問題ないわ(実際あたしはあんまり「化け物」になりたいと思ったことはないのよね)。基本の型はもちろんあるんだけれど、メイクやパフォーマンスなんて、自分のしたいようにすればいい。
たぶんねんねんこさんが今考えておいた方がいいのは、「ドラァグクィーンをやる」とした場合、一体どんなことをどうやってしたいのかって話だと思います。

ドラァグクイーンになるには?

ちょっと難しいアドバイスかもしれないね。
もう少し丁寧に言うわ。まずね、ドラァグクィーンっていろんな活躍の仕方があるのよ。パレードのフロート車に乗ってみんなを盛り上げたりするのは、そのうちのほんの一部分。
普段のお仕事は、例えば飲み屋さんのスタッフとして盛り上げ役をしていたり、イベントのMCを担当したり、クラブで自分で考えたショーを披露したり、ってところかな。実力がついてきたらフォトモデルのお仕事なんかももらえたりするし、時にミュージカルへの出演を依頼されることもあったりします。

そして、もし北海道で「ドラァグクィーンする」のならば手っ取り早い手段があるんだけれど、それは、ドラァグクィーンの「チーム」に入ることなの(あたしの所属先でよければ、機会があったら紹介するね)。
そうすると、今言ったようないろんな仕事が実際に回ってくるし、先輩たちから色々学べるところもあったりするのよね。
札幌がメインにはなってしまうけれど、旭川や帯広のメンバーもいたりするから、函館在住(なのかな?)のねんねんこさんは、そうした人からもアドバイスをもらえるはず。
もちろん、どこにも属さずソロとして活動しているクィーンもいるから、チームに入らないっていうのも全然選択肢としてはありえるんだけれど、ドラァグクィーンを「知りたい」のならば、誰かの背中から学べるという意味で、ぜひどこかに加入してみてもいいんじゃないかなと思います。

大事なのはまず 「どんなことをしたいか」 、そしてその次に 「そのためにどんな環境に身を置くのか」 (これ、ドラァグクィーンに限らずどんな夢に関しても、そこに向かっていく際には大事にしなきゃいけないことかもしれないわね)。
この点をまずてんてんこさんには検討してもらいたい。そして、トライアンドエラーの中から、なんとなく自分という「ドラァグクィーン」を作り上げていくきっかけを手にしてほしいの。

素敵なクィーンになるために、その第1歩、ぜひ色々試行錯誤してみてくださいね!

あ、そうそう。ドラァグネームだったわよね?
えっと、クラッシックが好きな函館の方、って情報だけで一方的に決めていいんかしら?

しかも、ぱっと浮かんだの 「アマデウスおんこ」 (“アマデウス”はモーツァルトのミドルネーム、“おんこ”って函館市の樹)だったんだけど……。大丈夫そ?
OKだとしたら、デビューショーは「夜の女王のアリア」で決まりね!
もし嫌だったら、今週末函館の蔦屋に文句言いにきてちょ、よろしくぅ。

いつか一緒のステージに立つのが楽しみです。 その日までファイトよん、おんこちゃん!

ま・と・め♡

というわけで、今回はお悩み相談というよりは、特殊な就職アドバイスみたくなってしまったかもだけれど笑、みなさんもお楽しみいただけたかしら?
ドラァグクィーンって想像以上に楽しい取り組みだから、興味湧いた人、「あたしもやってみたい!」って人いたら、ぜひ連絡くれると嬉しいわ!それこそいつでも相談乗るわよん。

ちなみに 「名前付け適当すぎんか……?」 って思った人、ある意味、正解よ。
いやね、こういうのって考えすぎると一生決まらないから、ぱっぱと決めるのがベストなの。まぁあたしも「てるまゑ」当てがわれた瞬間は、きっともんのすごい顔してたと思うけど……。笑

ちなみに、今週末の「虹をはいて歩こう」では、ちょうど2日目にクィーン姿で「自分自身を“表現する”?〜ドラァグクィーンについて〜」というタイトルでお話しさせてもらうの!興味ある方、近郊の方はぜひお越しください。
ちょっとしたショーもやるつもりよん!

うふふ、函館とっても楽しみ。何食べよっかなぁん(そこかよ)。
ではでは皆さん、Sitakkeね〜!

***
文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:nabe(Sitakke編集部)
***

満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。)2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム『てる子のお悩み相談ルーム』を連載中。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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