2022.10.21

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家出をした旦那に「彼氏」ができた…?妻である私はどうしたらいい?【お悩み】

は〜いみなさん、ごきげんよう! Sitakke連載「お悩み相談コラム」担当・満島てる子です。

肌寒い季節になってきましたね。皆さん風邪とかひいてない?秋の空気、からだはもちろんのこと、こころにもひやっとしたものを運んでくるというか、不意におセンチになるものです(おセンチって……表現ババくさいかしら……苦笑)。

このメンタルゆさぶられる時期、毎年どうしてもあたしが思い出しちゃいがちなのは、9年前の女装を始めたばかりの自分のこと。
ちょうど化粧にどハマりして、1日中ポイントメイクの練習してたのがこれぐらい涼しくなった頃だったのよねぇ(14時間連続でアイシャドウ塗ってアイライン引いて……ってしてたら、皮膚あやうく持ってかれかけたの)。

今となっては女装も身についたというか、色素沈着レベルで身に染みついたような気がしますが、昔の自分のことを思うと「嗚呼、あの頃はあたしなりの“女装”像みたいなものを探して、必死こいてたのかなぁ」なんて懐かしく思ったりもしています。

そんな霜降の季節。昔の「メイクにハマる和希くん(あ、本名和希って言います笑)」のことをより一層思い出させるようなお手紙が、応募フォームの方に届いていたんです。しかもなんだかめちゃくちゃ深刻な内容じゃない……⁈
今回はそちら、ご紹介させていただきます。

今回寄せられたお悩み「2年ほど前から自宅で女装するようになっていた夫が、家出をしました」

ええと……ベルさん、お手紙ありがとう。
いきなりなんだけどまず、いつものコラムとしてというよりは、お店レベルのテンションで最初コメントさせてもらうわね。

……ちょーーーーっとあんたぁぁぁぁあ!!!!!!
なんだかさらっとした文体で書いてくれてるけれど、パートナーが家出ってとんでもない状況じゃないのよ!!!!!!

最初「こんなお悩み相談が来てて……」って担当のナベちゃんから見せてもらったときあたしもう度肝抜かれたわ!!!!!!思わず「嘘でしょ!?!?!?」って声出ちゃったもん!!!!!!

いやベルさん本人が1番痛感してることかもしれないけれど、家出ってただごとじゃないからね!?!?!?例えば「メールだけで決して会ってくれません」って言ってるけれど、そのメールを打っている相手は本人だって確証取れてる!?!?!?居場所だけでもどこかわかってる!?!?!?

確証取れてなかったり、わかってないとするならば、警察でも探偵でもなんでも使ってすぐ会わなきゃ!!!!!!もしくは最低でも安否確認!!!!!!「夫は彼氏ができたのでしょうか?」なんて気にしてる場合じゃねえのよ!!!!!!

あのね、いつか別れるにしても今家族なのはベルさんなんだから、もしこのときこの瞬間に、相手がなんらかよくないことだったり、事件や事故に巻き込まれてたとしたならば、その余波をくらうのはあんたなのよ!?!?!?「前から別れたいと言われていたので、驚かなかったのですが」とか呑気にかまえている場合じゃないの。相手はもちろん、自分自身の身を守るためにも、向こうが嫌がろうが強制的にでも「パートナーの務め」として会ってもらわなきゃそこはダメ!!!!!!

これは相手のセクシュアリティがどうなのかってこと以前の話。まず家出って!!!!!!行方不明って!!!!!!
おおごとじゃないのよ!!!!!!お願いだからまずそこ自覚してすぐ動いてちょうだい!!!!!!はよ旦那探しな!!!!!!!

…と、勢いまかせに書いてしまったけれど。

ふうぅ(汗)。ここまでちょっと大人気もなく、勢いまかせに書いてしまいましたが、ベルさんはじめ読者の方々、どうかお許しを。

いつもこのお悩み相談ルームでは、お手紙をくれた方の気持ちに寄り添うことをあたしは大事にしています。
ですが、今回のようなケースについて言えば、やっぱり「まずこれはしなきゃ!」とハッキリ伝えることが不可欠かなと思ったの。だから、少し”荒くれてる子”(笑)が出てきちゃったけれど、ベルさんのことを否定したいとかそういうことではないのよ。胡散臭い文言だけれど、あなたのためを思ってのこと。だから、はじめに「家出」の対処の必要性について、少し強めに伝えさせていただきました。その点、ご理解いただけると嬉しいです。

でも、このベルさんのお悩みポイントって、単に家出だけじゃないのよね。そこにパートナーの性のあり方が関わってるかもしれないというところ。これ、なかなか一筋縄じゃいかないだろうし、あたし実は似たような相談を実際に受けたりしたこともあるんです。だから、ベルさんのモヤモヤ感はなんとなく想像がつくし、その意味では心中お察し申し上げるわ。

ここからのアンサーはちょっと落ち着いて、「性のゆらぎ」という話題について、ベルさんや皆さんと一緒に考えていこうと思います。

あたしなりのAnswer

さてさて。
ポニーテールが似合う、小柄で可愛い女装さん。素敵ねぇ。きっとベルさん自身、このお手紙の書きようからして(「とても似合います」ってところとかね)、パートナーの変身ぶりをまんざらでもなく思っていたんじゃないかしら。

私が店長を務める「7丁目のパウダールーム」にお越しになるメインの客層って、ベルさんのパートナーさんとおそらく同じように、働いた後仕事着を脱いでメイクをし、レディースの服をまとって「女装」をする方たち。でも実は、そんなお客様たちの性のあり方は、人それぞれでとっても多様なんです。

「女装」の性って、千差万別。

女装をしていると、どうしても「男の人が好き」で「女の人になりたい」んだと、周りの人たちから受け止められがち。これはおそらく「女の格好をしている=世間一般の女の人と同じになりたい」って理解されるからなんだろうけれど、きっとベルさんの「夫は彼氏ができたのか」「歳がいっても性別が変わることはあるのか」といった疑問も、そんな理解に紐づいたクエスチョンなのかなぁなんて、あたしとしては思ったりします。

もちろん男性が性愛の対象で、性自認が女性だっていう人も中にはいるの。でも蓋を開けてみると、本当に「女装」の性って千差万別。例えばあたしは、自分のことは男性だと思っていて、それでいて男性が好きな女装なの。だから言ってしまえば「ゲイの女装」ってことになるし、女性になりたいと思ったことはほぼ無かったりするのよね。

他にも、うちのスタッフの中には、女装をあくまでファッションとして楽しんでいる異性愛者の男性もいるし、お客様の中には奥様がいる方も。宴会でのお試し女装をきっかけに「自分は女性だって気づいた」なんて人もいれば、お仕事をリタイアしてから「スキンケアが高じて」女装するようになったお客様も来たことがあるわ。

だから、ベルさんの疑問に答えるなら「旦那さんには彼氏ができたのかもしれないし、そうじゃないかもしれない」、「歳がいって性自認が変化することはあるけれど、そういう理由であなたのパートナーが女装をしているとは限らない」ってのが、あたしなりのアンサーにはなると思うんだけれども……。その上で、ひとつだけ確実に言えるのは、相談文にも先に書いてくれていた通り、相手の性について「無理やり調べたりしない方がいい」ということです。

パートナーのことを大切にしたい気持ちがあるなら、どんな人と一緒にいたいのか、自分の性についてどう考えているのか、知りたくもなるはずでしょう。

でも、それを伝えるか伝えないかを決めるのは、あくまで当事者側。当事者側の権利。密かに調査して暴いたり、強制的に言わせたりすることは「アウティング」と言って、本人の尊厳や、ときに人生そのものを脅かすことにつながりかねません(かつて日本ではアウティングによって、いのちを落とす事件も起きたことがあります。詳しくは松岡宗嗣(2021)『あいつゲイだって〜アウティングはなぜ問題なのか〜』柏書房をぜひ)。

それに、ベルさんたちの事情に焦点を当てるならば、おそらくパートナーさんのセクシュアリティを勝手に調べて把握するようなことは、お二人の溝をますます広げることにつながるんじゃないかと思うんです。

今のベルさんにとって大事なコトは?

あたしが思うに。
今ベルさんがするべきは、どこにいるかわからない相手の状態を気にかけることではなく、相手が帰ってこれるよう、環境を整え、自分を整えること。セクシュアリティに関する知識を身につけたり、当事者と出会える場所に行って話を聞いてみたり。そうした性という話題ももちろん、パートナーとの歩みを振り返るのもいいでしょうし、これからの行く末を、ふたりの未来であれひとりの未来であれ、冷静に考えてみることも大事かもしれません。

要は、次に相手と面と向かって話ができるタイミングがきたとき(前半に書いたけれど、そういう機会を作るためにも、家出には即対処よ!)、聞きたいことを聞けるように、そして相手が話したいことがあったのならその話をきちんと受け止められるように、自分をチューニングしておくこと。それをベルさんにはぜひおすすめしたい。

誰かとの関係を進めるには、結局のところ、その人と対話するしかないんですよね。単純だけれど、とっても大切なこと。なのでベルさん、旦那さんと今度会う日まで、その用意を続けてみてください。

その日が来たら、向こうもいろんなことをカミングアウトしてくれるかもしれない。いい人がいるのか、女性として生きたいのかは、その時に初めてきちんとわかることだと思います。そして、あなたもそのときに言いたいことを、向こうに思い切りぶつけてみてね。

まずは「家出」というおおごとが落ち着くことを祈りつつ……。近い将来、ふたりがお互いのどちらにとっても有意義な語りができるよう、西創成から応援していますよん。

ま・と・め♡

というわけで、今回もなかなかのお悩みだったわね……。思わず前半は店で誰かに「あんたさあ!!!!」と物申すモードの口調というか文体になってしまったけれど笑、どうぞお許しあれ。(すんごい勢いで書き殴ってしまったわ笑)

そうそう、今回は女装についてたくさんお話しさせてもらったのですが、実は今度、函館の蔦屋さんで、自分の女装人生についてだったり、LGBTQについてだったり、お話しさせていただく機会をいただいたの!
レインボーはこだてプロジェクトさんが主催の 「虹をはいて歩こう」ってイベント なんだけれど、今から行くのが楽しみ!ここで書いたようなことも、内容に盛り込んでみようかしらね。

お近くの方はぜひお越しいただけると幸いです。ではではみなさん、Sitakkeね〜!

***
文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:nabe(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。)2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム『てる子のお悩み相談ルーム』を連載中。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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