先月末から、クマの目撃が相次いでいる札幌市南区石山で、18日午前、クマ1頭が駆除されました。
人や農作物への被害は確認されていない中での駆除。クマの専門家はどう見るのか、お話を聞きました。
連載「クマさん、ここまでよ」
札幌市などによりますと、18日午前10時50分ごろ、札幌市南区石山1条7丁目の豊平川の河川敷で、クマ1頭が駆除されました。
駆除されたクマは体長116センチ、体重47キログラムのメスだということです。
この付近では、先月29日以降、クマの目撃情報が15回報告されていて、札幌市が電気柵を設置するなどして対策していました。10月5日までは2頭で動いていたといいますが、その後は1頭での目撃が続いていたといいます。
18日も午前8時前、パトロール中の警察官と市の職員が、クマ1頭を目撃。その後、クマは3時間ほど同じ場所にとどまっていました。
札幌市では、「さっぽろヒグマ基本計画」にもとづいて、クマの様子や被害、出た場所によって、対応を決めています。
今回のクマは、「市街地周辺ゾーン」に出ていて、「人間を恐れず避けていない状態」=「段階1」と判断されました。
「市街地周辺ゾーン」×「段階1」の場合は、見回り・ゴミなどのクマを引き寄せるものの撤去・追い払いなどの対応をします。それでも出没が続き、人に危害が及ぶおそれがあるときは、捕獲も選択肢に入ります。
今回は、音による追い払いにも全く反応せず、札幌市は「市街地周辺に、日中に繰り返し人前に現れていた個体であり、市街地内部への侵入による被害などを防止するため」として、クマの駆除を決断しました。
駆除されたことについて、近くに住む人は
「すごく怖かったです。まだ出てこないとも限らないですけど、一応駆除されたということで良かったなとは思う」
「安心は安心したが、もともとはクマが住んでいたところに私たちが来たので、心苦しいなというか、申し訳ないなという気持ちもある」
と話していました。
クマの生態にくわしい、酪農学園大学の佐藤喜和(さとう・よしかず)教授は、「目撃が続いた地点は、住宅街からすぐ近くの緑地。人の生命や財産に対して影響を与えてはいないけど、繰り返し目撃されているし、人を見ても遠ざかる行動が見られず、追い払いも試みたけど、行動の改善が見られないということで、やむを得ず捕獲という判断だと思います」と話します。
また、「人が目撃しても、ただ撮影や観察をしているだけで、特に追い払いとかクマが怖がるような行動はなかなかできないですよね。そういう中で、クマはどんどん人の前に出ても怖い思いもしないし、人の近くにいっても危険なことがないとどんどん学習して、昼間も出たと思う」と指摘します。
札幌の市街地周辺にクマが出没し、駆除される…。人の行動が、クマの出没や、人慣れの要因にもなる中、私たち市民は、この事態をどう受け止めたらいいのでしょうか。
佐藤教授は、「やっぱりクマは、山の中にいて、クマらしく過ごしているのが理想的な姿であって、人の前で姿を現しながらのんびりするのは困る。そういう認識をこれからは共有していきながら、そういうクマをつくらないためにどうするか、それを考えないと、次は人の側に近づいてきて、最終的には駆除せざるをえなくなる。そういう風につながっていくんだと理解した上で、やっぱり人目につくところに出てこない状況を作っていかなきゃいけない」と話します。
銃による駆除は、時間帯や場所に規制があり、今回は偶然条件がそろったものの、これまでには「駆除する」と決めてからも数日から数か月、対処できず長期化するケースもありました。クマが出た後にできることは限られるため、事前に考えて、対策することが重要です。
今回、クマがこの地区に来たルートや、長く居ついた理由は、まだわかっていません。当初は2頭目撃されていたこともあり、警戒も続きます。
まだわかっていないことも多い中、「駆除されてよかった」では、終われない状況です。なぜこうなったか、どうしたらいいのか…引き続きお伝えしていくので、一緒に考えていきましょう。
連載「クマさん、ここまでよ」
※掲載の内容は取材時点(2022年10月18日)の情報に基づきます。
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