2022.10.12

出かける

「なんとか頑張ってきたね…」地元で30年以上愛される焼肉屋【三四郎花園店】(小樽・花園) 

「いらっしゃいませ〜」そう素敵な笑顔で出迎えてくれるのは、小樽市にある焼肉屋「三四郎花園店」のマスターとママだ。足繁く通う常連客がたくさん、観光客からも人気のあるアットホームな雰囲気で昔ながらの老舗焼肉店だ。古くから“夜の歓楽街”として知られる、小樽・花園エリアで焼肉屋を営んできた夫婦。振り返ると楽しいだけではなく、前途多難な人生だったそう。そんな夫婦が歩んできた道を描きます。

夫婦がみつめた、30年前と「今」。

遠い昔を思い出しながら「いろいろなことがあったね……。」と、マスターとママは語る。平成2年5月20日に現在営んでいる場所からほど近いところに「三四郎花園店」を開業。営業時間は17時から23時。大体18〜20時に賑わいを見せているが、開業当時は近くにある飲み屋街が賑わっていたこともあり、混雑時間は24〜27時と今とは全く時間帯が異なっていたそう。

「飲み屋をはしごして、ウチでお腹いっぱい食べて、また飲みへと繰り出すお客さんが多かった。行燈(あんどん)消しても入ってくるお客さんもいたよ(笑) 懐かしいね」観光客はもちろん、 夜職の人たちが仕事終わりに絶えず訪れていたのだと言う。

三四郎花園店が開業した平成2年はバブル後期だったこともあり、小樽の飲み屋街である花園エリアは人々で賑わいを見せていた。

「今でも、運河のあたりは観光客でそれなりに賑わいがあるけれど、花園エリアは昔と比べるとすっかり活気がなくなった。寂しくなったね…」と、昔を思い出すマスターとママの顔は、懐かしさと寂しさが入り混じった面持ちを浮かべた。

いつも、「てんてこまい」の日々だった。

「開業してからすぐに妊娠が発覚して。てんてこまいだったよ〜」結婚し焼肉店をやろうと決めたときは、子どものことは考えていなかったのだとか。開業からほどなくして妊娠が発覚。「妊娠が分かってもお店を休むわけにはいかなくて。私が休むとマスター1人では接客まで対応できないから」と、ママは店内を行ったり来たりと忙しく動き回っていたそう。だが、それも長くは続かない。そう、切迫流産だ。「本当に大変だったね。店に出ないと回らない、だけどお店に出られない。そのときは近くに住んでいたマスターのお姉さんに手伝いに来てもらって助けてもらったよ」

さらに困難は続く。ママのお父さんが倒れて入院してしまったのだ。開業・妊娠・病院へ通うこと全てが同じタイミングで、出産してからは育児との同時進行で目まぐるしく過ぎる日々だったそう。「10年経ったら焼肉屋は安泰だからと頑張っていたのに、2000年代はじめに起きた狂牛病問題やら子どもの進学費やら、なんも安泰じゃない。しかも、やっと子どもが手から離れたと思ったら次はコロナだよ!(笑)……本当、でもなんとか頑張ってきたね」と、マスターとママは優しい表情でお互いを見つめ合いながら話した。

いま、直面している課題。マスターの想いは

「最近は何もかもが高騰して。メニューの値上げをせざるをえないんだ…」とマスターが話す。コロナ禍や戦争、自然災害、円安…さまざまな原因が重なり、原材料費の高騰。その影響を受けているのだ。大手飲食店すら値上げしている昨今、個人が経営しているお店での値上げというのは、仕方のないことだろう。だがマスターとママの笑顔がふと消え「お客さんのことを考えると…」と心苦しそうな表情を浮かべる。だが「もともとない利益をさらに少なくすることで、値上げの幅も少なくできるからね」と、笑顔を取り戻したママが話す。続けて「ここまで続けてくることができたのは、人々に支えてもらったからこそ。自分達が今できることを最大限行う」とマスターが話してくれた。

「おいしい肉をお腹いっぱい食べてもらいたい」創業以来、変わらないこだわりと、夫婦の笑顔。

三四郎花園店では新鮮な肉、そして1人前の肉の量が多いのが魅力だ。「うちのおすすめは大きなカルビだよ」夫婦揃っておすすめしてくれた通り、牛カルビは1枚が顔の大きさほどあるくらい大きく、適度にさしも入っており食べ応え抜群。ライス(コシヒカリ)と相性は間違いない。

ホルモン・なんこつ・豚ほっぺ・豚タン

豚ホルモン(画像:左)も新鮮だからこそ、臭みがなく美味しく食べられる。ツルッとした食感でのどごしが良い。なんこつ(画像:手前)も厚めにスライスされており、歯応えがよくビールと合う。

創業以来変わらない秘伝のタレにつけて食べるというのも、三四郎花園店ならでは。タレはしょっぱさと甘さが絶妙なバランスで、ニンニクが効いている。お肉とよく絡み、このタレだからこそ肉を最大限に美味しく食べられるのだろう。

肉を食べたあとは、昆布で出汁をとったスープを先ほどまで食べていた肉のタレに入れて、〆のスープを味わうのが小樽の焼肉スタイルだ。味わう肉の種類によって、スープの味わいも変わるのがおもしろい。ぜひ訪れた際は、お会計前に網の上にタレの器を乗せて「スープをお願いします!」と言い、〆のスープを味わってほしい。

そして何より、三四郎花園店の夫婦が仲良く、素敵な笑顔なのが魅力だろう。その笑顔を求めにくる人も多いのだ。かくいう筆者もよく訪れているが、ママとマスターの笑顔に癒されながら美味しい肉を頬張る。贅沢な時間を過ごし、次の日から「よし!頑張ろう!」という気持ちになる、そんなお店だ。

前途多難な人生を歩んできた三四郎花園店のマスターとママ。そんな二人だからこそ、いつでもお客様のよりどころとして、美味しい焼肉と笑顔を提供し続けるのだろう。

焼肉・ホルモン三四郎 花園店
小樽市花園3丁目8-9
定休日:火曜日

※掲載内容は2022年10月取材時に基づきます。

***

文・撮影:タカマツミキ
ライター活動をしている、小樽をこよなく愛する生粋の小樽人。目の前は海、振り返ると山。そんな自然豊かな小樽が大好き。小樽には海鮮はもちろん、肉、野菜・お酒など美味しいものがたくさん。趣味は、猫と一緒にキャンプを楽しむ・食べ歩き。とくにビールとワインが好き。
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Edit: nabe(Sitakke編集部)

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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