2022.09.15

育む

通園バスに子どもが置き去りに…悲劇を招かないために必要なことは?札幌の幼稚園の取り組み

9月5日、静岡県牧之原(まきのはら)市で、認定こども園の通園バスに、3歳の園児が置き去りにされ、亡くなりました。

死因は、重度の熱中症。およそ5時間、灼熱の車内に取り残されていました。

園児が発見されたときの体温は40℃。上半身の服は脱ぎ捨てられ、空になった水筒も見つかりました。

園のホームページより

幼稚園は、2日後の記者会見で「子どもたちが降りたあと、バスの中の確認をしていなかった。ダブルチェックすることが決まりになっていなかった」などと話しました。

去年7月には、福岡県中間(なかま)市の保育園で、同様の事件があったばかり。

道内の保護者もショックを受けています。取材すると、「大人がもうちょっと確認していれば絶対起こらない事故なんで」「安心して預けているので、どうしてあんなことになったのかというのが、ちょっと疑問ではありますけれども」と話す人がいました。

悲劇を招かないために、必要なことは?

連載「じぶんごとニュース

HBC「今日ドキッ!」のコメンテーター・薮淳一さんは、札幌の「大通幼稚園」の園長です。スタジオに迎えて、静岡の事件の受け止めを聞きました。

藪さんは「亡くなったお子さんの立場になると、どんなに心細かっただろうな、どんなに苦しかっただろうなと、本当にやるせない気持ちになります。お子さんの命を預かる幼稚園の園長という立場としても、絶対にあってはいけないことだと思う」と話します。

静岡の認定こども園の事件では、園の説明などから、4つのミスが重なっていたことがわかっています。

① バスに乗務していた園長と派遣職員が、乗車名簿とバスを降りる園児を照合していなかったこと。
② 車内に園児が車内に残っていないか、複数人で確認していなかったこと。
③ 園児の登園状況をアプリで管理して情報共有していたものの、最新の登園状況は確認していなかったこと。
④ クラスに登園予定の女の子がいなかったにもかかわらず、担任が職員室や保護者に確認しなかったこと。

藪さんは、「4つのミスのひとつでもちゃんとやっていれば、命は救えたんじゃないか。園では通常の運転手がその日お休みで、園長が運転してたという話ですけれども、イレギュラーなときであればあるほど、しっかり確認するべきだと思う」と話しました。

通園バスのチェック体制はどうなっているのか。

藪さんが園長を務める「大通幼稚園」の場合は、2台の通園バスで、札幌市内6つのコースをめぐります。園児の8割=およそ190人がバスで通っています。

幼稚園にバスが到着すると、先生は「乗車名簿」を確認します。

藪さんによると、園児の座席は指定席で、乗車名簿にはそれぞれ子どもの名前があります。欠席の連絡があったらバツをして、どの子が今日はバスに乗らないのかをチェックし、情報共有しているそう。

さらに、バスから子どもたちが降りてくるときも、子どもの体調なども合わせてチェックをしてから、園に受け入れるといいます。「大切なのは、アナログでもアプリでも、情報をきちんと園の職員で共有するということだと思います」と話していました。

そのころバスでは、運転手と乗務した先生がバス車内を確認。2人でダブルチェックをしています。

藪さんは、「子どもが残っていないかというのはもちろん当たり前のことですが、それ以外にも忘れ物がないかなど車内を確認します。異常があったかなかったか、きちんと報告してもらいます」と話します。

「朝の会」では、先生の立ち合いのもと、日直の子どもが司会をしながら、ひとりひとりが手を挙げて、出席をとります。

「意味としては、子どもたち同士でも誰が来ていて、誰が来ていないのかということに関心を持ってもらいたいという意図があります。もちろん先生も、誰が来ていて誰が来ていないかしっかりと把握しながら、子どもを見守っています」

静岡の事件では、先生は女の子が「朝の会」にいないのをわかっていたはず。来ているはずの子がその場にいない場合、藪さんの園では、「担任の先生が保護者から連絡があるかを職員室に確認して、連絡がなければ保護者へ連絡をする」といいます。

悲劇を繰り返さないためにできることは何か。

幼児教育学が専門の、藤女子大学・吾田富士子教授は「実践経験の少ない、最近乗っていない園長が運転するのであれば、責任ある保育者が乗務すべきだったというふうに思うんですよね。日常的に保育に関わっている人とそうでない人では、意識はやっぱり違うと思うんです」と話します。

そして、「人手不足と言われて、いろんな機器を入れているところがあると思うんですけど、必ず第1は人間の目。機器やアプリは人間が完璧でないから、それを補うためのものなんですよ。マニュアルを作っても、形骸化していれば意味はないと思うんですよね。1人1人の意識の問題だと思うので、二重三重に絶対確認しなくてはいけないというシステムを導入していく必要があるかもしれない」と指摘しました。

車内への子どもの置き去りは、幼稚園だけでなく、家庭でも起こりえます。藪さんは、「まずは大人が、子どもを一人で残さないと徹底する。周りの人たちも車の中に子どもが残されていないかと関心を持つことが必要かもしれない」と話していました。

連載「じぶんごとニュース

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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