2022.09.08
ゆるむ札幌の円山動物園にゾウがやってきて、もうすぐ4年。
暮らしているのは、31歳の母親のシュティンと、9歳になった娘のニャイン、18歳のメス・パールに、唯一のオスで14歳、パールとカップルのシーシュの4頭です。
HBCが追い続けた4頭と飼育員の日々から見えてきたのは「次のステージ」への「変化」です。
じゃれあって声を上げるシュティンとニャインのメスの親子。
オスのシーシュは5月についに4頭の中で一番大きくなり、カップルのパールと仲良く過ごしています。
毎日を同じ場所で暮らすゾウたちを支えるのは、飼育員たちが日々行う「ソフト面」の工夫です。
キーワードは「飽きさせない」。
たとえば、エサを上からつるす仕掛けは、わざと短くして、簡単には届かないようにしています。
だけど、ゾウたち、そこは頭を使います。
足元に注目。
大きな丸太を運んできて、踏み台にしているのです。
ゾウの飼育担当・小林真也さんは、「知恵比べなんですよ、毎日毎日」と笑います。
ゾウは本来、起きている時間のほとんどをえさを探して過ごす動物。
細かくしたり、場所を分けたり…。
できるだけ長い時間をかけてえさを食べさせることで「飽きさせない」、つまりゾウ本来の姿に近い生活をできることにつながります。
しかし、工夫すればするほど飼育員の負担は増えるのも事実。
そこでこんな助っ人が…
重機の導入です。
飼育員たちは、このゾウ舎での作業のためにそれぞれ重機の免許を取りました。
さらに深さ1.5mの砂を掘り起こしてはリンゴを隠します。
そしてみるみるうちに…大きな山ができました。
さらに木や枝をさすと…
この中に隠れたリンゴを見つけるのは、時間がかかりそうですね。
ゾウたちはこの砂山が大好き。重機で掘り起こすことで、砂全体もふかふかに柔らかくなり、しっかりゾウたちの運動になります。
そして夜になると…
ゾウたちお気に入りのベッドになります!
そして、木の枝も時間をかけて食べてもらえる大事なえさ。
折った木からささくれを作って、とっても上手に樹皮を食べるこの行動は、野生のアジアゾウの森での姿そのものです。
消防ホースにタイヤ、ブイも。おもちゃはずいぶん増えました。
特にシーシュはダイナミックな動きをたくさん見せてくれます。
円山動物園の参与・小菅正夫さんは、「気持ちよさそうだもんね、やっぱりね。自分でやりたいことが全部できているということが、一番イライラしない」と話します。
ゾウは絶滅の危機にある動物でもあります。円山動物園が4頭を迎えた当初から目指してきたのが、「繁殖」です。
2019年11月、HBCのカメラが初めてシーシュとパールの交尾が成功する瞬間を撮影していました。
あれから2年半…
ゾウの飼育担当・小林真也さんによると、「本当にいつ出産してもおかしくない状況なので、妊娠ではなく出産、子育て、そして次のペアリング、その辺まで見据えた動きを今もうスタートしているところ」だといいます。
そのために取り組んでいるのが、パールのエコー検査の練習です。妊娠しているかもしれないとなったときに、すぐに検査できるよう、体制を整えているといいます。
皮膚の厚さが6、7センチあるゾウのどの場所にあてたら、どう映るのか。パールにエコーになれてもらう以上に、人間側もその操作方法になれる必要があるんです。
「練習」ではあるものの、ひとつひとつが「緊張」と「期待」に包まれています。
ただ、ゾウの妊娠期間は実に22か月。
本来エコーに映るのは相当妊娠後期であることが一般的です。
妊娠がわかったわけではありませんが、その未来が確実に近づいている実感が飼育員たちにはあります。
そしてそれは、北海道でゾウ飼育に携わってきた人たちにとっての悲願でもあります。
参与の小菅正夫さんは、旭山動物園でゾウの飼育に関わってきました。「僕が生きている段階でゾウの出産に関わることはないと思ったんですよ、本当に。もし出産したら俺どうしたらいいんだろって、俺なんかなんもすることないのに、そんなこと考えながらその日を楽しみにしています」と期待を募らせます。
見据えるのはさらに先の未来。
「ゾウがゾウらしく暮らせる」より自然の姿が見られるように変化は続いていきます。
円山動物園のゾウ舎では、お客さんの楽しい時間も作る、ユニークな試みを行っています。お客さんからの「ゾウも鼻毛はありますか?」という素朴なギモンを受け、飼育員が調べてみると…?!
くわしくは、こちらの記事でお伝えしています。
【「ゾウも鼻毛はありますか?」動物園の飼育員が鼻の中をのぞくと?楽しく学ぶ、新たな試み】
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2022年8月10日)の情報に基づきます。