大輪のひまわりに笑顔を見せる女性たち。
久しぶりのバスツアーを楽しむ観光客…ではないんです。
これは、新しい葬儀の「体験ツアー」。その名も「旅葬(たびそう)」。
故人と家族が一つのバスに乗って、同じ空間で故人の故郷や、思い出の地、生前約束した場所へ一緒に向かう葬式のことです。
企画したのは、札幌市や恵庭市などで家族葬の葬儀場を展開する「めもるホールディングス」。
1年前、新たな葬儀のカタチとして「旅葬」を始めました。
いわゆる「霊きゅうバス」を改造した車両が、動く葬儀場です。
亡くなった人の棺は、座席と同じ、この場所に置かれます。
新しい「旅葬」のイメージを膨らませてもらおうと、月に2回開かれているのが、旅葬体験ツアーです。
今回のツアーの想定は、先立った夫との初デートの場所や旅行先、夫の好きだった酒蔵を家族や友人たちとめぐるというものです。
実際の旅葬のバスは、亡くなった人と一緒に景色を楽しめるようにと窓も大きくゆったりとしています。
そして、車いすでバスに乗り込むこともできます。旅葬は参列者にもやさしい葬儀です。
めもるホールディングス「旅葬」プロジェクトリーダーの二唐渚さんは、「高齢化が進む中で、今後もっと交通弱者が増える。顔を見てお別れしたくてもいけない人もたくさん出てくる」と話します。
葬儀場に足を運んでもらうのではなく、旅葬のバスが参列者の自宅などを回ることもできます。
さらに、コロナ禍の今の社会にもマッチしているといいます。「札幌で1日何千人と感染している中で、地方の方は札幌に来るのをいやがるというか、心配になるので、葬式を遠慮する。集まってもらうのが葬式だったが、来られない人に故人が会いに行く形でもいいのでは」
これまで実際に行われた旅葬では、ある人は教師として勤めた学校をめぐり、ある人は生前に行こうと約束していたスポットへ。
最長465キロの「最後の旅」を楽しんだといいます。
体験ツアーの参加者も、大切な別れの方法に思いをめぐらせていました。
ツアー参加者は、「92歳の父がいて、亡くなったあとでも、父の好きだった場所に連れてきてあげられたらいいと感じた」「しんみりするのではなく、亡くなった人とみんなで笑顔で思い出の地を巡り、みんなで楽しく思い出を語り合いながら、送ってもらうというのは、亡くなった人も喜ぶのではないか」と話していました。
文:HBC報道部
※掲載の内容は番組放送時(2022年8月)の情報に基づきます。
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