2022.08.24

みがく

恋愛は「からっきし」だし、貯金を切り崩す日々。それでも、とってもしあわせな‟札幌女子”の生き方

北海道から新しいものをつくり続けるクリエイターたちの視点や素顔を覗く「HOKKAIDO CREATOR INTERVIEW」。今回はWEBマガジン『Sitakke』で連載をスタートする、札幌在住のSNS漫画家のハルタさんにお話を聞きました。

札幌市出身のハルタさん。大好きな札幌を舞台に、恋愛、食べ物、日々の出来事、モヤモヤすることを漫画に描き、ご自身の Instagramで発信をしています。

ハルタさんのInstagram

「自分に向いてる仕事ってなんだろう?」探し続けた20代。

― ハルタさん、よろしくお願いします!札幌を舞台にしたインスタ漫画家として人気のハルタさんですが、「Sitakke」でも連載がスタートします。漫画は昔から描いていたのですか?

実は、本格的に描き始めたのは去年の12月。半年ちょっと前くらいですね。小学生くらいから漫画家になるのが夢だったんですが、ほかにもやりたいことが見つかったりして、いろいろやっているうちに30代。やっと今、少しは小学生時代の夢が叶えられているのかなっていう感じですね。

漫画『札幌女子 マッチングアプリで恋活してみたら』(ハルタさん作)

高校時代、学校祭でダンスをやったんですが、それがすごく楽しくて。ずっとこういうことをやって生きていきたい!と思い、映像制作が学べる専門学校に入りました。その学校がちょっと変わっていて、1年目は学校で勉強するんですが、2年目からはインターンを兼ねて就職しました。

私は根っからのテレビっ子。テレビ局の仕事にも憧れがあったので、テレビ局に報道ADとして入社しました。
でもやってみたら、ものすごく自分に向いていなかったんです。すぐに辞めたくなりました。まぁ、2年は働きましたけれど…。

― 憧れのテレビ局のお仕事。どんなところが向いていなかったんですか?

やっぱりテレビの世界、特に報道は、時間との戦いなんです。オンエア中に時間を計算したり、速報を流したり。スピードに追われているうちに、なんだか、すり減っちゃって。私には向いてない、辞めたいと思ったけど、いい上司や先輩に囲まれていたので、切り出すのも申し訳なくて。

ある日、地震速報を出さなきゃいけなかったんですけど、ちょっと大きな失敗をしそうになったんです。間一髪で先輩に助けてもらい、放送事故にはなりませんでしたけど、その時、あぁもう潮時だなって思って辞めました。

今の自分なら、向き不向きが分かるんですけど、その時はまったく分からなかった。憧れだけで飛び込んじゃった感じです。

「恥ずかしいので顔出しはナシの方向で…」と、ハルタさん。はにかんだ笑顔が印象的だった。

― テレビ局を辞めて、絵を描く道に進んだんですか?

いいえ、この頃はまだです。やっぱり私は何かを制作することが好きなんだと思って、今度はCM制作会社にプロダクションマネージャーとして入社したんです。要はCM制作に関して、いろんな根回しをしないとならない仕事なんですけど、やっぱり撮影現場では臨機応変に動かなくちゃいけなくて、現場が苦痛でした。

撮影現場にはカメラマン、モデル、スタイリスト、ヘアメイク、デザイナーとか、たくさんのプロフェッショナルな人たちがいるんですよ。そういう人たちを見ていて、「あれ?私って何?」と思ったんです。私も、なにか肩書きのある職業に就きたい、何かの道を極めて必要とされる人になりたいって。

それで、社長に直談判して、自分で営業したクライアントのCMを1本作らせてもらったんです。同世代のクリエイターと一緒に企画して、CMソングの作詞作曲から歌入れまで自分でやりました。
その達成感たるや。作るってやっぱり楽しい!と実感しましたね。

当時のようす(ハルタさん書下ろし)

悩みの原因は「求められること」と「やりたいこと」のギャップ。

― すごい行動力じゃないですか!そのCM制作がターニングポイントになって、ついに漫画家として動き始めたとか?

いえいえ、それがまだまだなんです(笑)。結局、自分の仕事は自分で増やそうと思って、営業もやりながらイラストを描いたりもしていたんです。ところが、ある日、社長から「営業を専門にやらないか」ってオファーされて。これはまた違う方向に行っちゃうなと怖くなって退職しました。その会社には5年くらいいましたね。

ハルタさんのテンションは低め安定。なのにクスっと笑ってしまうような語りが、なんとも魅力的!

その時、退職してイラストレーターになろうとしたんですが、イラストだけで食べていけるだろうかって、自信がなかったのであきらめました。

今度は、別のCM制作会社に事務職員として入社したんです。黙々と机に向かってこなすような仕事だったので、これは向いてるなって思いましたね。仕事が順調すぎて、もうイラストや漫画を描きたいとも思わなくなっていました。

― それはある意味、幸せなことですよね。ずっとこのままでいいという心境だったんですか?
でもある時、仕事がしんどくなったんです。キャリアを積むとどんどん責任も重くなってくるし、自分では頑張っているつもりでも、まわりからは「もっと頑張れ」と言われるし。求められていることと、私がやりたいことにはものすごいギャップがあって、ストレスがたまりました。
土日に休んでいても、仕事のことが頭から離れなくなって、月曜の朝に出社するともうどっぷりと疲れてるんです。辞めたいなと思いながらも、生活を考えると辞められず。

私のやりたいことって何だろう?って考えたら、とにかくこの仕事を辞めること。そう思って、8月に退職しました。しばらくは何もせずにただ休むことにしたんです。自炊して、好きなアニメを見て、たまに旅行とかして。そんなことをしているうちに、だんだん漫画が描きたい!と自然に思えるようになったんです。

「貯金を切り崩しても、好きなことができる今が幸せ!」30代のいま。

― 思い切った決断ですね。ようやく漫画を描くモチベーションが上がった感じですか?

せっかく仕事も辞めたのだから、好きなことだけやるぞ!と決めて、漫画を描き始めました。猫が登場する漫画をYouTubeにアップしたんです。「毎週更新!」とか豪語して。なんだか、YouTubeが自分の部屋みたいな気がして、すごくうれしかったですね。

当時、YouTubeにアップしていた動画。

― ついに漫画家ハルタの始動ですね。そこから人気に火が付いた?

それが、閲覧数のカウンターが10くらいから一向に上がらないんです。これはカウンターが壊れているんじゃないかと、本気でYouTubeに問い合わせようと思ったくらいです…。それですっかりやる気が失せて。結局、1話で終了しました!!

― でも、その失敗があってこその、インスタグラム漫画をスタート。どうやって気持ちを切り替えたんでか?

自分がやりたいことだけやっててもダメなんだと悟りました。需要があることをやろうと。それからは、どんな漫画がインスタで読まれているのかとか、どんな人が見ているのかとか、いろいろリサーチしました。私は札幌に住んでいるんだから、札幌を舞台にした漫画にしようとか、ハッシュタグの付け方も勉強しましたね。

漫画『札幌女子 マッチングアプリで恋活してみたら』のキャラクター案。身長体重、パーソナルカラーまで、細かな設定がされている。

― そこで生まれたのが、『札幌女子 マッチングアプリで婚活してみたら』なんですね!

コロナ禍で出会いの場も減っているし、マッチングアプリってすごく一般的になっていますよね。でも、実際はまだまだ人に言いづらかったりするので、そういうところに共感してもらえたらなって思って漫画にしてみました。
同じようなテーマの漫画はよくあるけど、札幌に特化して実体験も交えながら描いてみようって。それで少しずつフォロワーが増えて、今に至るという感じです。

― ハルタさんの漫画は、実体験から生まれるリアルな描写やつぶやきが共感を呼びますよね。ご自身の恋愛観はどうですか?

それが、恋愛はからっきし。結婚についても、まだ焦ってはいません。今、好きなことを好きなようにやれているのがとっても幸せなんです!すぐに芽が出なくてもいいとか、お金に困ったらバイトすればいいとか、何とかなる気持ちでやっていたら、本当に何とかなるもんですね(笑)

当時のようす(ハルタさん書下ろし)

― 恋も夢も、焦ると遠のくってことですかね。漫画家としての仕事も順調ですし、これからの目標は何ですか?

いろんなネタ案があるので、それを次々に漫画で表現していくことです。テレビ局時代の失敗談とか、OL時代の辛かったことなんかも今となっては漫画の題材にいいかなって。回り道はしてきましたけど、つらい時期があったから。今のありがたみや幸せが実感できるし、切り崩せる貯金もあるってことで(笑)OL時代に頑張ったことも無駄ではなかったって心から思っています。

****

~取材を終えて~
小柄でキュートな印象のハルタさん。テンションは低め安定。なのにクスっと笑いを起こす語りの技量は、さすが漫画家さんです。いろいろな仕事にチャレンジをし、一貫して何事にも誠実に全力で取り組んできたハルタさんだからこそ、今、小学生時代の夢を叶えることができたんだと思いました。

そんなハルタさんの漫画『 札幌女子 マッチングアプリで婚活してみたら』を、Sitakkeでも毎週水曜日に配信することが決定しました!ぜひチェックしてみてくださいね。

文: 菅谷環
編集:nabe(Sitakke編集部)
取材日:2022年7月

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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