2022.08.19

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カップルを見るたび、泣きそうになる。私は好きな人にあげられるものが「なにもない」んです【悩み】

は〜いみなさん、ごきげんよう! Sitakke連載【お悩み相談コラム】担当・満島てる子です。

先日、Sitakkeとともに1周年を迎えた、こちらのお悩み相談ルーム。
最近はお悩み投稿だけでなく、コラムへの感想や「こんな記事を読みたい!」というご意見なども、投稿フォームの方から多くいただけるようになりました!

「いやぁ、やっぱりこのコーナーって、読者のみんなありきで成り立っているのよね〜。感謝だわぁ……」と、これまでの歩みを振り返る今日この頃です(みんな!これからもどんどん投稿してくれよな!)。

今回は、2年目突入の初回。
ということで、いただいた書き込みを見ていたら、「わ、これ出だしとしてぴったりだわ。絶対回答したい」って内容のが来てたのよ。ご紹介させていただきますね!

今回寄せられたお悩み「好きな人にあげられるものがなにもない」

前回といい、今回といい「絶対この人、ペンネームからして『輪るピングドラム』好きじゃん!」と、幾原邦彦監督のアニメファンとしては(人類は皆まず『少女革命ウテナ』を観るべし)、そんな細部に興奮しちゃったりするところもありながらですが……笑
まずは、投稿ありがとうございます!

「人を好きになるのが怖いんです」というお悩みを取り上げさせてもらったのが、今年の5月。そのお礼とその後の報告からスタートしてくださっているこちらの書き込み。
なんだか続編感がハンパないというか、 「お悩み相談 〜2nd season〜」がはじまったことを自覚させられるお手紙でした

そしてなんとなんと、あなた、恋に落ちたのね?!
だとすると、現在投稿者さんは、文面から伝わってくる以上のすさまじい情緒の波に揉まれているのでは……?と想像するわけですが(まぁ、書いてくれている内容がすでになかなかハードなわけだけれど)、だとしても、前回の記事がきっかけとなって「呪いが溶け始めた」という部分には、あたしはなんだか、このコラムの存在意義を感じたというか、一種の感慨を覚えました。

みなさんのお手紙から、「自分って〇〇だ」「常識からして✕✕しなきゃ」という、世の中にあふれるステレオタイプ的な呪文というか、あたしたちを縛り付ける鎖のような存在の多さを目の当たりにし、自分の文章を通してできる限りそうしたしがらみをほどいていければと、この1年の連載で思うようになってきた自分。
だからこそ「ピングドラムを捜すのだ」さんの投稿を目にしたとき、その願いというか、祈りにも近い何かが画面の向こうに届いたような気がして、とっても嬉しくなったのです。

本当に不思議なもので、この世にあふれる様々な「呪い」というのは、その呪いのただ中、箱の内側に居続ける限り、その外に出ようともがいてもどうしようもないみたい(自暴自棄になって「こんな世界壊してやる!」と、テロリスト化したとしてもそれは変わらないのよね)。

あたしたちにできるのは、その「呪い」と正面から向き合ったうえで、それを自分たちなりの言葉を尽くして書き換え、「解呪」していくことだと思うのですが、このコラムでは、実際の執筆という行為から、いろんな投稿者さんたちと一緒にその「書き換え」を行っているんだと思っています。
「ピングドラムを捜すのだ」さんは、きっとその「書き換え」が前回とてもうまくいったのね!新しいステップを踏み出したこと、あたしとしては祝福したい気持ちでいっぱいです。

ただ、この世界にあふれる呪いって、割と一筋縄じゃいかないもの。ひとつが消えても、また次が芋づる式に出現しがち。
今回のお手紙を読んだときには「あら、なんかぞろぞろ引っ張り出されてきちゃったのね……」と、そんな現実の厳しさに、相談を受ける身としても思いを馳せざるをえませんでした(ちなみに、呪いに加担した人、今回で言えば相談者さんの高校の担任に対しては、前回の想い人だった方と同様「最低!」と怒っちゃいたい気持ちです)。

でも、もし新しい呪いが出てきたとしても、それが出てくるたびに書き換えればいいの。だってそうできるちから……言葉というちからが、あたしたちにはあるんですから。
だから「ピングドラムを捜すのだ」さん!ここからは前回に続き、呪いを溶かすのに改めてあたしとチャレンジしてみましょうか。
同じような悩みを抱える他の読者さんも、よければ一緒に「解呪」に参加してもらえればと思います。

あたしなりのAnswer

……さて、なんだか少し大げさなことを書いてしまったような気もしますが。笑
まずはいただいたお悩みについて、真剣に向き合ってみるわね!

「好きな人に何もあげられない、自分では何もしてあげられない」という感覚。
30数年という中途半端な長さの人生ではありますが、あたし自身にもやっぱり身に覚えがあります。しかもこの感覚って、相手への気持ちが真剣であればあるほど強まるもの。

だから「きっと相談者さんは本気でその人に恋しているのね〜」なんて、しみじみ思うところでもあるのですが、本題は、そのモヤモヤ感とどう対峙し、それをいなせばいいのか。
これにあたっては、世の人が「恋」という営みをそもそもどう考えているのかという、根本を見つめ直すところから出発しなければならないような気がします。

相手にどんなスタンスで愛を届けるべきか、もしくは、相手から自分へのいたわりについて、それを求めるべきか否か。この点について一般の恋愛論では、あたしの個人的な感覚ではありますが、以下の2種類の姿勢が紹介されがちかと思います。

昔から対比的に扱われる傾向にある、これらの立場。
どうしてか、たいていこの2つが出てくる恋愛アドバイスとかだと、最終的に「相手に求めない無償の愛を!」と、雑にアガペー優勢で決着!ってのをよく見かけるんだけれど……。
それはともあれ、なんだかこうやって改めて並べてみると、割とどちらにも共通するテイストの強さがあるわよね。

なんて言うの?
なんだか「自分」とか「相手」とか愛し愛される関係の者たちが、リターンの有無はともあれ、もうひとりになにかできる・やってあげられるのが前提で、人としてたいそうご立派じゃないのよ、というか……。

それこそ、相談者さんが現在不安に感じている部分にも直結するんじゃないのかなと思うんだけれど、人間としてのある程度の自信、極端に言ったら「あたしは好意をアクションで示せる!」的な思い込みでもなければ、どちらのタイプの恋愛もできないんじゃないかって思わされるような下味がついている気がするの。

こういう恋愛論が主流だとすれば、その存在は一種の「呪いの泉」
多種多様な人がいて、いろんな悲しみや苦しみ、コンプレックスを持ちながら生きているこの現実。なのに、こと誰かを愛したとなった瞬間に、自分のプライドをしっかり保ちながら恋愛ができる・相手に自分の何かを提供できる、均質化された「理想像」とでも言うべき人間になることを求められるのなら、それはしんどさにつながり得るのです。

もしかしたら投稿者さんの「好きな人に何もあげられない……」という気持ちも、そんな「理想的な恋愛論」の影響を受けている部分があるかもしれない。
誰かを好きになることと、誰かに何かをあげること。このふたつは必ずしも結びつくものじゃないのに、 「相手のことが好きなら、その人に贈ることのできる何かがなきゃいけないんだ」と、社会からの圧力によって、そう思わされているのかもしれない

だから「ピングドラムを捜すのだ」さんには、まず「誰かを好きになる」ということに関する自分のなかでのイメージを、もっと肩肘張らずに済むような、自分にとってここちよいものに変えていってみてほしいんです(あたしにも実際、そういう思考の切り替えをすることになったタイミングが昔ありました。とはいえ、男に手ひどく振られて、雪山に頭突っ込んで泣いた直後だったけどねっ!笑)。

好きな人とのつながりを「花壇の植物」のイメージとして捉えてみる。

すごく比喩的な表現になってしまうかもしれませんが、 「好き」という感情および相手との関係性を、花壇に生えてきた植物のようなものとしてとらえてみるのは、個人的にとてもおすすめです。

植物を育てるとき、実はそんなに難しいものは必要ありません。基本的には、ある程度の面積の土があり、太陽が照っていて、水をあげることができればそれでいい。

「好き」という気持ちも、好きな人とのつながりも、これに実は似ています。
自分という大地があって、相手の笑顔が太陽のようにあたたかく感じられるときがあり、そこに芽生えたときめき・あの人とのつながりに「今日はこんなに話せた」「あのときとっても楽しかった」と、新鮮なうるおいを与えてあげる。

そんなシンプルな積み重ねが、自分の想いや相手との関係性が成長するきっかけになったりするのです。

もちろんその成長は、思い通りにはいかないものでしょう。予想外の方向でがんじがらめになることもあるかもしれないし、大事に育てた想いが風に倒れてしまったり、枯れてしまう場合も考えられます。でもそれと同じぐらい、自然に花や実をつけることだってきっとある。次につながるかわいい種を残してくれたりもする。
何より大事なのは、そうした成長や変化を楽しみ、いつくしむことができるかどうかなのです。そして、その経験のなかできっと、「誰かになにかをあげられるか」が基準となっているような上の2種類の恋愛論とは異なる、「育っていく愛」とでも呼べるようなものと、投稿者さんもきっと出会えるはず。

相手になにかをあげられるかどうかは、花や実ができてから考えればいい。
自分に自信をつけるのだって後から。ときめきがもっと育ってからでもいい。

今は久しぶりに芽吹いた気持ちをぜひ大事にして、その存在をシンプルに愛おしんでみてください。そこからきっと、呪いというフィルターを通さずに世界を見る方法がわかってくるはずだから。

「好きな人がこの世界にいる」こと。それは「好きな人に好きになってもらえる」ことと同じぐらい、もしかしたらそれ以上の奇跡かも。
「ピングドラムを捜すのだ」さんの気持ちが、あなたらしさを失わずに近い将来堂々と咲き誇ってくれるよう、あたしも画面の向こうから応援していますね!

ま・と・め♡

ということで、これまでの続編っぽさもあるようなかたちで、2年目の初回をお届けいたしました。なんだかポエム感満載になっちゃった?ような気もするけれど、あたしゃ割と本気で書いてるからね!笑

……今回は「恋愛」がテーマでしたが、仕事や学校、友人や家族との関係など、これまでもさまざまなテーマからのお悩みに、みなさんと歩みをそろえながら取り組んできました。
これからもこちらの連載では、読者の方々と一緒に様々な話題について考えていきたいと思うので、ぜひ応募フォームからの投稿、どうぞよろしくお願いします!

そうそう!そういえば!
こちらのお悩み相談ルーム、なんと現在Sitakkeの宣伝CMのなかでピックアップしてもらっちゃってます。ありがたや〜!
YouTubeからいつでもフル動画見れるので、こちらもチャンネル登録とグッドボタン、どうぞよろしくねん。

これからもこのコラムを通じて、いろんな世界と触れ合えたらいいなぁ。
ではではみなさん、Sitakkeね〜!

***
文:満島てる子
イラスト:VES
編集:nabe(Sitakke編集部)
***

満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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