2022.07.17

食べる

【函館の愛される店】今は自分のペースで、好きに。『銅鍋』

ときは1980年。場所は本町のど真ん中、当時あった酒まんじゅう屋の隣で上下5坪・計10坪の2階建ての店が『銅鍋』のスタート地点だった。その頃珍しかった『茹で上げ・自家製麺スパゲティの店』はたちまち流行り、すぐに昼夜忙しい人気店となる。少しして、すぐそばで経営していた『カフェ・ド・ベール』の場所へ移り、トータルで30年、本町を拠点とする。

店の看板はスパゲティだから、イタリアン。そう解釈されがちだが、マスター・佐々木秀夫さんの料理はフレンチが起点。大阪の辻学園日本調理師学校でフレンチを学び、東京や京都で修業、フランスへの留学経験もある。自家製麺の技術はそうした修業時代に学んだもので、その後函館へ戻って「まずは、」のつもりでスパゲティ屋を開いたという。「フレンチと違ってスパゲティなら皿・釜さえあればできるから。若くて資金がなかったから、まずはスパゲティ専門に絞ったんだ。ただ、当時から予約制でフランス料理もやっていて、そのうち昼にスパゲティ、夜はフレンチのコースっていう方向になっていったね」。

銅鍋マスター・佐々木秀夫さん。自家製麺は数年前にやめ、自身のレシピでオーダーした麺を2種類仕入れている。なお、厨房の壁を埋め尽くすのは人口石。耐火にも優れている。

美原1丁目に移るのは2010年。スパゲティとフレンチの両輪で、ランチとディナーの両方で、変わらずお客を楽しませていたが、その後、共に働いてきたスタッフの退職や自身の胃がん手術といった大きな節目を経て、数年前からディナーのみの営業にシフト。

「今はもう年金をもらう歳だし人を雇わなくなったから、自分のペースで好きなようにやってるんだよ」と話すマスター。その言葉は、彼の味の虜となった古くからの常連とひっそり蜜月を過ごしている、という意味が濃厚だが、しかし、あのたらこスパゲティ、あのサラダにアラカルトたち、それらへの扉は我々にもまだ開かれている。訪れる際は電話予約を必ず、マスターが腕によりをかけるコース料理は4000円前後から。ぜひ今、銅鍋へ。

お得でおすすめのパスタコース2,500円。前菜三種盛合わせとパスタ、デザートのセット。この日は海の幸のサラダ、豚肉のコンフィハム、トマトとモッツァレラチーズ、あさりとしめじのペペロンチーノ、レモンソルベとフルーツ添え。ぜひワインと。

【銅鍋】

函館市美原1-20-13
0138-45-8678

peeps hakodate

函館の新しい「好き」が見つかるローカルマガジン。 いまだ開港都市としての名残を色濃く漂わせる函館という街の文化を題材に、その背後にいる人々を主人公に据えた月刊のローカルマガジン。 毎号「読み物であること」にこだわり、読み手の本棚にずっと残り続ける本を目指して編集・制作しています。(無料雑誌・月刊/毎月10日発行)

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