ケルンの厨房はオープンキッチンで、昼時にはスタッフ総出でめまぐるしく料理を仕上げていく様子が見られる。多忙を極める店だけの、このライブ感が楽しみのひとつだが、しかし、これはそもそも“見せるため”のオープンキッチンなのか、オーナーシェフの久保田一佳(かずよし)さんに訊ねると「お客さんの食べている様子が見たいから」という答えが返ってきた。「おいしいかどうかは、食べている様子でわかる。こういう造りにしたのは、お客さんの表情が気になるから。自分が安心するためです」。どんなに忙しくても、客席に目を配ると語るシェフ。見ていたのは、こちらだけではなかった。
ケルンの創業は、昭和57年。鹿島製鉄所の鉄鋼マンだった久保田さんが22歳で料理人の道を選び、その後29歳で故郷に戻って開いた店だ。ちなみに、独立前は函館市内にあった『ぶどうの村』でも働いていたという。開店当時、店は現在の場所から500mほど北側で、ピザやグラタンを出す洋食店としてオープンしたものの「ドライブインの時代なのに、うちの駐車場はトラックが入れなかったし、しかも定食かラーメンの店が多い中で洋食はなかなか受け入れられなくて、最初は全然お客さんが来なかった」という歴史がある。
なお、久保田さんが故郷・森町で店を開いたのは「地元に関わっていたい」という想いがあったから。「うちの場合、地元に関わらせてもらうってなると、それは食材や人とのつながりってことになります。だから、肉も野菜も卵でもなんでも、地元か近郊、道産のものを使わせてもらっていますね」
看板のハンバーグに、ステーキ、カレー、ビーフシチュー。それぞれにファンがいるから、どれをとっても手を抜くわけにはいかない、と久保田さんはいう。「え?その中でも特に食べてほしいもの?う~ん、最初はやっぱりハンバーグを食べてほしいかな」。
【レストラン ケルン】
茅部郡森町字赤井川106-5
01374-5-2837