2022.05.21
暮らす住宅のすぐ裏に現れた、この動物…。
映像だけ見た人には、「タヌキじゃないの?」と聞かれましたが、ヒグマです。たしかに、「クマが家の近くにいるなんてありえない」と思っていたら、すぐにクマだとは気づかないかもしれません。
反対に、クマ目撃のニュースが相次いでいる今、黒いものが動くのを見ると、とっさに「クマかも!」と思う人もいるのではないでしょうか。実際に札幌であった通報の中には、犬や人との「見間違いだった」と判断されたものもあります。
住宅地でクマに会うのも、「まさか」ではない時代。「実際のクマって、どんな見た目?どんな動き方?」「クマかも!と思ったら、どうしたらいいのか」…これまでの取材で実際に見たクマを写真で振り返りながら、札幌市への取材をもとに、考えます。
【この記事の内容】
・「ヒグマ」と「ヒグマらしき動物」のちがい
・ことし、札幌で見間違いと判断された事例
・クマってどんな見た目?どのくらいの大きさ?写真でおさらい
・「クマかも!」と思ったら、どうしたらいいの?
・4月末からバージョンアップ!出没情報をくわしく知る方法
クマ目撃のニュースで、「クマのような動物が…」「クマらしき動物が…」という言葉を耳にして、疑問に思うこともあるのではないでしょうか。
札幌市が公表している、ことしのクマ出没情報の一覧でも…
右端の「内容」という欄を見てみると、「ヒグマを目撃」というものと、「ヒグマらしき動物を目撃」というものがあります。どんな違いがあるのでしょうか。
札幌市では、警察などからクマ目撃の情報が入ると、痕跡などを調べます。足跡やフンのほか、ドライブレコーダーや防犯カメラ、目撃者が撮影した映像や写真、そして近くで目撃情報が相次いでいるかなどを調べた上で、「ヒグマ」か「ヒグマらしき」かを判断しているといいます。
調査は専門知識を持つNPOと連携して行っています。三角山で調査中の男性2人がけがをした事故の後は、必ずヘルメットとクマスプレーを身に着けているほか、人への危険性などによって、ハンターの出動も要請するなど、体制を強化しているということです。
「ヒグマ」か「ヒグマらしき」かを調べる中で、見間違いと判断された事例もありました。
4月28日、札幌市白石区北郷で「クマみたいな動物がいる」と、警察に通報がありました。クマの痕跡は見当たらず、近くの防犯カメラには、黒っぽい犬が散歩している様子が映っていたそうです。飼い主の服も灰色で、コンクリートと似た色だったそう。札幌市は目撃者にも再確認して、「見間違い」と判断しました。
その2日前にも、北区篠路町で「クマのような動物」の目撃通報がありましたが、かがんだ人を見間違えたと判断されています。ほかにも、キツネと見間違えたと思われる通報もありました。
見間違えてしまうのも、正直、わかります。私はこれまでの取材で、住宅地に現れたクマを何度か目撃しましたが、大型犬を見ていると、「歩き方が似ているなあ」と感じます。クマも大きさや柄がそれぞれ違うので、焦っているときならなおさら、見間違えてしまうこともあるでしょう。
でも、「クマかな?違うかな?」と思いながら生活するのは、不安ですよね。実際のクマはどんな動物か…写真を見ながら、落ち着いておさらいしてみましょう。
2019年の夏、南区藤野・簾舞地区の住宅街に、連日クマが現れました。
鼻が特に大きく、目や耳は小さめ。ヒグマは真っ黒…というイメージがあるかもしれませんが、このクマは、胸のあたりが白かったです。
車の間を堂々と移動。このクマはゆったり歩いていたので、肩や腰が大きく動くような歩き方でした。しっぽが短いのは、犬との違いを見極めるポイントのひとつになるかもしれません。
体はがっしりしていて、写真でも肩の盛り上がりがよくわかります。
クマのニュースで「体長」という言葉を聞くと思います。人間の「身長」は頭から足もとまでを指しますが、「体長」は、頭からおしりまでのことです。
このクマの体長は、1.4メートルほど。道路に出ると、1車線分と同じくらいでした。ただ、もちろんこれより小さいクマも、大きいクマもいます。このクマは大人のメスでしたが、年齢や性別、さらに季節によって、体格は変わります。
藤野・簾舞地区に出没していたクマは、車のライトの前でも堂々と歩き、昼間にも出没していたので、はっきりと姿が見えました。一方、暗闇だと…
住宅横に覗く、黒い影…。2018年夏、島牧村に連日現れていたクマです。顔も体もやせていて、小柄に見えました。
この写真のように、夜道に突然現れたり、体を隠して顔だけ覗いていたりすると、すぐにはクマだと判断できないかも…と想像できるのではないでしょうか。
ハンターがライトで照らすと、顔のまわりが白いことがわかりました。ハンターは「体長1.5メートルほどか」と言っていましたが、この2か月後、秋に罠に入ったときには、一回り大きくなっていました。
秋には体長1.7メートル、体重は100キロを越えていました。ハンターは、夏よりも体重が30キロほど増えたのではないかと話していました。冬眠にそなえて、秋にたくさん食べるので、体格が大きく変わるのです。
クマも体長や体格、模様には個体差があるので、特に暗くて距離がある場合などは、一瞬では判別できないかもしれません。目撃が相次いでいて、不安に思っているときなら、なおさらです。
クマなのか、通報すべきか…迷ったときは、どうすればいいのでしょうか。
札幌市は、「まずは安全確保を第一にしてほしい」と話します。クマだと確信できない場合でも、近づいて確認したりはせず、まずは身を守ることを優先してください。
そして「窓越しに目撃した場合など、余裕があればスマートフォンなどで撮影」してほしいといいます。「110番は落ち着いてから、目撃した状況を可能な限り詳しく伝えてほしい」とのことです。
「落ち着く」ことは、見間違いを防ぐためだけではなく、身を守るためにも重要です。走って逃げると、クマは追いかけたくなってしまうので、走らないでください。クマの様子を見ながら、ゆっくり距離をとることが大切です。
安全な場所から落ち着いて見ることができたら、「形や色、大きさ」「耳やしっぽは長いか」を確認して、通報時にはその特徴と、「見た場所、周囲の明るさ」「どのくらいの距離で見たか」「一緒に見た人はいるか」「ドライブレコーダーなど撮影したものはあるか」など、できるだけ詳細を伝えてほしいということです。
札幌市は公式LINEでクマ出没情報を配信していますが、4月末から「バージョンアップ」しています。
公式LINEのメニュー「ヒグマ出没情報」から、「受信設定」を選び、出没情報を知りたい地域を選ぶと、これまでよりも「早く、詳しく」情報を受け取れます。基本的には札幌市の調査が終わってから、クマと確認された場合やクマの可能性が高いと判断された場合に配信されます。市街地に出没した場合には緊急性が高いため、夜間でも、調査の前に配信するということです。
この受信設定をしておくと、目撃日時や場所、様子を知ることができます。「足跡などの痕跡があったのか」「痕跡はなかったが注意が必要なのか」「見間違いと判断されたのか」、調査結果の報告も、より詳しくなりました。
たとえば、5月8日、南区南沢では、「キツネの後ろを歩くラグビー大の動物」の目撃情報がありましたが、クマの痕跡は確認できず、「キツネの親子である可能性が高い」という調査結果が配信されています。
黒っぽい動物を見かけて「クマかも!」と思ったとき、近くで「ヒグマらしき」動物の目撃情報があったとき…。身を守るためには、日ごろからクマについて「知っておく」ことが、まず大切です。
Sitakkeでも引き続き、クマについての暮らしにまつわる情報を調べていくので、ぜひ、一緒に知っていきましょう。
連載:クマさん、ここまでよ
文:Sitakke編集部IKU
2018年HBC入社、報道部に配属。その夏、島牧村の住宅地にクマが出没した騒動をきっかけに、クマを主軸に取材を続ける。去年夏、Sitakke編集部に異動。ニュースに詰まった「暮らしのヒント」にフォーカスした情報を中心に発信しています
図作成:みなと