2022.05.17
暮らす札幌市での新型コロナウイルスの感染者は、10代以下が3割前後を占める状況が続いています。これまでに自宅療養を経験した人の話を聞くと、子どものいる家庭では「特別な備え」が必要なことが見えてきました。
自宅療養ではどんなことに困るのか、どんな備えが必要なのか…経験者たちの話をもとに、考えます。
「いや~ほんと捕まっていたような生活でした」札幌市に住む30代の男性です。男性は、妻、保育園に通う4歳の長男、そして0歳の長女の一軒家で暮らす4人家族。
4月、長男が発熱し、感染が発覚しました。保健所からは「家族全員感染している可能性がある」と連絡を受け、その日のうちに長男の自宅療養が決まります。
男性は、長男の隔離ができるか考えたものの、食事などでも一人きりにするのは難しく、すぐに諦めたと言います。「家の中の除菌もすべきでしたが、とても手が回らず、換気だけしかできませんでした」
療養初日の暮らしぶりは、寝込む長男を除き、いつもと変わらないものでした。
そして翌日、検査の結果、家族全員の感染が分かりましたが、全員が咳や鼻水などの症状だけだったため、自宅療養をすることになりました。
突然、買い物に行けない状況になったものの、用意していたのは3日分の食料だけ。幸い、近くに親戚が住んでいたため、食料や除菌グッズの買い出しを頼むことができました。
最初に発熱した長男は、すっかり元気になり、よかった…と安心したのもつかの間、新たな困りごとが生まれます。
時間を持て余してしまうのです。自宅のタブレット端末でYouTubeを見るばかり…。
「長男は、1日7時間ぐらい大好きなゲーム実況動画を見てて、親が止めない限りずっと見ている勢いでした。それ以外はたまに庭に出るぐらいしかできなくて、日を追うごとにイライラしているのが伝わってきました」と振り返ります。
行動の制限からか、怒りっぽくなった長男…、それを見て男性の妻もイライラし始め…。男性は、家庭内のギスギスした雰囲気もつらかったと言います。
暇を持て余した長男に手を焼きつつ、男性と妻は睡眠をとったり、ふだんはしないような窓掃除などをして過ごすなか、また新たな困りごとが出てきました。0歳の長女の離乳食です。
療養後半は、親戚が用意してくれた食材だけで離乳食を作るのが難しくなり、保健所に相談…。しかし、「個別の用意はできない」と言われてしまいました。さらに、長女に40度を超える発熱があっても病院で診てもらえず、薬を送ってもらうだけだったことにも、この生活の厳しさを感じていました。
男性は、「大人はなんとかなるんですけど、子どもにちょっと特殊な事情があったときにストックがないとかなりきつい。なんとか10日間しのいだ感じです」と話します。
療養終盤には、この生活のゴールが見えた安心感と、長男が妻の機嫌取りを覚えたこともあり、家庭の雰囲気も改善したといいます。そうして、240時間に及ぶ療養生活を終えました。
行政の支援は、受けられなかったのでしょうか。
札幌市では、自宅療養となった感染者のうち、希望者に対し、10日分のレトルト食品などが入った自宅療養セットを配布しています。
しかし、療養者が多いことが影響し、実際に届くのは希望してから療養終盤になるケースもしばしば。
男性の自宅に届いたのは、療養9日目のことでした。もはや、自宅療養終了の前日です。
札幌市保健所 宿泊療養・自宅療養班 自宅療養チームによると、セットの希望があっても、現在の体制や感染状況では、「2,3日程度で届けるのは難しい」ということです。そのため、「まずは自分で用意してもらうしかない。家庭のふだんの食生活を考えて、最低でも3日分ぐらいは乾麺などのストックをお願いしたい」と話しています。
また、10代以下の感染割合が高いことから、「自宅療養で子ども用の配慮をしてほしい」との声が上がっていることに対しては、「災害時と同じく個別対応は時間がかかるため難しいのが現状。いまは広く対応するために一律の対応にご理解いただきたい」としています。
不意に始まった10日、240時間の子どもとの療養を終え、男性が感じたことは…
「小さい子を隔離するのは正直無理だった。親のどちらかは面倒みないといけないので、家庭内感染はあると考えて多少の備蓄は絶対あったほうがいいです」
子育て世帯では、自宅療養のためにどんな“備え”があったらいいのか?「Sitakke」の姉妹サイト・子育てコミュニティ「コラフル」や街頭でもアンケートを実施したところ、いろいろな“学び”を教えてくれました。
親や子が感染し、自宅療養を経験したという人からは、こんな声が寄せられました。
「日用品や食料のストックを最低限用意していたのはよかった。でも、体調不良時に簡単に食べられるものなど、もっとストックを準備しておいてもよかった」
「子どもが1日で元気になったので、残りの療養期間の過ごし方が大変だった。おもちゃが出てくる入浴剤や、ベランダで遊ぶシャボン玉が役立った」
「6歳の子どもは軽症だったため、有り余る体力が大変だった。『バランスボール』を使って体を動かすことで、なんとかやり過ごした」
「濃厚接触者扱いで、1週間の自宅待機を経験したが、待機中の『仕事をしたい私』と『話しかけたい2人の子ども』の攻防の経験から、後日、100均で1人遊びができるおもちゃを大量に購入した」
「食材や日用品の購入は、ネットスーパーに頼った。隔離できる部屋を準備しておければよかった」
自宅療養を経験したことがない人でも、「隠しおもちゃ」や「冷凍食品」を備えているという声も。買い出しを頼むなど困ったときに助け合えるように、近所の友人たちと「助け合いグループ」を作っているという人もいました。
アンケートでは、災害備蓄としてふだんから食料品を備えているという声も多く聞かれました。不安の声が多かったのは、「子どもの過ごし方」のほか、「家庭内感染の防ぎ方」でした。
「子どもの過ごし方」については、これまでにご紹介した経験談からの学びのほか、連載「あそびで育む親子のきずな」でご紹介している、あそびのヒントも参考にしてみてください。
「家庭内感染の防ぎ方」については、札幌市がホームページで公開しているリーフレットでは、「部屋を分けられない場合は仕切りやカーテンを使う」「手で触れるドアノブやスイッチの消毒は重要」など、細かく注意点が書かれています。待機期間についてなど、随時情報更新がされているので、お住まいの自治体のホームページをご確認ください。
たとえ症状が軽くても、家庭への影響が大きい新型コロナウイルス。必要な備えは、子どもの有無や年齢、仕事、頼れる人が近くにいるかによって、変わってきます。自宅療養が始まってから考えるのでは、苦労した人が多いよう。
「体調が悪くても簡単に食べられるもの」「子どもが回復した後の過ごし方」「少しでも接触を減らすための仕切りや使い捨てグッズ」…などなど、あなたの家庭では何を備えておくべきか、家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
連載「コロナ禍ライフハック」
文:引退D
編集:Sitakke編集部IKU