2022.04.25
育む子どもだけでなく大人も楽しめる絵本を、絵本セラピスト協会認定「大人に絵本ひろめ隊員」であるHBCアナウンサーの堰八紗也佳(せきはち さやか)がご紹介します。
新緑を迎えるこれからの季節。密を避け、キャンプの計画を立てている人も多いのではないでしょうか。当日の準備を楽しみながら、キャンプをテーマにした絵本を読んで“キャンプ熱”を高めて行きませんか?今回は、キャンプが題材になっている絵本を3冊ご紹介します。
【あらすじ】なほちゃんは、大きい子たちにまざって、ひとりでキャンプに行きたいといいました。みんなは口ぐちに「小さい子にはできないよ! 」といいます。なほちゃんは大きい子たちに負けまいと、重い荷物もひとりで背負い、まきを集め、懸命にがんばります。おいしいごはんを食べて、一日が楽しく過ぎていきます。夜、テントでこわいお話をききますが、なほちゃんはひとりでおしっこに行くことができました。「ちゃんとキャンプできたよ! 」(福音館書店HPより)
筆者が一番におすすめしたいキャンプに関する絵本です。出版社のホームページでは、5~6才におすすめの「絵童話」として紹介されています。文字がすこし多めですが、挿絵もたくさん入っているので、絵がお話の理解を助けてくれ、挿絵を手がかりに想像力をふくらませることができます。
最近は便利なキャンプグッズがたくさん売っていて、テントも簡単に組み立てられるものも多いですが、この絵本は1984年に初版が発行されたので、昔懐かしさがにじみ出ています。昭和レトロなキャンプと聞くと、逆に「体験してみたい!」と思う人も多いかもしれませんね。
この頃のテントは、今と違って素材も重く、畳んでもかさばって、持ち運ぶのが一苦労だったでしょう。調理はガスコンロを使えばすぐにできますが、木の枝を集めて火を焚き、その上に飯盒(はんごう)や大きな鍋を吊るして料理するなんて、それだけで日が暮れてしまいそうですね……。でも大変だからこそ、一層、楽しく、食事が美味しく感じるのがキャンプ!大自然を感じること、仲間たちと協力すること、そんなキャンプの醍醐味を改めて感じさせてくれる一冊です。小さな女の子が一晩で大きく成長する様子には、胸が熱くなります。子どもにとって、キャンプは大冒険なのかもしれませんね。
【あらすじ】ある夏の日、こぐまのくんちゃんは、いとこのアレックに誘われて二人でキャンプに出かけました。森を歩く道々くんちゃんは、こまどりの巣作り、アヒルの泳ぎ、かわせみの魚とりの場面に出会います。その後 キャンプをする湖のほとりに着き、くんちゃんは こまどりのように寝床を作り、アヒルのように泳ぎ、かわせみのように魚をとろうとしますが皆失敗ばかり。アレックに「くま式のやりかた」を教えてもらいます。キャンプのやり方では失敗ばかりでしたが、家への帰り道をちゃんと覚えていたのは、来る途中で鳥たちとあいさつを交わしていた、くんちゃんでした。(ペンギン社HPより)
絵は、やわらかなタッチの黒い線と、物語にふさわしい“緑色”だけで描かれています。シンプルさゆえに、この本を読むと、大自然の中で五感が研ぎ澄まされる感覚を思い出します。静かな森の中で鳥の声に耳を澄ませたり、川の流れる音に癒されたり……。「心身に栄養がたっぷりいきわたるような美味しい空気を吸いに出掛けたい!」と感じる一冊です。
タイトルの通り、お父さんと娘の2人キャンプです。そこにお母さんの姿は描かれず、少し切ないシーンもあるのですが、お父さんは持ち前の体力で楽しいキャンプを実現します。おにぎりを忘れてきたり、焚火で指をやけどしたり、少しドジな部分もあるお父さんですが、いつの間にかしっかり者に成長していた娘がフォロー!最強のコンビです。お魚すくい、カヌー、焚火の前でギター。毎日仕事で忙しいお父さんも、子どもと思いっきり遊べた夏のひとときは一生の宝物でしょう。「このまま時間が止まってほしい」と思うような、心あたたまる親子のふれあい物語です。
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今回は、キャンプを題材にした絵本を3冊ご紹介しました。
ちなみに筆者はキャンプの経験が豊富なわけではありませんが、手ぶらでキャンプができる「グランピング」にハマり、新篠津・小樽・平取など道内の色々なところへ行きました。一番記憶に残っているのは、岩見沢市にある「ログホテル ザ・メープルロッジ」。2018年に訪れました。妊娠中で、重たい荷物を持てない時期だったので、至れり尽くせりのグランピングは助かりました。このときお腹の中にいた息子はもう3歳。今度は家族3人で遊びに行くことを楽しみにしています。
まだまだお出かけするのも不安な日々が続いていますが、ずっと家の中にいると余計なことを考えすぎてしまいます。“非日常”を味わえるキャンプは、あなたの心のモヤモヤ解き放ち、良いアイデアや発見をもたらしてくれるかもしれません。そして、ページを開けばいつでも物語の中の“非日常”に連れて行ってくれる「絵本」にも、そんな力があると筆者は信じています。
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「連載コラム・今月の絵本通信」
文|HBCアナウンサー 堰八紗也佳
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