2022.04.21

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いじめから救えなかった後悔…高校生たちが「ピンク色」を身につける理由とは

新学期が始まりましたが、相次ぐ悲しい「いじめ」のニュースを聞いて、「もしじぶんの子どもの学校で、いじめがあったら…」と、不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。

おととし、いじめが原因で中学生が自殺した登別市。繰り返さないためにと、「じぶんごと」にして考えた、高校生がいます。「ピンクシャツ」大作戦を計画し、いじめ撲滅を訴えました。

「ピンクシャツデー」は、カナダで始まった取り組み。ピンク色のものを身に着けて、いじめ反対の意志を示すのです。

作戦当日、思いがけない広がりが待っていました。

仲が良かった友だちが、いじめを原因に…

登別明日中等教育学校の4回生(高校1年生・当時)、竹谷海音さん。「ピンクシャツ大作戦」の実行委員長です。

竹谷さんは小学生の頃、仲が良かった友だちが、いじめを原因に転校した経験があります。「話を聞くことはできたけど、自分は学校も違ったし、行動はできなかった」と振り返ります。

ピンクシャツデーを知ったのは、中学2年生のときでした。「思ったことを心の内にしまわないで、周りの人を巻き込んでいけるのがすごいな」と感じたといいます。

市教委の第三者委員会(登別・おととし7月)

登別では、おととし、いじめが原因で、当時中学1年生の男子生徒が自ら命を落としました。

この問題をきっかけに、市内の高校生が集まり、いじめやジェンダーなどの多様性を考えようと、今回の「ピンクシャツ大作戦」を計画したのです。

協力してほしいけど、強制しない

ピンクシャツ大作戦は2月24日。その1週間ほど前、有志のメンバーらが「ピンクシャツ大作戦」への参加を呼びかけました。

「ピンクシャツ大作戦があります」「僕とピンクになりませんか~」「一緒にピンク色のものを身に着けませんか~」

呼びかける言葉にも、少し工夫があります。

「やってください」ではなく、「やりませんか」。ピンク色のものを身につけるのを、「強制しない」ようにしているのです。

そして迎えた「ピンクシャツ大作戦」の当日。なんと、大雪の影響で電車は運休し、学校は臨時休校に…。

しかし、生徒たちの想いは、市民に届いていました。

ピンク色のコートを着た市民を見つけ、声をかけると、「朝からね、中もピンクにしてるの!」と見せてくれました。「ずっと前から、きょうはピンクの日って決めてた」といいます。

多くの職員がピンク色の服を身につけた(登別市役所・2月24日)

市役所では、賛同した職員らが、庁舎内をピンク色に染めました。

翌日、学校でも一日遅れでピンクシャツ大作戦を実施。多くの生徒たちが、Tシャツやマスクなど、思い思いのピンクを身に着けてくれました。

実行委員長の竹谷さんは、「学校に来たらみんなが『きょうピンクのものをつけてきたよ』と声をかけてくれて、友達や周りの人も何かしたいと思っていたことに気が付けたので、すごく嬉しかった」と話します。

高校生たちの行動で広がった、「思いやりのピンク」への賛同の輪。

竹谷さんは、「登別市だけじゃなくて、毎年大きくなって、北海道とか日本中でもこの活動が行われるようになったらいいな」と話していました。

「ピンクシャツ大作戦」でわかったのは、登別市には、いじめに反対する人が本当はたくさんいるということでした。ひとりひとりがその意思を、目に見える形で表現することが、「いじめを許さない社会」を作ることにつながるのではないでしょうか。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
関連:いじめ問題を考えるキャンペーン報道「“誰かのこと”じゃない

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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