新学期が始まりましたが、相次ぐ悲しい「いじめ」のニュースを聞いて、「もしじぶんの子どもの学校で、いじめがあったら…」と、不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
おととし、いじめが原因で中学生が自殺した登別市。繰り返さないためにと、「じぶんごと」にして考えた、高校生がいます。「ピンクシャツ」大作戦を計画し、いじめ撲滅を訴えました。
「ピンクシャツデー」は、カナダで始まった取り組み。ピンク色のものを身に着けて、いじめ反対の意志を示すのです。
作戦当日、思いがけない広がりが待っていました。
登別明日中等教育学校の4回生(高校1年生・当時)、竹谷海音さん。「ピンクシャツ大作戦」の実行委員長です。
竹谷さんは小学生の頃、仲が良かった友だちが、いじめを原因に転校した経験があります。「話を聞くことはできたけど、自分は学校も違ったし、行動はできなかった」と振り返ります。
ピンクシャツデーを知ったのは、中学2年生のときでした。「思ったことを心の内にしまわないで、周りの人を巻き込んでいけるのがすごいな」と感じたといいます。
登別では、おととし、いじめが原因で、当時中学1年生の男子生徒が自ら命を落としました。
この問題をきっかけに、市内の高校生が集まり、いじめやジェンダーなどの多様性を考えようと、今回の「ピンクシャツ大作戦」を計画したのです。
ピンクシャツ大作戦は2月24日。その1週間ほど前、有志のメンバーらが「ピンクシャツ大作戦」への参加を呼びかけました。
「ピンクシャツ大作戦があります」「僕とピンクになりませんか~」「一緒にピンク色のものを身に着けませんか~」
呼びかける言葉にも、少し工夫があります。
「やってください」ではなく、「やりませんか」。ピンク色のものを身につけるのを、「強制しない」ようにしているのです。
そして迎えた「ピンクシャツ大作戦」の当日。なんと、大雪の影響で電車は運休し、学校は臨時休校に…。
しかし、生徒たちの想いは、市民に届いていました。
ピンク色のコートを着た市民を見つけ、声をかけると、「朝からね、中もピンクにしてるの!」と見せてくれました。「ずっと前から、きょうはピンクの日って決めてた」といいます。
市役所では、賛同した職員らが、庁舎内をピンク色に染めました。
翌日、学校でも一日遅れでピンクシャツ大作戦を実施。多くの生徒たちが、Tシャツやマスクなど、思い思いのピンクを身に着けてくれました。
実行委員長の竹谷さんは、「学校に来たらみんなが『きょうピンクのものをつけてきたよ』と声をかけてくれて、友達や周りの人も何かしたいと思っていたことに気が付けたので、すごく嬉しかった」と話します。
高校生たちの行動で広がった、「思いやりのピンク」への賛同の輪。
竹谷さんは、「登別市だけじゃなくて、毎年大きくなって、北海道とか日本中でもこの活動が行われるようになったらいいな」と話していました。
「ピンクシャツ大作戦」でわかったのは、登別市には、いじめに反対する人が本当はたくさんいるということでした。ひとりひとりがその意思を、目に見える形で表現することが、「いじめを許さない社会」を作ることにつながるのではないでしょうか。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
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