「シェアキッチン」を知っていますか?
自前の店舗を持たない人達が、ひとつのキッチンを共有して飲食物を作り、来店客に販売したりデリバリーサービスの拠点にしたりする場所のことです。
自分のお店を開きたくても、初期投資などにお金をかけられない・・・
そんな人でも手軽に事業を始められるとあって、いま人気が高まっています。
札幌・白石区に昨年オープンしたシェアキッチン「タネキッチン」でも、多くの人たちが、この場所から夢をかなえようと奮闘しています。
「餡累(あんがさね)」の屋号を掲げ、こちらで手作りの和菓子を月に4、5回、不定期で販売している、主婦の長谷川由紀さん。
翌日の販売に向け、和菓子の仕込みを夕方から夜中まで一人でおこないます。
この日作っていたのは、「亥の子餅」。
10月〜11月の季節商品なので本来ならこの時期には和菓子屋さんの店頭には並ばず、餅の形ももっとシンプル。
けれど、完成したのは可愛いらしいイノシシ型のお餅!
長谷川さんオリジナルのアレンジを加えた「亥の子餅」なのです。
「修行を積んだ和菓子職人なら、このデザインは邪道」と長谷川さんは笑います。
実は長谷川さん自身は、和菓子屋さんで和菓子の修行をしたことは一切ありません。
和菓子を学んだのは、趣味で通っていた料理教室。
腕を見込まれ講師も務めましたが、コロナ禍でその教室は閉鎖してしまいました。
それでも、好きな和菓子作りを続けようと、「タネキッチン」でオリジナリティーあふれる商品を生み出しているのです。
一番人気は、見た目も可愛らしい「いちご大福」。
大粒のいちごを、まず練乳を混ぜた白あんで包みます。
そして、外側を真っ赤な餅生地で包みます。
この餅生地は、なんと、ラズベリージャムで着色しているそう。
最後に可愛らしい「ヘタ」を付ければ、イチゴの形をした「いちご大福」の完成!
練乳の濃厚な味わいとラズベリーのほのかな香りが、みずみずしいイチゴの甘さを引き立てます。
お客様の顔が見えて「おいしかった」と声をかけてもらうのがやりがいだと、長谷川さんは笑顔で語ります。
管理栄養士の岡本由香梨さんは、「タネキッチン」で毎週木曜日と金曜日、お弁当を販売しています。
「低糖質・高タンパク」がモットーのヘルシー弁当にこだわっています。
この日のお肉のお弁当のメインは、鶏ムネ肉の甘辛ソテー。
衣にはマヨネーズを使ってシットリ仕上げます。
野菜を多く使ったおかずを4つも入れ、ご飯は、ビタミン・食物繊維が豊富な、玄米に近い三分撞きです。
体に優しいお弁当を求め、多くのお客さんが訪れます。
自宅で料理教室も開く、岡本さん。
しかし、コロナ禍では授業もままならず、もっと腕を活かしたいと考えていました。
そんな中、5歳と7歳の子供の手も離れてきたため、昨年6月のタネキッチンオープン時から、ここでのお弁当販売にチャレンジしているのです。
そしてそんな岡本さんは、なんと、この春独立して、自分のお弁当屋さんを開くことに!
「タネキッチンでの経験が、店舗を持って営業する自信がついた」と語ります。
このタネキッチンを開業したのは、経営コンサルタントの小西麻衣さん。
中小企業診断士として企業や経営者をサポートするかたわら、お店を始めたいという人をサポートするために開きました。
キッチンには業務用の厨房機器をそろえ、さらには保健所の「菓子製造許可」と「飲食店営業許可」を取得。
路面店も併設しているので、だれでもすぐに自分の商品を作って売ることができる場所です。
現在タネキッチンには、長谷川さんの和菓子や岡本さんのお弁当のほか、パンや焼き菓子、韓国料理など13軒のテナントが出店しています。
お弁当屋さんとして独立を決めた岡本さんを応援し、「岡本さんのような人をもっと輩出したい」と、その挑戦を喜びます。
自分の料理をたくさんの人に食べてもらいたい。 自分のお店を持ちたい。
そんな人たちの願いをかなえる「タネキッチン」。
人々の夢という「タネ」が花開く、可能性にあふれた素敵な場所でした。
※掲載の内容は番組放送時(2022年4月12日)の情報に基づきます。