2022.03.26

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「ここじゃなきゃ潰れてた」変わりゆく街・大門を、それでも選んだ30代の店主たち【函館】

函館の酸いも甘いも知り尽くす街、大門。映画館も、路面店も、小路の喫茶店や酒場も、次々と姿を消してしまった。アーケードも撤去され、見慣れた景色がどんどん変わっていく。それでも大門への愛着がなくなることはない。

大門で店を開いた30代の店主たちがいる。彼らが、「それでも大門を選ぶ理由」とは…。

(前編はこちら:「大門で店を開いた30代の店主たち」 https://sitakke.jp/post/2693/

“函館らしさ”が性に合う。

菅家富雄/古着屋HamburgCafe

アメカジを中心に、ビンテージの古着を販売する『HamburgCafe(ハンバーグカフェ)』。2011年の夏、グリーンベルト沿いに開店し、その後現在の若松町に移転しながらも、一貫して大門エリアを商いの場所に選ぶ。

店主・菅家富雄さんは20代の頃、2年ほど函館で暮らした経験があるが、生まれは福島県で大門が元気だった時代を知らない。店舗探しの時も、エリアは賑わいとは縁遠い状態だった。

「それでも、別の場所で店をやる気はまったくなくて。大門で、路面店でやるってことが僕にとって大事なんですよね。ここにしかない“函館らしさ”に惹かれてるんですよ」

菅家さんの言う、大門の函館らしさとは。「生活感があるというか、つくられた感じがないというか。たとえば西部地区なら、観光客向けに整備されていることを感じますが、大門は飾らないそのままの雰囲気でそれがいい。グリーンベルト沿いの店のときも良かったですね。ゆっくりした空気と周辺の店やお客さんたちが程よい距離感でフレンドリーで。この居心地の良さは大門ならではだと思います」。

菅家さんに、大門にひと言、と問うと「駐車場ばっかりになってくのが寂しいですね。そして建物がなくなると、そこに何があったか忘れてしまう自分も悲しいです」。

古着屋HamburgCafe
・函館市若松町29-3
・0138-84-5888

ここじゃなきゃ潰れてた。

種田洋平・横田直明/CHILLNOWA

2014年に、大門のグリーンプラザ沿いに自転車専門店『チルノワ』を開業した種田洋平さんと横田直明さん。グラベルロードバイクやファットバイクなど、専門性の高い自転車を扱う稀少な店だ。

いまの大門を俯瞰して見たとき、ふたりは決してポジティブな気持ちではいられない。

「まず2014年と比べて状況があまりに変わってしまいましたよね。気づいたら近所の店が次々なくなって、アーケードも象徴的な建物もなくなって日々大門らしさが消えていく現状はつらいですよ」(種田)。

「コロナ以降で打撃がデカいのが、イベントが軒並み中止になったこと。場所柄、港まつり期間中は結構店に人が流れてくるんです。アレ、なんだここ?みたいな感じで。さすがにその場で自転車が売れることはないですけど、数日後にまた来てくれて商売につながるみたいな流れがあったんですよ。それが一切なくなりましたね」(横田)。

移転が頭にちらつくこともある。でも一つ確かなことがある。「ここで始めなかったら、とっくに潰れてましたね。ここだから今までやってこられた。それは間違いないです」(種田)。

店内は自転車の他、各種パーツやアクセサリーで溢れている。「なんかネガティブな話ばっかりですみません(苦笑)。でも、俺らが好きだった大門に戻ってほしいって心底思ってるんですよ」。

CHILLNOWA
・函館市松風町10-5
・0138-83-5044

(前編はこちら:「大門で店を開いた30代の店主たち」 https://sitakke.jp/post/2693/

peeps hakodate

函館の新しい「好き」が見つかるローカルマガジン。 いまだ開港都市としての名残を色濃く漂わせる函館という街の文化を題材に、その背後にいる人々を主人公に据えた月刊のローカルマガジン。 毎号「読み物であること」にこだわり、読み手の本棚にずっと残り続ける本を目指して編集・制作しています。(無料雑誌・月刊/毎月10日発行)

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