「ジュエリーアイス」をご存じでしょうか?十勝の豊頃町の、太平洋に面した大津地区の海岸に、厳冬期だけに打ち上がる氷につけられた名前です。まるで水晶のように透き通っていて、太陽の光に照らされると、光がいくつもに乱反射して、氷は本当に宝石のように美しく輝きます。
この氷は、近くに河口がある十勝川の水が凍ったものです。川の氷が砕けて海に流れ、太平洋の荒波に数日もまれることで、クリスタルのように美しく磨き上げられます。そして、海岸に打ち上げられるのです。
今シーズンは、1月中旬の嵐で、ある程度まとまった氷がやって来たものの、その後はずっと氷を見ることができない日が続いていました。しかし海面が高くなる〝大潮〟の2月17日ころから一気に数が増え、短い期間で、大量の「ジュエリーアイス」が波打ち際を埋めつくしました。
19日は土曜日、しかも雲ひとつない〝十勝晴れ〟に恵まれ、人々が海岸を訪れました。「ジュエリーアイス」が最も美しい姿を見せるのは、海から太陽が昇る日の出の時刻。その時刻の気温は、1日のうち最も低いマイナス14度まで冷え込みました。
昇り始めた太陽にきらめく氷が、打ち寄せる波にひるがえり、躍る様子は、大自然が作り出す最も美しい光景のひとつではないかと思えるほど、目の前に広がる氷たちに、心が吸い込まれていきます。
日の出の1時間以上前から、黙々と作業をする男性の姿がありました。十勝の本別町にある、勇足中学校の教諭・村中鉄也さんです。
作っているのは、氷を積み上げるオブジェ。名付けて「ジュエリーアイス・アート」です。きょうが、今シーズン10回目の制作。これまでずっと〝氷不足〟に悩まされてきましたが、きょうは違います。作品の材料は、数限りなく浜辺に横たわっているのですから。
「(材料の)氷が大きいので、これまでにない、迫力のある作品にしたいですね」村中さんは意気込みますが、氷を運び、削り、積み重ねる手を止めることはありません。
「ジュエリーアイス・アート」は、時間との闘いでもあります。氷がもっとも美しく輝く、日の出までに完成させなくてはなりません。
いかがでしょう? 自然そのままの美しさとはまたひと味違った、天へと昇華するような伸びやかな〝生命力〟が、氷たちに吹き込まれました。
みんなで記念撮影をした後、倒れると危険なので、オブジェはバラバラにされ、氷たちは砂浜へと帰されました。
位置情報: 豊頃町の「ジュエリーアイス」
帯広駅から52km、車で1時間10分ほど。
時期:12月下旬〜3月中旬
時間:日の出1時間前から2時間
午前7時30分、撮影を終えて車に戻り、カメラ機材を整理して、足から滑り止めのアイゼンを外し、ウェーダー(胴長=長靴つきの防水ズボン)を脱ぐと、どっと疲れを感じました。なにせ行動を開始したのが、午前4時前でしたから。
こうなるとカメラマン仲間で、「撮影お疲れちゃんメシ」と呼ばれる〝お楽しみの時間〟です。
向かったのは、仲間内ではもう〝お約束〟ともいうべき、豊頃町の「朝日堂」というお菓子屋さん。お目当ては、自慢の、アメリカン ドーナツです。
この店の二代目・岡本良一さんが、いまから41年前に作り上げた逸品です。
豊頃町の人口は、3,000人ちょっとなのですが、こちらのアメリカン ドーナツ、多い日には3,000個を作り、完売御礼という人気なのです。
ドーナツという名前なのですが、まるくありません。穴もありません。岡本さんが「このまま焼けば、パンみたくなる」という、イーストでふくらんだ生地を油でサッと揚げ、その中になんとも軽やかなホイップクリームをたっぷりとまとわせて2つ折りにした、スイーツです。
岡本さんいわく「まあ、アメリカン スタイルちゅうヤツだね」っていうヤツなんです。
私は何と言っても、カスタードクリーム推し! 次に、生クリームかなー。食べごたえに関しては、〝軽やかなこと〟この上ありません。 口に入れるとたちまち、爽やかでしつこさのまったくない甘みを残して、衣もクリームも、泡のように消えてなくなります。この日は、すぐ食べる用に2個、家族へのおみやげ用に3個買ったのですが、美味しさに負けてしまい、運転しながら5個全部食べてしまいました。芽室町か十勝清水町で、美味しい蕎麦を食べてから札幌に帰ろうと考えていたのですが、もうお腹いっぱいになってしまいました(めちゃくちゃ後悔…)。
位置情報: 豊頃町 アメリカン ドーナツ「朝日堂」
営業:9時〜18時、月・火曜日休み
本題の「ジュエリーアイス」ですが、嵐などが来れば、新しい氷が上がるかも知れません。あるいは、3月1日から〝大潮〟になりますので、そのあたりを目安にして、豊頃町が発表している情報を参考にしてみてください。
[豊頃町商工観光課・ジュエリーアイス情報](http://www.toyokoro.jp/jewelryice/news/)
ただ、「ジュエリーアイス」は、打ち上がった時が最も美しく、時間が経つにつれて透明度がなくなり、ごく普通の氷になってしまいますのでご注意を!
文・撮影:インスタグラム「北海道3大かわいい動物」プロジェクト 管理人・プロデューサー&カメラマン ami_papa
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