は~い皆さん、ごきげんよう!愛を追い求め続けるしがない女装子のゲイ、満島てる子です。普段はお悩み相談コラムを担当してま~す!

「恋愛ってなんなん?」と悩んでる人に読んでほしい【文豪・哲学者の名言】(②)

2月といえばバレンタインデー!ということで、今月はズバリ、恋愛がテーマ。
恋に悩んでいる人、楽しんでいる人、「恋とか愛とかって一体何なんだろう?」と考えている人たちにも向けて、あたしお気に入りの 文豪たちの名言を3つピックアップ!

前回の名言PART①では、恋愛の過程で通る、孤独とその苦しさに関する「スタンダール」の名言を紹介させていただきました。(え、あらやだ初っ端からテーマが重すぎたって?)

はい、では早速PART②いってみましょう!

今回ご紹介するのは、ドイツの文学者ヘルマン・ヘッセの一言です。

「愛しているとしたら、どうして愛を技巧(テクニック)として行うことができよう?」……ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』

1946年にノーベル文学賞を受賞したことで知られ、『車輪の下』『デミアン』などでも有名なヘッセ。彼は様々な題材に取り組みましたが、その中でも異色かつ至高の作品がこちら。

シッダールタとはブッダの出家以前の名前。ヘッセはこの本の中で、シッダールタが悟りを開くまでの迷いや苦しみ、その愛欲にもフォーカスを当て、ひとりの人間としての彼を生き生きと描き出します。その中でも特に印象的なエピソードが、遊女カマーラとの出会いとそのやりとり。シッダールタは一旦修行の道を捨て、しばらくカマーラとの戯れにふける日々を送るのですが、彼の心はどこか満たされません。

どれだけ体を重ねエクスタシーを感じようと、単なる官能だけでは安らぐことのない気持ち。その中で出てくるのがこちらの一言。目一杯カマーラと床遊びをした後で、シッダールタは「君も僕も愛し合ってはいないよね。だってここにあるのはお互いを歓ばせるテクニックだけだもの」と、気だるそうに彼女に伝えるのです。

この本は、昔片思いしていた人が、傷心のあたしを気づかってなのか「きっと気持ちが楽になるから読んでみて」と勧めてくれた一冊。シッダールタがあらゆる存在への愛に目覚め救われていく様にとても感動し、これをあたしにプレゼントしてくれた彼の優しさに涙したのを覚えていますが、その本筋に劣らず印象に残ったのがこの箇所でした。

確かに恋愛には、色事をはじめとして、かけひきや相手の口説き方だったり、様々なスキルが必要かもしれません。「相手が喜ぶプレゼントランキング」だったり、「オススメのデートスポット◯選」(あたしもクリスマス時期に書かせてもらいましたが)だったり、そういう情報が喜ばれるのも、恋愛の技術的なものというかノウハウとでも言うべきものを、多くの人が求めているからこそだと思います。

でもそんな技術や情報を使えたり持っていたとしても、単にそれだけで相手に対して真剣な気持ちがなかったなら、そうした手腕も虚しいものになってしまうでしょう。相手と自分が互いに喜ばせ合うことは必要ですが、それが愛の本質ではないはず。

快楽の応酬のようなギブアンドテイクのやりとりを超えた、相手への思いやりや信頼、すべてを受け止め支える姿勢……そうした大事な要素が欠けている状態では、その関係性は結局退廃的なものにとどまらざるをえないのです。『シッダールタ』のこの箇所は、それをとてもよくとらえ、表現した場面だと言えると思います。

読者のみなさんの中にもきっと、「この人と身体の相性はいいし、相手もよく求めてくれるんだけれど、それだけな気がする……」とか「いろいろ工夫して楽しませてはくれるんだけどなにかが足りない……」とか、そんな迷いを抱えた経験のある人、はたまた現在進行中でそうした問題に絶賛お悩み中の人もいるはず。

そんなときはヘッセのこの言葉を思い出して、「愛に欠かせないものとは何なのか」「相手から本当に自分が欲しいものとは」といった話題について、改めて考えるきっかけとしていただければ幸いです!

ちなみに、こんな大人なことをさらっと書いてしまうヘッセ自身はなかなか気性の激しい人だったようで、幼少期には神学校を「詩人になるか、でなければ何にもなりたくない」と言い捨てて脱走。かなりのやんちゃボーイ……。ただ、彼の作品はどれも愛や平和がテーマとなっていて、心に深く染み入る内容となっているので、気になった方はぜひ他の本も読んでみてくださいね。

3部に渡ってお届けてしている「恋の名言」シリーズも、次回がラスト!
ではでは、Part③でお会いしましょう、Sitakkeね~♪

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「連載コラム・てる子のお悩み相談ルーム」
文:満島てる子
編集:なべ子(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「SItakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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