SNSをチェックしない日はない方がほとんどではないでしょうか? 通勤通学の時間、信号待ちのわずかな時間など、常にSNSに触れているという方も多いでしょう。
筆者もSNSはよく使いますし、大好きです。しかし、使い方を少し間違えると、SNSに振り回され、支配されるようになってしまうので注意が必要です。
今回は、公認心理師の筆者がSNSと上手に付き合う3つのヒントをお伝えします。
あなたが日常的に使っているSNSはいくつありますか? 好むSNSは人それぞれ。好きなものを好きなだけ使ってください。ただ、SNSを利用するうえで意識したいことは、あなたが使っている SNSは世界の全てではないということ。
SNSを適切に利用して楽しむのは良いことです。しかし、人には情報バイアスというものがあり、自分にとって都合の良い情報だけを見つけて取り込む特徴があります。
また、人には自分に関連がある情報を見つける能力もあります。あなたが気になっている事柄があると、それに関連するものばかりが都合よく目につくようになっているのです。これはインターネット外でも起こっている現象です。例えば、あなたが赤い車が欲しいなと思い始めた途端、赤い車ばかりが目につくという現象が起きることは心理学では有名な話。
まして、SNSでは、AIがあなたの関心事からあなたが興味のありそうな情報が届くように働いています。そうやって自分にとって都合のよい情報があふれる仮想空間を、人は絶対的な空間と思いがちです。
そこにのめり込んでしまうと、SNSはあなたの思考から柔軟性と多角的な視野を奪います。SNSは楽しいし、役にも立つ。でも違う視点や立場もあるのだということを常に意識して情報と触れ合うことが大切です。
インターネットは便利。SNSには役立つ情報がたくさん。それは嘘ではありません。でも、本当にあなたにとって役に立っていますか? 逆にあなたを疲れさせていませんか? そのことを定期的に確認してみましょう。
始める時は楽しいなと思っていたはず。でもそういう時ほど、楽しさが疲れになった瞬間に気づくことがむずかしいのです。楽しいと思いこんでやり続けてしまうことがあります。
この現象は、SNS以外でもよく起こります。例えば楽器の習い事。最初は楽しかったはずなのに、だんだんレッスン日になると気が重くなる……。“楽器が弾けるようになる”というワクワク感よりも“練習へのプレッシャー”の方が強くなってしまうと本末転倒です。
あなたがSNSを眺めている時、“本当に楽しいと感じているのか”を自分で確認する機会を定期的につくるようにしてみましょう。
「なんだかもやもやする」、「いやな気持ちになる」……そういう時は残念ながらそのSNSはあなたにとってのストレッサー(ストレスの原因)となっています。無理に続けるのではなくちょっと休んでみるといいかもしれないですね。
「休む」とは言っても、なかなか簡単に離れることができないのがSNSの恐ろしさ。まず、疲れたと気づいた時点で、ヒント1を思い出してください。あなたがこれまで使ってきたSNSは世界の全てではありません。そのことを自分に言い聞かせましょう。
そして、離れたいと思っても、ついスマホに手が伸びてしまう……という時は一工夫。手を伸ばせばスマホがあるという環境を少し変えて、いつもスマホがある場所に、コーヒーを置いてみたり、ふかふかのぬいぐるみを置いてみたりしてください。
コーヒーの香り、マグカップの温かさを手と鼻で思う存分使って味わってください。ふかふかのぬいぐるみを握って、その柔らかさを楽しむのもおすすめです。数分、そうやって過ごしてみて、やっぱりSNSを見たいなと思っていたら我慢する必要はありません。
スマホだけにあなたの五感を使わないように意識することが大事です。身の回りにはたくさんのものがあります。身近にあるホッとできるもの探しをして、目の前にあるものを十分に味わってみることをおすすめします。
「人と比べるのをやめる」とか、「自分は自分と思えばいい」と分かっていてもなかなかできないことも多いものです。SNSのことも、そのSNSを楽しんできたあなた自身のことも否定する必要はありません。
今のあなたにとってちょっと負担になっているだけのこと。少し離れてみて、また戻りたいなと思ったら戻ればいいのです。SNSがあなたのためにあるわけで、あなたがSNSのためにあるわけではありません。
うまく付き合うためには距離感が大事です。縛られず、振り回されず、自分がSNSを使う側であり、やめる権利も自分にあるのだという意識を忘れずに、SNSと仲良く付き合ってくださいね。
文:竹原久美子(公認心理師/婦人科クリニック勤務)
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