2022.01.20
深める思い描いていた“キャンパスライフ”が、新型コロナウイルスの影響で一変してしまった大学生たち。ことしも、1月4日には道内で初めて「オミクロン株」が確認されるなど、油断できない状況で、感染対策に気を使いながらの学生生活が続きそうです。
コロナ禍での学生生活、何に不安を感じているのか…HBCが連携(※1)している北海学園大学の学生にアンケートをとったところ、最も多かったのは「友人ができない」という声でした。回答してくれた273人の学生のうち、およそ65パーセントにのぼります。
さらに「友人関係が希薄になった」という回答が、およそ40パーセントと、2番目に多いという結果でした。ほかにも、「恋人ができない」「円滑な就職活動ができない」といった声も。
それもそのはず…大学に行く頻度は、「週に1~2日」と答えた学生が半数近くにのぼり、「月に一度も行かない」と答えた学生もいました。
サークル活動もコロナ禍の影響を受けていて、「あったが少なかった」「感染が不安なのでサークルに入らなかった」「サークルに入りたかったが、コロナ禍で収入が減って入る余裕がなかった」などと答える学生もいました。
日常的に会って、だんだんと仲を深める環境が減ったコロナ禍。大学生たちは、どんな工夫をしたのでしょうか。
多かったのは、「会う機会が少なかったので、少ない機会を大切にするようにしていた」「最初の授業で連絡先を交換した」「いつもより自分から積極的に質問する」など、『一期一会』を大切にする声です。
「授業のためと称して連絡先を交換した」「コロナによってオンライン授業が増えて色々と分からないことが出てくると思ったので、それを確認し合えるように数少ない対面授業の時に頑張って友達をつくろうと声をかけた」…など、『自然の成り行き』を待つのではなく、話しかける理由を考えて、なんとか友人を作ろうとしてきた様子がうかがえます。
数少ない会える機会を大切にする一方、会えない中で「SNSを使う」という声も多くありました。
たしかに近年、「#春から〇〇大」などとハッシュタグをつけ、SNSで友人を募る投稿がよく見られます。でも…注意が必要です。
去年3月、上智大学はホームページでSNSについての注意喚起をしています。「#春から上智」のハッシュタグをつけたアカウントで、DMで勧誘を受けたり、性的な画像が送られたりする被害があったといいます。
上智大学は、学外団体や悪質商法などが正体を隠してイベント告知や勧誘を行っていたり、フィッシングサイトや広告サイトに誘導されたりする可能性もあると指摘し、
・主催者のはっきりしない企画には、たとえオンラインであっても決して参加しない
・見覚えのないDMには決して返信しない
・個人情報を安易に公開しない
・身元が分からないアカウントからの情報を拡散しない
などと注意を呼びかけています。
対面では感染のリスク、SNSでは犯罪被害のリスク…「本当に同じ大学の人と、安心して交流できるほしい」という想いを、自ら起業して実現しようとしている大学生がいます。
三重大学の細川満麗(ほそかわ・まり)さん。現在2年生で、入学したときはすでにコロナ禍。1年生の春学期は、一度も大学に行けず、秋学期も3~4回しか行けなかったそうで、「このままずっと行けないんじゃないかと不安になった」といいます。
オンライン授業で、画面上に並ぶ顔は見たことがあっても、実際に会ったことはない同級生たち。「実在するんだ」と実感できたのは、2年生になってからでした。
そんなとき、大学の授業で、「起業の案を考えて発表する」という課題がありました。そこで細川さんが発表したのが、三重大学の学生専用のコミュニティアプリ「Mieet(ミート)」。 学生証を使って本人確認を厳格にし、「なりすまし」を防ぐことで、「第2のキャンパスをいつでも、どこでも」楽しめるようなアプリです。
授業はもともと、発表された案に順位をつけ、表彰して終わる予定だったといいますが、細川さんの案は、名古屋で「カーネルコンセプト」という会社を経営している大学OBの目に留まります。
「1000万円出資するから、本当に起業してみないか…」まさかの提案に驚きながらも、細川さんは挑戦することを選びました。
去年7月、アプリ開発会社「プロジェクトM」を設立。学生メンバー9人と一緒に、「カーネルコンセプト」や大学の教員らの協力を得て、開発に取り組んでいます。学生メンバーは、同じ高校出身の友人や、数少ない少人数の対面授業で出会った友人などに声をかけて集めたといいます。
細川さんは、「周囲に助けてもらってばかりだけど、大人と意見を言い合える機会はみんなが経験できるものではないし、自分にとってもプラス。やってみてよかった」と話します。
こだわりは「身元の安全性」。学生証の表面だけでなく、裏面や厚みも確認し、さらに学籍メールも使って厳重に本人確認をします。
また、投稿機能は作らず、「友達申請」と、「申請を許可した人だけとのチャット」という、シンプルなつくりにしました。ほかのSNSと差別化し、「フォローはしてるけど友だちとは言えない…」「友だちの投稿には『いいね』しないと…」「私の投稿には『いいね』が少ない…」などのストレスをなくすためだといいます。
さらに、学部や性別・趣味を検索できる機能をつけました。細川さん自身が、「好きなものを一緒に話せる友達」がほしいからだといいます。SNSの「#春から〇〇大」の投稿では、細かい情報を公開することに大きなリスクがある一方で、「同じ大学と確証のある人だけが見る」という条件なら、書ける内容が広がります。
去年10月からはWEBでのテスト版を作成。登録した三重大学の学生からは、「同じ趣味の人とつながれた」など、好意的な意見が届いているそう。でも、細川さん自身は、「ドラゴンボールが好きな女友達」を探しているものの、まだ出会えていないそう…。
ゆくゆくは、三重県内の飲食店の広告や、三重大学の学生に関心のある企業の採用広告なども載せる方針で、事業としてお互いにメリットのある持続可能な形もしっかりと考えています。
「私も1年生の頃は、『大学生活こんなはずじゃなかった』とショックで落ち込んでいる時期もありました。でも、落ち込んでいてもいいことは何もなかった。会社を建てるとかじゃなくても『今できること』ってたくさんあるから、自分にできることを前向きにやっていたらいいのかな」
アンケートに答えてくれた北海学園大学の学生からも、「家での時間を資格の勉強など自分の成長のために使えた」「オンライン会議や授業など、いい技術の発展もあった」「自分の意見をしっかりと持つ人が増えて、政治などに関心を持つ人が増えたように感じた」など、コロナ禍でも前向きに考えようとする声も聞かれました。
落ち込んでしまうのも当たり前のコロナ禍で、少しでも前を向こうとがんばっている大学生たち。その将来が明るくなるためにも、社会の一人ひとりが、感染対策を気を抜かずに続けていきたいですね。
※1:もんすけラボ
HBCと北海学園大学が2019年に開設した若年層向け協創型メディアシンクタンク「北海道次世代メディア総合研究所」の愛称。学生・教員とHBCスタッフがアイデアを出し合い、実践活動につなげていて、アンケートもその一環で行っています。