全国の多くの学校で使われている、美唄市で作られたチョーク。そのもととなる「宝の山」が、北海道にありました。
SDGs(持続可能な開発目標)で掲げられる「8番・働きがいも経済成長も」という目標につながる、道内企業の取り組みです。
緊急事態宣言さなかの5月、道内では「オンライン授業」を取り入れる学校が増えました。
スマートフォンで授業を受ける生徒が多い中、岩見沢緑陵高校の教員が工夫しているのが、板書です。
黒板に鮮やかな図を描いた教員は、「文字をたくさん書かない。クレヨンやパステルみたいな感じですごく良いんですよ」と、チョークの色合いを絶賛。「スマートフォンの画面に映ったときに見える大きさ」を心がけているという教員も、「やっぱりチョークと黒板なんですよね」と、チョークの重要性を語ります。
コロナ禍での授業を支える、このチョーク。日本理化学工業の美唄工場で作られています。
操業して半世紀あまり…チョークの全国シェアは7割を誇り、海外にも輸出されています。ホワイトボードやパソコンを使った授業が増え、チョークの需要は減る傾向でしたが、「オンライン」の機会が増えたことで、魅力が見直されました。
西川一仁工場長は、「ホワイトボードのように光っていると、どうしても見にくい。意外とリモートでも後ろに黒板があるというところが多いという気づきがありました」と話します。
発色が鮮やかで読みやすいチョークを、学校に届けたい。工場長が訪ねた先は…
貝殻の山でした。これが廃棄物ではなく、貴重な資源。工場長は「宝」と呼びます。
オホーツクの湧別町は、全国有数のホタテの産地です。
北海道を代表する海の幸ですが、一方で毎年20万トンもの貝殻が捨てられていて、飛び散ったり、においや景観が悪かったりと、環境問題になっています。
しかし、湧別町の共律産業では、「生の貝殻に発酵液をかけて、残渣物を発酵分解させている」といいます。
ここの貝殻が、チョークを生産する工場にとっては「宝の山」。工場長は「はっきり言って日本で一番きれいな貝殻です」と言い切ります。
ホタテの貝殻には、チョークの原料「炭酸カルシウム」が含まれています。独自の技術で白くきれいに処理した貝殻を、工場で5マイクロメートルという細かい粉にして練り上げます。
「オンライン授業」でも板書が際立ち、環境にも優しいチョークを作ることに成功。今年から生産を始めました。
チョークの生産を支えているのは27人の従業員たちです。この会社では操業以来、知的に障害のある人を積極的に雇用していて、今では工場の社員の8割が知的障害者です。
工場長は、「働く場所を作るためには、客に提供できる良いものを作り続けなくてはならない。役割を担ってきたらちゃんと成長してくれる。全員戦力なんです」と話します。
数字や文字を読むことが苦手でも、色分けや形で作業できるよう工夫されていて、1日20万本ものチョークを生産しています。
社員は、「粉が出にくくて書きやすいというのがあるから、喜んでもらえるかと思います」「すごいやりがいがあるかな。頼ってもらえているんだなとは思っています」など、自分たちが作ったチョークが世界で使われていることに誇りを感じています。
やっかいものの貝殻が、学びの場に、そして働く喜びに…。1本1本のチョークにSDGsが詰まっています。
※掲載の内容は取材時点(2021年11月30日)の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、最新の情報は各企業・各施設にお問い合わせください。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
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