「積丹ブルー」という海の青さで有名な、後志の積丹町。その裏で、漁業者たちは磯焼けに悩んでいました。そんな漁業者と海の救世主として、期待されているものがあります。
SDGs(持続可能な開発目標)で掲げられる「14番・海の豊かさを守ろう」という目標につながる、道内企業の取り組みです。
11月30日、東しゃこたん漁協に届いた、とある包み。中に入っているのは、粘り気が強く和え物として人気の、ホソメコンブの種苗です。
養殖されたホソメコンブを食べるのは、人…ではありませんでした。
海底が見えるほど透き通った海「積丹ブルー」。そんな海でとれるウニは夏の3ヶ月しか漁が行われず、高級グルメとして道内外で人気です。
しかしこの青さの影で、特産品のウニに、ある問題が起きていました。「磯焼け」です。
「磯焼け」とは、魚や貝などの餌となる海藻が育たなくなること。積丹町では、およそ50年前から磯焼けが進み、餌をなくしたウニの生産量も不安定になっていました。
海の環境を取り戻そうと、役場や漁協が協力して様々な実験を行う中、あるものを使ったところ、驚きの成果が…!
それが、ウニ殻を使った「養殖昆布用施肥ロープ」。
取り出したのは、普通のロープのように見えますが…よく見ると、細かい粒がついています。
実はこの粒、積丹町の特産品「ウニ」の「殻」なんです。
ロープをウニ殻から抽出した液に浸した後、細かく砕いたウニ殻を付けました。ウニ柄のついたロープで養殖の実験をしたのが、このホソメコンブです。
実験の結果、通常の3.7倍もの量の昆布が育ちました。
積丹町の水産業技術指導員・水鳥純雄さんは、「始めたときは半信半疑でこんなに効果が出るとは思わなかった。一般廃棄物として今まで処理してきたが、その量が積丹町全体で年間100トンくらいにもなる」と振り返ります。
予想だにしない結果を受けて、さらに開発したものがこの塊です。
見た目は軽そうですが、持ってみると中身が詰まっているのがわかります。
これは昆布の肥料となるウニ殻の塊。海で分解されやすい天然ゴムで固めました。
この肥料によって、磯焼けが起きていた海に藻場が作られ、さらにウニの身も、より大きいものが取れるようになりました。
本来捨てられていたウニ殻。それを昆布が栄養源にして成長し、その昆布をウニが食べる。そしてウニ殻によって磯焼けを克服するだけでなく、さらに美味しいウニを育て、特産品にする…。無駄のないサイクルです。
水鳥さんは、「このウニ殻肥料は積丹町だけじゃなくて漁業を行っている日本各地でできる技術なので、各地の磯焼け対策につながればいいと思う」と話します。
海の環境をより良いものにし、漁業者の生活も守る。ごみを出さずに周りを豊かにする積丹町の取り組みに、期待が高まっています。
※掲載の内容は取材時点(2021年12月2日)の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、最新の情報は各企業・各施設にお問い合わせください。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
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