2021.12.11
深めるキラキラしている女性たちの「モヤモヤ」から生きるヒントを探ります!
「なんだか、うまくいかないな~。」「私の人生、これでいいのかな。」現代を生きる私たちに、そんな漠然とした『モヤモヤ』は、尽きないもの。きっと、キラキラと人生を謳歌しているあの人にだって、悩みや葛藤があるはず…。
この連載では、北海道で活躍する女性たちをゲストに迎え、それぞれの「モヤモヤ」とどう向き合ってきたのかを深り、人生を謳歌するヒントを見つけていきます。
前編では、農家に嫁いだことをきっかけに、レストラン向け野菜の個別事業販売をスタートして、1000万円まで売上を伸ばした彼女のエピソードをご紹介しました。自身の悩みや日々の「モヤモヤ」と向き合いながらも、自分の居場所を見つけ、道を切り開いてきた彼女に、また新たな困難が訪れます…!
―さて、堀田さんは現在、「道の駅ピア21しほろ」の運営をする会社の社長、ということですが、そこに至るまでの経緯をおしえてください!
〈堀田〉もともと、士幌町に道の駅はあったのですが、老朽化に伴い移転&リニューアルが決まりました。当時私は、若手女性農業者を集めてマルシェや勉強会を開催していたのです。その活動を知った町長が、道の駅リニューアルに関する懇話会で、活動を通して感じていることを発言して欲しいと誘ってくれました。
声をかけていただいた時は驚きましたが、私たちは夫婦共に、ずっと地元に貢献したいという気持ちがあったので嬉しかったです!
―どんな道の駅にしたいと思っていました?
〈堀田〉なによりも地元に愛される道の駅を目指そうって思ってました!地元の人の憩いの場でもあり、士幌の魅力が観光で訪れた人にも感じてもらえるような道の駅にしたかったんです」
-リニューアル会議はスムーズに進みましたか?
〈堀田〉スムーズどころか…。課題が絶えず、これまた「モヤモヤ」の日々がスタートしましたよ。(笑)。
〈堀田〉実は…このリニューアルにはコンサルティング会社が参画し、運営は町が継続する予定でした。私たちが期待した新しい道の駅は、士幌らしい食材をふんだんに使ったお食事とお土産品に溢れ、地元食材だから出来るオリジナリティある提供方法で楽しんで頂く!そんな道の駅を期待しました。ですが、コンサルティング会社からの提案内容は、なかなか期待通りではないこともありました。地元らしさというより、北海道らしさを感じるお土産品や既製品を使ったお料理の提供が中心だったため、「士幌らしさ」を打ち出したい私たちにはちょっと物足りない内容でした…。
―なかなか難しい課題ですね。
〈堀田〉それがきっかけで、プロジェクト責任者の方と何度も話し合いをしました。士幌の道の駅は、誰の何のための道の駅なのか、このプロジェクトで叶えたい未来は何なのか。以前農協で働いていた時の「モヤモヤ経験」を活かし、地元メンバーの意見を尊重してもらえるように、丁寧に対話を重ねましたね。
―多くの関係者のいろんな気持ちが交差するプロジェクトとか新たな取り組みの時に発生する「モヤモヤ」って、一番最初の目的意識をぶらさずに、一人一人と対話を重ねると分かり合えたり、目的に立ち帰って再検討できるケースが多いですよね。
〈堀田〉そうなんです!結果的に、道の駅の方向性も提供するサービスも、目的をしっかり共有出来て、私達の希望がどんどん形になっていきました!モヤモヤのままにしなくてよかった!
-もともとは、道の駅を町が運営する話だったと思うのですが、どのタイミングで堀田さんが運営者に?
〈堀田〉「もともとは第三セクターが運営していたのですが、今回の道の駅は民間運営で進むことが議会で決まりました。だた、なかなか、町内事業者で手が上がらず….。このままでは町外の事業者が運営者になってしまうかもしれない。そう考えた私たち夫婦は、飲食事業者公募に株式会社を作って名乗り出たのです。その結果、私たち夫婦が運営することになりました。
―リニューアルオープンでは来場者が8000人と、好スタートだったそうですね!
〈堀田〉いやぁ~!それがですね~…オープン当時、多くのメディアが“若い女性が会社を立ち上げ、道の駅を運営!”と注目してくださって…その反響は、もの凄かったんです!!だから、緊張感はありましたけど、開業は順調だと思っていました!
―宣伝効果は絶大!最高のスタートじゃないですか!
〈堀田〉反響は本当に嬉しかったです!が、想定外のことが起きてしまいまして…。カフェで準備していたメニューが開店10分で即完売してしまい…。急遽追加で作ろうとしても仕込みが間に合わず、食堂のお食事の待ち時間は1時間!お土産売り場はまだ商品開発が進んでない状態だったので、ほぼ何もない状態。お食事もお買い物も楽しみに来られたお客様のご期待にほぼ答えられず…。道の駅の中がそんな状態なのに、期待して遠くから車で来られたお客様の車は駐車場に入れない車は3kmの渋滞…。
―それは痛いですね…。
〈堀田〉 士幌の新鮮な食材を、最高においしい状態で提供したい!! と意気込んで、出来合いの物はなるべく作らず、手作りに!というこだわりが仇となった形になりました。お食事をしたい方に料理が届かなければ、そのこだわりも全く意味がないですよね……。ネット上では酷評の口コミがじゃんじゃん流れてしまいました…今思い出しても辛い~
―なかなか経験できない惨事…(汗)現場は沢山の来場者の対応、口コミはクレームの嵐、堀田さんも社員も体力的にも精神的にも相当辛かったでしょうね…
〈堀田〉そうなんです…。ただ、ありがたいことに、こんなに辛い状況の中でも、スタッフのみなさん誰一人として辞めることはなく、全員が継続して続けてくれたんです。
-大変な仕事でも、スタッフさんが辞めなかったのって、どうしてだったんでしょうか?
〈堀田〉スタッフには本当に感謝です。辞めなかった理由…私が思うに、ですが、準備段階からオープンまではとにかく私も含めてスタッフ全員必死に働く毎日でした。オープンして1週間が経ち、スタッフの中には体調を崩す人も出てきてしまい…このままではまずい!と思いました。道の駅内の施設には、食堂・カフェ・お土産ショップがあるのですが「スタッフの為にも、食堂だけでも臨時休業させてほしい」と役場と指定管理者にお願いをしました。そのような大変な状況になって、お客さまよりもスタッフのことを一番に考え、守らなければならないのが社長の役目のひとつなんだな、初めてと気づけたんです。
それからは、とにかく社員とのコミュニケーションには気を配りました。挨拶をする時は目を見て挨拶。声をかけて様子を見て、何か悩みがありそうな顔をしていたら話を聞く、ということはずっと心がけていました。他の人からすると「当たり前」のことかもしれませんが、あの忙しくて苦しかった時期もそれは変わらずに続けたことは、自分にとっては大きな転機でした。今となっては、あの大変な時期を一緒に切り抜けてくれたスタッフの皆さんに心から感謝をしています。
―組織のTOPがメンバーの目を見て声をかけるって、誰もが必要なのはわかっているんですけど、なかなか続かないケースが多いですもんね。スタッフさんの悩み…それこそ「モヤモヤ」を聞くのって、受け止める側も結構ダメージ受けたりしません?
〈堀田〉最初の頃は少し気持ちが重くなったりしましたが、スタッフのプライベートも含めてびっくりするような大問題が次々と起こるんです。笑 それに1人1人向き合っていたらいつの間にか私の心臓は象の心臓になっていました。今では社員のモヤモヤをバクバク食べてしまう勢いで、耳を傾けることができるようになりました!
—バクバク食べるって例えばどんな感じですか?
〈堀田〉とにかく話をじっくり聞く。問題から目を背けさせず、一緒にその問題をクリアできる最短ルートを一緒に探す。そんな感じです。笑
―道の駅を運営するにあたって、山積みになった課題はどうクリアしていきました?
〈堀田〉とにかく出たクレームを1つずつ潰していこう!」となりました。最初の印象が最悪だったので(笑)後は昇るだけだ!と考えて、全社員で毎日の夕礼と朝礼を欠かさず行うようにしました。各セクションがその日どういう人員配置なのか、どういうクレームを受けたのか、失敗したことを全スタッフで共有して、その失敗を繰り返さないことに注力しました。
クレームを解析していくと、抜本的な士幌町特産の商品が少なすぎるという声が非常に多かったのです。そこで初めて商品開発に手をつけ始めました。
沢山のお客様の胃袋を満たすことができるよう、こだわりと提供できる数のバランスを見直して、メニューも増やしました!
―課題1つ1つをクリアにするってものすごい大事ですよね。混乱しているときって課題が山積みで何からどう手を付けていいか本当にわからない状態だと思うので、「1つずつ」っていう思考は、ポジティブな次の一歩を踏み出す為に必要なことだと思います。
〈堀田〉実はまた新たなプロジェクトが始まっておりまして(笑)。道の駅に地元の中学生たちと公園を作ります!
―その構想のきっかけは?
〈堀田〉もともと、私たちの道の駅の裏にだだっ広い芝生があったんです。そこに公園を作りたいというのはオープン初年度からありました。ただ、とりあえず遊具や花壇を置くだけの公園作っても、利用者にとって、魅力的なものにはならないのではないかなと。
そこで、中学生も巻き込んで一緒に公園を作っていく過程を授業にできないかな?って思いついたのです。それが、結果として、子ども達に郷土愛を育めるような体験を提供できるのでは、と考えました。子供たちが思い描く士幌町の未来を私たち大人が全力で叶えようとする姿に、子供たちはまちづくりを身近に感じてくれるのでは?と思っています。そしてそれは地方創生の根幹部分にあると思うのです。授業をやって驚いたことは、みんな士幌を大切に思っていることが伝わる公園のアイデアばかりで涙が出ましたね。例えば、士幌町の豊かな自然や農業の素晴らしさが伝わるような工夫がしてある遊具を配置したりするアイディアなど、子どもたちの心の中に郷土愛があることを知ることができました。課題も尽きないですが、必ず成功させたいと思っています!
会社員時代から多くの「モヤモヤ」を抱え、様々な壁にぶつかってきた堀田さん。社長として経営に携わった「道の駅ピア21しほろ」もオープン当初はクレームの嵐…。2021年現在では、道の駅の道内人気ランキング上位にランクインするなど、多くの人から愛される道の駅となりました。
人気ぶりにあぐらをかくことなく、スタッフへの気遣いを大切にしながらも、新たな目標にチャレンジをし続ける堀田さん。その背景には、これまで経験してきた「モヤモヤ」から目を背けず、失敗を次に活かそうという姿勢がありました。「道の駅ピア21しほろ」のこれからと、堀田さんのご活躍が楽しみです!
文|千歳市在住・地域事業プロデューサー 田村希
イラスト|にゃほこ
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