2026.03.13
深める
美幌町は、「ぺポロ=水が多い」というアイヌ語が由来とも言われています(※1)。
その名の通り町にはなんと60本ほどの川が流れています。

館内には、そんな土地の成り立ちを示すさまざまな資料のほか、アイヌの暮らしに関わる道具などが数多く並びます。
過去を振り返るためだけではなく、いま目の前の自然へ目を向けるきっかけにもなりました。
展示室を出たあと、町の景色が少し違ってみえる…そんな気づきを与えてもらうことができました。
城坂さんがこの地の自然について伝える学芸員となった原点は、子どものころの身近な景色にありました。
家の前に広がっていた田んぼの畦道が舗装され、色とりどりの草花が消えていく。
利便性を求めて当たり前のように変わっていってしまう姿をみて、きれいな自然やこの景色が残ってほしいという気持ちが芽生え、、学びの道を選ぶ背中を押したそうです。
もう一つの転機は、大学生のとき、屋久島での研修で出会った海外参加者の言葉でした。
そこで出会ったコンゴ共和国からの参加者に、「日本には森がほとんどないと思っていた」と言われたといいます。
日本が木材を輸入しているのは、国内に森がないからだと思っていた――。
その言葉に驚きつつも、日本には豊かな森が広がっていることを伝えると、「まずは自分の身近な自然を大事にしてほしい」という返事が返ってきました。
「目の前の自然を守ることが、結果的にコンゴの森を守ることにもつながるのかもしれないと感じました」
地球の裏側からの視点が、足元の自然の価値を見つめ直すきっかけになったと、城坂さんは話します。

美幌町もまた、6割以上が森に囲まれ、林業が町の産業の一つでもある場所です。
城坂さんにとって、現職の美幌博物館での経験に加え、前職の帯広百年記念館での出会いや、アイヌ文化を専門とする方々との出会いにも恵まれたことが、学びを深めるきっかけになったそうです。
「北海道の自然を知るなら、アイヌ文化を知っていた方が絶対に楽しい!」 と感じるようになり、その魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいと思うようになったということです。

河本さんの話も、知識より先に体験がありました。ピポロアイヌ文化協会会長を務める河本さんですが、大人になるまで自身がアイヌのルーツを持っていることを知らなかったといいます。
けれど、子どものころに祖母に連れられて自然の中での体験を重ねるうちに、季節や場所、採り方の加減を身体で覚えていきました。
当時はただの『暮らしの一部』だったその時間も、ルーツを知り、言葉や文化について学んだあとに振り返ると、 「あの時間そのものが文化だった」 と気づいたそうです。
知識として学ぶ前から、文化はすでに生活の中にありました。
自然との関わりは、特別な場所ではなく、日々の足元にあったのかもしれません。
近年は大ヒット作品「ゴールデンカムイ」で社会的な注目も上がっているアイヌ文化。
でも、北海道に暮らしている私たちでも、情報を探しに行かなければアイヌ文化に触れる機会は多くありません。
足元の自然と暮らしを結び直す手がかりを、手の届く距離で渡してくれる美幌博物館の展示は、改めて私たちが暮らす北海道の文化を知る『きっかけ』になりました。
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