2021.11.28

育む

傷つけ合っても嫌いになれない…“不器用”な親子が8年かけて「認め合おう」と思えた理由【親の心、子知らず。子の心、親知らず#6】

トランスジェンダーの息子と、その母親が、交代で心の中を語る連載、「親の心、子知らず。子の心、親知らず」。

第6回の今回は、息子の高橋愛美さんが、「母親へのカミングアウトから今まで、どのように親子関係を築いてきたのか」振り返ります。

過去記事一覧:親の心、子知らず。子の心、親知らず

前回、カミングアウトがあまりうまくいかなかったと書きました。そこから関係は改善されましたが、「これをきっかけに良くなった!」というような、魔法みたいな変わり方ではありません。

8年もの月日をかけて、徐々に徐々に、いろいろなきっかけに恵まれて、変化していきました。

カミングアウトをした直後、「これで苦痛から解放される」と思っていました。

母は、「女の子なんだから〇〇しなさい」という言葉は言わなくなったものの、私に向けて発する言葉の中には、まだまだ女の子に向けて使う言葉があふれていました。

私がだらしないことをしたときは、決まって「本当にだらしない女だね!」と言われました。笑

弟にはよく、「こんな〇〇なお姉ちゃんが」と言っていましたし、周りに向けては、「娘がお世話になっています」という挨拶。

弟や知人にカミングアウトして、みんなが私を「女性ではない」と認識した後も、それはしばらく続きました。

母親の愛紀さんと愛美さん。家族全員にカミングアウト後、弟の小学校の卒業式にスーツで出席

私はとても泣き虫なので、「そんなに泣くってことは、男じゃないんじゃないの?」と言われることもありました。(これが1番、キツかったです。笑)

言われていた当時は「やっぱりわかってもらえてない」「こんなにつらい思いをするなら言わなきゃよかった」…そう思って、母にその思いをぶつけたこともありました。

ですが、今考えてみれば、私も同じでした。カミングアウトした後に言動をすぐには変えることができませんでした。

今でも、家族の前や、今まで私を女性だと思って接してきた人の前ではなぜか、一人称を「俺」や「僕」にするのをためらってしまいます。

両親と愛美さんと二人の弟

今までの関係をなくしたくないからなんでしょうか?それとも、慣れていないだけなんでしょうか?初対面の人には自分の思うように振る舞えるのに…人間って、不思議な生き物ですね?笑

私が男性としてふるまいたいにも関わらず、そうできない複雑な感情があるように、母にも、私を息子だと扱いたかったのに、そうできなかった複雑な感情があったんだと思います。

そんな複雑な感情を抱え続けて限界を迎えた頃、私は母をLGBT成人式に誘いました。

家で一緒に生活していると、何を考えているのか伝える機会もなく、素直になれないので、いいきっかけだと思ったからです。また、私も、母にも、同じような経験をした方々と関わる経験が必要だと思ったからです。

母は最初、来るのをためらいましたが、最後には重い足を運んでくれました。私の成人の辞を聞き、とても感動してくれたのを覚えています。

その直後、当事者とその保護者の方が主催しているイベントに行きました。そのイベントをきっかけに、母は「同じ子どもを持つ保護者の方や私以外の当事者の方の話を聞きたい」と、さまざまなイベントに出向いたり、イベントを主催する側にまわったりと、大忙し。

今では自分の団体を立ち上げ、私も一緒に活動しています。勇気を出して、わかり合おうと一歩を踏み出してくれた母には、感謝の気持ちでいっぱいです…まあ、すべては私の狙い通りなんですけどね?笑(こういう余計なこと言うから可愛くないんですよね…笑笑)

親子二人で当事者支援のラジオ番組に出演

家で大真面目に話し合って、お互いに歩み寄れるほど器用な親子ではなかった。でも、さまざまな活動を通して、いろいろな人との関わりの中で、お互いのことを徐々にわかり合うことができた。

これが、私と母のやり方でした。そして今もまだ、それは続いています。

何度も何度も「この人に言ってもしょうがない、どうせわかってもらえない」と拒絶しながらも、「もうちょっと頑張ってみようかな」と思い直して…の繰り返しです。笑

そんな気持ちで、今回の連載記事も書かせてもらっています。この連載の題名は、「親の心、子知らず。子の心、親知らず」です。

トランスジェンダーとか、そうでないとか、障害があるないに関わらず、こんな風に不器用な親子関係はいっぱいあるんじゃないかな?と、私は思っています。

お互いに想い合う心があるから、嫌いになれない。どんなに傷つけあっても、歩み寄ることを諦められない。でもやっぱり、近いからこそ、傷つけてしまう。そんな関係が親子なのかな?

そんな関係だからこそ、離れてみたり、他の人を介したりしながら、親子である前に一人の人間同士だと思って、向き合ってみるのがいいんじゃないかな?なんて、思ったりしています。

私にとっては、親子でも価値観は違って当たり前なので、「わかり合う」より、「認め合う」の方がしっくりきますね!

皆さんは大切な人と、どのように関係づくりをしていますか?

てな感じで、私達親子の一方通行でなんともチグハグな記事を読んでくださってありがとうございました!笑
この記事しか読んでない方は、前の記事も合わせて読んでみてくださいね!

自己満足な記事ですが、誰かの助けになってれば嬉しいなぁと、願っております…
それではまたどこかで。

文:高橋愛美(たかはし・まさはる)
トランスジェンダーとして生まれ、性別に配慮のある教員を目指して大学院で勉強中。母親の高橋愛紀(あき)は“SOGI-Mamii’s”を立ち上げ、「SOGI」という概念(Sexual・Orientation・Gender・Identityの頭文字で、性的指向/性自認のこと)を広めるべく活動中。

編集:Sitakke編集部IKU

過去記事一覧:
親の心、子知らず。子の心、親知らず
https://sitakke.jp/tag/142/

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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