
境内の石段横には、神社の名前の由来にもなったという『落ちそうで落ちない巨石』があります。
過去の地震にも耐え、東日本大震災でも動くことがなかった巨石には、多くの受験生が願いを託しています。
高田さんが、神社の敷地にある唐揚げ店『こっこ屋』を訪ねてお弁当を買おうとしたとき、店で働く武山幸江さんがこう声をかけてきました。
「もしかして『クサちゃん』連れてきた?」
「誰かから聞いたんですか?」

クサツネを連れた旅人の姿は、やはり道中でも目立つようです。
この唐揚げ店は海外の旅行者も訪ねる有名店ですが、さすがにロバを連れた旅人は初めてとのことです。
「クサツネが来た、かわいい!もうずいぶん懐っこいのね」
クサツネが店を切り盛りする武山さんに頭をこすりつけ、軽くパクリと甘噛みです。
「イテッ!私を食ってもうまくねぇぞ、ばぁさんだから」

そう笑うと武山さんがもう一言。
「ちょっとばあちゃんさ、夜食用におにぎり作ってくるから待ってて…」
武山さんが用意してくれたのは、ビッグサイズのおにぎり2個と大きな唐揚げです。

「そんなにたくさん」
「いいの食べなさい、食べなさい」
その日は、12月の冷たい雨が降る中でテントを張って野宿。
冬の寒さが身に染みる夜でしたが、旅先で触れた温かな人情に高田さんの心は満たされていました。
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