
子どもだけでなく大人も楽しめる絵本を、絵本セラピスト協会認定「大人に絵本ひろめ隊員」、そして2児の母でもある、HBCアナウンサーの堰八紗也佳(せきはち・さやか)がご紹介します。
2026年も「今月の絵本通信」をよろしくお願いします!
ことしの干支は“午(うま)”ということで、馬が出てくる絵本をピックアップ!
「これしかないでしょう」というくらい自信を持っておすすめする絵本は『スーホの白い馬』。
長年、世代を超えて親しまれてきた絵本なので、「懐かしい!」という人も多いですよね。
モンゴル民族伝統の弦楽器「馬頭琴(ばとうきん)」の由来が描かれた絵本です。
この絵本を「自分の人生を支え続ける1冊」として挙げる、「ちいさなえほんや ひだまり」店主・青田正徳さんと、札幌在住の馬頭琴奏者・嵯峨治彦さんにも魅力をうかがいました。

『スーホの白い馬』は1961年、福音館書店の月間絵本『こどもの友』に掲載。
1967年に現在のかたちの絵本となって出版されました。
『戦後の絵本の代名詞』といわれる作品のひとつです。
馬頭琴(ばとうきん)にまつわる伝説を、子どもにもわかりやすいように書き直し(=再話)、モンゴルの豊かな自然や人々の暮らしが、絵本画家・赤羽末吉のダイナミックな画によって表現されています。
今でこそ当たり前に楽しめる絵本ですが、戦後の子どもたちにとっては貴重な存在だったのではないかと思います。
『スーホの白い馬』は、子どもたちにポジティブに生き抜く勇気や知恵を与えてくれたのではないでしょうか。命が尽きたあとも『魂のつながり』や『形見』のような存在を求めることは、日本も大昔のモンゴルも同じなのですね。

札幌市手稲区にある絵本専門店「ちいさなえほんや ひだまり」の青田正徳(あおた・まさのり)さんが初めて『スーホの白い馬』に出会ったのは1979年、27歳のときでした。
そのときは「なんて悲しいお話なんだ!」と思ったのが本音。
しかし、歳を重ねるたびに作品は心の中で磨かれていき、「死は終わりではなく、ひとつの通過点なんだ」 と感じるようになりました。
「死を超え、希望に向かう喜びの話」 という理解に変わったときから今までずっと、青田さんの人生を支え続けている一冊です。
現在73歳の青田さん。
「自分がこの世界からいなくなったあとも、誰かが次の世代へ絵本の魅力を伝え続けてくれるだろう」 と思えるようになったのも、この絵本の存在があったからです。

最後に青田さんはお得意のギャグでしめてくれました。
「スーホは下から読んだらホース=馬!アッハッハ~…」

嵯峨治彦(さが・はるひこ)さんは、青森県生まれ、札幌市在住の馬頭琴奏者。
青田さんの友人でもあり、2025年12月には経営難に苦しむ「ひだまり」を支援するコンサートを開きました。
これまでにもさまざまな場面で 「絵本の朗読」と「馬頭琴の生演奏」のコラボレーションを披露し、『スーホの白い馬』に向き合い続けています。
そんな嵯峨さんがHBCラジオ「気分上昇ワイド ナルミッツ!!!」に出演された際、私も初めてお話することができました!
嵯峨さんが手に持っている楽器を見せていただくと、てっぺんに馬の頭のかたちの彫刻が!

まさに「馬頭琴」ですね。弦は、馬の尻尾を束ねたものです。
嵯峨さんいわく 「馬頭琴のハスキーな音色は、絵本の世界と現実を地続きにし、白馬の嘶き(いななき)や競馬の躍動を鮮烈に描き出す」 のだそうです。

絵本『スーホの白い馬』についての思い入れも伺いました。
「この物語が辿った複雑な歴史や政治的背景を超え、今私たちが受け取るのは “愛と命の循環” という普遍的なエッセンスです。命が尽きても形を変えて共に生き続けること、そして悲しみを芸術へと昇華させる人間の美しさ。情景に寄り添う一音一音が、言葉の枠を越えた共感をもたらしてくれます。アートが人間にとっていかに大切であるかを、深く再確認させてくれる一冊でもあります」
アーティストならではの嵯峨さんの感じ方は、私に新たな気づきを与えてくださり、改めてこの絵本の魅力を感じることができました。
ちなみに、「馬頭琴ってどんな音色なんだろう…」と気になった人は、2月8日には札幌でも嵯峨さんのコンサートがありますよ。

『スーホの白い馬』は現在も小学2年生の国語の教科書の中で、教材として掲載されています。
息子も春から2年生なので、物語について授業で考えるきっかけがあることは、親としても楽しみです。
そして、興味を持ったらぜひ教科書の中で終わらずに、本物の絵本を手に取ってほしいです。
教科書と絵本では、言葉の表現や、挿絵のサイズも異なります。
民話そのものの良さを感じてくれることを願います。
そして皆さんも、機会があれば実際に「馬頭琴」がどのようなものなのか、本物の音色や楽器に触れてみてください。
物語のイメージはどんどん膨らんでいくはずです。
画家・赤羽末吉は、旧満州で生活していた時に旅をした内モンゴルでのスケッチや写真をもとに、スーホの情景を描いたそうです。
本物に触れることは、本質を大切にすることに繋がるのではないでしょうか。
【参考文献】
※物語の成立過程や歴史的背景については、以下の資料を参考にしています。
「絵本画家 赤羽末吉 スーホの草原にかける虹」赤羽茂乃/福音館書店
「日本人が知らない『スーホの白い馬』の真実」ミンガド・ボラク/扶桑社新書
「日本とモンゴル」第56巻(142号)/公益社団法人日本モンゴル協会
【取材協力】
嵯峨治彦さん
ちいさなえほんや ひだまり店主・青田正徳さん
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文|HBCアナウンサー 堰八紗也佳
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編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は取材時(2026年1月)の情報に基づきます。
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