

八雲町の落部川上流の中州から湧き出る通称「上の湯温泉」。その湯を引いて、広大な敷地にさまざまな隠し湯をつくり、別格の施設とサービスを提供する名宿が大正期開湯の名宿『銀婚湯』だ。そこから落部川をはさんだ近隣の草地に、昭和初期に建てられたようなバラック小屋がある。
場所の名は『磐石山荘』、湯の名は『磐石の湯』という。
ここは、一個人がある理由で掘削して湯を掘り当てた自家温泉で、24時間365日無料開放している無人温泉である。
ここの持ち主は、まもなく72歳になる八雲町出身の森岡寿行さん。1980年代に函館の本町で居酒屋『もり平』を13年間営んだのち友人に譲渡。体調を崩したこともありしばしの間休養したのち、1995年に『もり平』があった場所のすぐ近くで焼肉屋『梁山泊』を開業。現在まで30年営業を続け、多くのファンから愛されている有名店だ。
焼肉屋の店主である森岡さんはなぜ温泉を掘り、それを無料で一般開放しているのか。話は25年前の2000年までさかのぼる。

「うちの親父ってのは、森町の営林局でずっと働いてたんだよね。毎日チェーンソー持って森の中に入って雑木を伐採したりしてた。でもあの仕事ってチェーンソーで振動障害になる恐れがあってね、親父は長年それで神経やられちゃってずっと参ってたんだよね。
もともと温泉好きなのもあったし、その症状が少しでも治ればってことで自分だけの温泉を欲しがってたんだよね。それで先祖の代から受け継いでいたこの場所が、温泉が湧いている落部川に近いし『銀婚湯』からも近いから、一か八かで掘ってみたんだよ。知っての通りボーリング掘削ってのは掘れば掘るほど金がかかるもんだから、言ってみれば博打みたいなもんだよな(笑)」
深々と雪が降り積もる2000年12月25日、400メートル近くまで掘ったところで湯泉にあたった。森岡さんにとっては忘れもしない日だ。まだ小屋も浴槽もなかったが、森岡さんの父は喜び勇んでブルーシートに湯を張り「これで毎日温泉に入れるぞ」と上機嫌だった。
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