
高田さんは「ほら行くぞ」と声をかけますが、リアカーを引くクサツネの足が何度も止まるようになります。
「草を食べたくて止まる。車でいうとガス欠寸前です」
そろそろ今夜の野営先を探す時間です。
条件は、草がたくさんあること。そして、高田さんはもう一つ、大切な確認を怠りません。
「この辺って、クマの出没はどうです?」
近く工事現場の人が「クマは何とも言えんよね。特に痕跡はないけれど」と答えます。

この日の夜は、日本海を見渡せる高台にテントを張ることにしました。
風は冷たく、夜は心細さもあります。
それでもクサツネの好物、芝が豊富にあります。
初日のお客は2人。4袋の塩が売れました。
強い海風の音を受けながら、千葉を目指す900kmに及ぶ行商の旅。その1日目が終わりました。
そして、行商旅の2日目。
スタートしてすぐに、難所が待ち受けていました。
海沿いのトンネルが工事中で、急勾配の峠を迂回するしかありません。
「左!左!左!左!」高田さんは声を上げます。

近づいてくる車が、クサツネは気になるようです。
長い峠の道を蛇行しないように、高田さんが「ほいほい」と大きな声をかけ、リヤカーを後ろから押して進みます。
「後ろから『行くぞ』っていって押すと、立ち止まらずにスタスタと。どんな道でも行けるとわかったら、自由な気持ちが湧いてくる」
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