
東山墓園線沿い、鍛神小学校向かいにある洋食屋『ごくらく亭』は、いつだって客の期待を裏切らない。

完成まで8〜9日間かけてつくる手作りのデミグラスソースも、シェフが全身をつかって手ごねする合挽きのハンバーグも、丁寧に揚げているのが見た目と食感で伝わるエビフライも。
シンプルにいえば「いつ来てもうまい。いつ来ても満足できる」それがこの店だ。
来年で開業50年目の節目を迎える同店は、基本的にメニューの数が多いのが特徴。それでも、この長い営業期間で少しずつメニューを減らしているという。
実はカレーライスも消えたメニューの一つだった。
「昔はレギュラーメニューでやってたんだけど、5〜6年くらい前にやめたんだ。でもそれからずっとお客さんからはまたやってくれやってくれって言われてて。それでもなかなかやる気にならなくてね(笑)。でも1年半くらい前から跡継ぎとして娘が帰ってきてくれたから、店でやってきたことは少しずつ教えていかなきゃいけないなって思ってね。それでまた始めたんですよ」と語るのは同店オーナーシェフの牛山博康さん。
そんな経緯もあって、この夏から期間限定でひっそりと復活した『ごくらく亭』のカレーだが、派手な宣伝を一切していないにも関わらず、耳の早いカレーマニアの間で「これはちょっと普通ではない」と評判を呼び、こちらの編集部にも情報が伝わってきた。

牛山さんは料理人として駆け出しだった時代、東京・銀座の複数のレストランで下積みをし、中でも戦後2度にわたって内閣総理大臣を務めた吉田茂の料理番として知られる日本フレンチの草分け・志度藤雄に師事したことは、まもなく80歳になる牛山さんの原点ともいうべき経験だ。
そんな東京での修業時代に会得したレシピがベースとなっている同店のカレーは、見た目はあくまでシンプル。
しかしルーを口にすれば、その奥行きの深さと不思議な清々しさに驚くはずだ。
後味も爽快感があり、あとを引かない。胸やけ・胃もたれとはまるで無縁のルーである。
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