2025.11.13

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「泣いちゃった」原作者も力強くオススメする映画『平場の月』 切ないけれど、幸せを感じる【朝倉かすみさんインタビュー】

「絶対見て!」原作者も力強く勧める映画

ディティールと実感、そしてもう一つ大切にしている「イノセンス」(純粋さ)は、「小説が動くエンジン」だといいます。

「須藤は特にイノセンスが強くて、倫理観とは違う、潔癖に近いような面がある。でも成熟しきれない部分もあって、女性はどこかに女の子のままなところがありますよね。イノセンスがエンジンになって、そこに引っ張られて小説が動きます」

中学時代の須藤と青砥 ©2025映画「平場の月」製作委員会

朝倉さんは、「須藤は青砥を利用するのが嫌だったんだと思うんですよね」というように、自身が生み出した登場人物のはずなのに、わかりきっているわけではない他者として話しているように感じました。

その理由を聞いてみると、「距離感がありますよね。私の好きには動かなくなってくるんです。こうしたらいいと思ってもしない。そこでさかのぼって書き直すことはなくて、こうしないんだ、そうか、じゃあ私が折れましょう…と書き進んでいきます」と話します。

そんな青砥と須藤、2人がたどり着くラストに、朝倉さんも映画を見て「泣いちゃった。最後はグッときた」と言います。

40代で作家になった朝倉さん。デビュー作では30代の女性の実感を細やかに描いています。
「当時は30代やそれより上の世代がヒロインの小説はほとんどなかったんです。それを私の個性にしようと思いました」

『平場の月』の主人公は50代。同じ世代にとっては切実な実感を伴い、上の世代にとっては「こんな時期があった」と共感する場面があり、下の世代にとってはこれから先に自分にも起こるかもしれない切なさと、希望も感じられるストーリーなのではと思います。

きっと、自身の人生と重ね合わせて感じ、考えてしまう映画。
朝倉さんに、いま生き方に悩んでいるSitakke読者のみなさんへのメッセージを聞いてみました。

「何のなぐさめにもならないけどね、私は毎朝『きょう起こることはすべていいこと!ものごとは完璧なタイミングでやってくる』って言うようにしているんです。そうすると、その日1日がちょっと楽しくなる。すごく嫌なことがあったとしても、これは完璧なタイミングで私のもとに来たんだから大丈夫って思えるの」

そう話す笑顔に強い説得力を感じ、「素敵ですね!何年前から続けているんですか?」と尋ねると、「これはねえ、驚くと思いますよ」と笑います。

朝倉さん「2~3か月前ですね」
佐藤アナ「え~?!」

「失礼な言い方かもしれないですが、きょうのインタビューを通して、朝倉さんはすごくピュアな方の印象を受けた」と佐藤アナが話すと、「ピュアかピュアじゃないかと言われれば、ピュアですねえ」と答える朝倉さん。

そんな魅力的な人柄から、青砥と須藤の魅力も生まれたんだなという納得感がありました。

©2025映画「平場の月」製作委員会

佐藤アナが「何回も見ると気づきがあると思うので、もう一度映画を見たい」と話すと、朝倉さんはすぐに「絶対見て!!」と力強く勧めました。

「青砥と須藤のお話をいろんな人に読んでもらえてよかったし、この映画をたくさんの人に見てほしいです。恋愛映画のくくりに入るのかもしれませんが、ちょっと恋愛から遠ざかっている人に見てほしいですね」

原作者も太鼓判を押す映画『平場の月』は、11月14日(金)から公開されます。

***

前編の記事では、「HBC演劇エンタメ研究会(通称“エンケン”)」の森結有花アナウンサーが、映画の感想をお伝えしました。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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