長い冬の始まりを感じる今の季節。「これから冬かぁ」とうんざりしたり、「本当は今年こそあんなことやこんなことをやろうと思っていたのになぁ……」と1年を振り返って落ち込む方が増えてきたりする時期です。なんとか現状を打破しようとあれこれ試してみて、「思ったようにできなかった」「疲れた」とまたぐったり……なんてことを繰り返していないでしょうか?
そうして「なんだかやる気が出なくて困ったな」というときこそ、実は避けたほうがいい行動も。今回は公認心理師である筆者が、やる気を出そうとしてやりがちだけれど、本当はやらないほうがいい3つのことをご紹介します。
“やる気を出すための方法”があちこちで紹介されています。参考にするのはいいのです。でも筆者としては、やる気を出すために“何か”をすることはお勧めしません。
他の人にとっていいことでも、自分にとっていいことかはわかりませんし、それが負担になってしまうことも少なくないからです。
「やったほうがいい」「やらなくてはいけない」と思ってやることは、普段自分が好きなことであっても精神的な疲労となり、逆にやる気が失われていきます。
甘いものが好きな人でも、「元気になるために甘いものを食べなさい」と言われて食べるのはストレスになります。それと同じで、「やる気を出すために何かをやらなくては」と思って取り組んでも、ただ疲れるだけです。
自分が「やりたい」と思ったことをやめる必要はありません。むしろ「やりたい」と思えたことを、喜んでやってみてください。でも途中で「ちょっと違うな」と思ったら、迷いなくやめましょう。
現代人は目標を大きく設定しがちです。特に「やる気が出なくて困る」という人は真面目で何事にも一生懸命な人が多いので、目標を高く設定し、その目標が達成できないと自分を責めて落ち込みます。
ビジネスシーンなどで推奨されるような、5年後、10年後を見据えて目標を立てるのは、元気なときにしましょう。
やる気が出ないときには、朝起きて、ご飯を食べて、仕事や学校に行って……そういう毎日“当たり前にやっていること”を“今日できたこと”としてカウントしてみてください。
そして“理想”ではないけれど、これだけできていたら、そう悪くないかもくらいの目標を意識して、達成感を積み重ねてみましょう。
モデルルームのようにきれいに片付いた部屋にすることを目標にするよりも、目の前のペン立てを整理することを目標にして、やり遂げたときの達成感を味わうほうが、やる気が出てくる近道となります。
そうは言っても「やらなくてはいけないことはいっぱいあるから、やらないわけにはいかないもの……」と思いますよね。
そういうときは「やらなくちゃ」と思っていることを、ランダムに紙に書き出してみましょう。ランダムというところがポイントです。
To Doリストは通常上から順に書いていきますが、それはやめましょう。上から順番にこなさないといけないような気になってしまうし、「そこに書いたことはやらなくてはいけない」と思い込んでしまうからです。
筆者がよくやるのは、付箋1枚にやること一つを書く方法。頭の中にあったことを書き出したら、ぼんやり眺めて、そんなに急がなくてもいい事柄やそんなにやらなくてもいいことは線で消しましょう。付箋だったら、どこか目につかないところに一時保管してみるといいですよ。
3~5個まで絞ったら、その中で期日等を指標にして優先順位を決めて並べて、最初に来たものから取り組んでみてください。始める前には目標として高すぎないかをチェックすることをお忘れなく。
気分が落ち込んで、やる気が出ないとき。人はこのままの状態がずっと続くのではないかと不安になります。
でも、ずっと同じ状態が続くことはまずありえません。良くも悪くも人の状態は変化します。
「今はやる気が出ない時期だ」と受け止めて、今の自分にとってちょうどいい課題や目標を一つ一つこなしていきましょう。 その達成感が心の栄養になって、“やる気のある時期”が必ず訪れます。
人は悪い変化にはよく気が付きますが、いい変化にはなかなか気付かないものです。
「やる気がない」と感じられるのは、やる気があるときがあったから。 そのときは必ずまた訪れます。
だから“やる気のない今”をやり過ごしましょう。その時期をやり過ごす方法として、ここでご紹介したことを参考にしてもらえたらうれしいです。
文:竹原久美子(公認心理師/婦人科クリニック勤務)
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